は?売るの?うご!釧路
「限界だ、もっと涼しい場所へ行きたい……」
意思を持った自販機が向かった先は、日本有数の冷涼な街・釧路。そして、フリマアプリの誤操作でその釧路市が1980円で売り払われる事態に!?
北の大地を舞台に繰り広げられる、予測不能でシュールな奇想天外コメディショートショート集です。クスッと笑える不条理な世界観を、どうぞお楽しみください!
「おい、聞いてくれ! 会社の休憩室にある自販機、勝手に歩いて家出しやがった!」
同僚の慌てた声に、俺は冷めたコーヒーをすすった。「またまた、そんなSFみたいな……」
「本当だって! しかも向かってる先が、よりによって釧路なんだよ!」
バカな。自販機が自走して北海道の釧路まで行く理由なんてあるわけがない。だが、GPSの追跡アプリを見ると、確かに時速六十キロの猛スピードで東北道を北上中だった。
「なんでまた釧路なんだ……?」
「それがさ、画面の『冷たい』のボタンがバグって、『寒いところに行きたい、限界だ』って文字に変わってたらしい」
数日後、釧路の幣舞橋のたもとに、ぽつんと佇む一台の自販機が発見された。
地元民の人だかりができる中、その自販機は誇らしげに、キンキンに冷えたカツゲンを売り続けていたという。あまりの涼しさに、周辺の霧が一瞬で凍りついた。
コメディーショートショート:釧路市をフリマに出品した男
「あ、もしもし俺だけどさ。今、スマホのフリマアプリで誤って『釧路市』を出品しちゃったんだけど、どうしよう」
電話口の友人が絶叫した。「は? 売るの!? 市を!? そんなの買えるわけ……あ、おい、もう『購入手続き完了』って通知鳴ったぞ!」
秒速で買い取ったのは、大の道東マニアの変態コレクターだった。
「出品者さんですね! いやぁ、まさか本物の釧路市が1980円で買えるとは! 早速、全域を僕の自宅の庭に植え替えるので、重機手配しといてください!」
「いや待て落ち着け、俺が売ったのは市役所の敷地と、あと勝手丼のマグロ数切れだ!」
大慌てでアプリのキャンセルボタンを押そうとしたが、「発送通知を押してください」という非情なメッセージが光るだけ。
結局、後日届いた巨大なダンボール箱を開けると、中から霧に包まれた和商市場のオヤジが「まいど!」と飛び出してきて、二人は静かに絶望した。
【了】
「冷たさを極めた自販機」と「1980円で投げ売りされた釧路市」。勢いとノリだけで突き進む不条理劇をお楽しみいただけたでしょうか。
作中に登場する「幣舞橋」や和商市場の「勝手丼」、北海道でおなじみの「カツゲン」はすべて実在する釧路の名物です。あまりに寒すぎる自販機の暴走や、箱から飛び出す市場のオヤジなど、支離滅裂な世界観とリアルなご当地要素のギャップを感じていただけたら幸いです。
もし街中で時速60キロの自販機を見かけても、決してフリマアプリに出品しないようご注意ください。




