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第三話 おしゃべり草とマンドラゴラさん

「もう! 隣の葉っぱ、元気なくなっちゃったじゃん!」


 日陰を好む植物がたくさん置いてある部屋で、アーシュタは赤い髪をくしゃくしゃとかき回した。

 植物の世話に口を差し挟むおしゃべり草に惑わされて、隣に置いてあった草がほんの少し萎れている。栄養剤を減らしたのが原因だろう。

 アーシュタはおしゃべり草の根元に置いてあった固形の栄養剤を取り上げて、隣の植木鉢に置き直した。


「ダメだって! こっちにも栄養!」

「予算があるので、無駄遣いはできませーん」

「無駄じゃねぇよ! こっちもこんなに萎れてるのに!」

「そのわりに、元気によく回る口だねぇ」


 霧吹きで方々の植物に水をやりながら、おしゃべり草相手に軽口をたたく。ミシェルが出張に行って二週間ほどだが、もはや慣れたものだ。

 週に一度の水やりでいい植物もあれば、霧吹きでは足りない植物もある。アーシュタが霧吹きのポンプを忙しく押している間、おしゃべり草は延々としゃべり続けた。


「水、ほんとにそれで足りるの?」

「そいつには、ちょっと栄養が多いな!」

「日差し! 日差しが足りない!」


 おしゃべり草はアーシュタの一挙一動に、とにかくケチをつけたがる。

 マンドラゴラを引っこ抜くときの耳当てがあれば便利かもしれないなと、アーシュタは内心げんなりした。慣れても、鬱陶しいことには変わりない。

 そのとき、日の光を好む植物の区画につながる扉がトントンと鳴った。


「ピッ!」


 扉の隙間から顔を出したマンドラゴラさんに、アーシュタは身を屈めた。


「あれ? マンドラゴラさん、どうしたの? また外出したいの?」


 マンドラゴラさんはもじもじと内股気味に恥じらってから、アーシュタの背中をよじ登り、肩に乗った。


「私と遊びたかった……とか?」


 頭を指先でなでると、マンドラゴラさんはうれしそうに葉っぱをくるくると回した。


「かわいい奴めー!」


 思わず笑顔になったアーシュタが、ふと手を止める。

 先ほどまであんなにうるさかったおしゃべり草が黙っている。


「……え? なんで?」


 おしゃべり草をまじまじと観察すると、かすかに震えているように見える。


「おしゃべり草って……もしかして、マンドラゴラさんが苦手?」


 試しに、マンドラゴラさんを両手で抱えておしゃべり草に向けてみる。

 おしゃべり草がしゃべるたびにぱくぱくと動いていた茎の中心が、ギュッと固く閉じられた。


「ピーッ」

「……今度から、この部屋で仕事するときは、マンドラゴラさんを連れてこようかなー?」


 アーシュタはにやにやと、おしゃべり草をながめた。

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