ep.17 暁闇の薔薇「ガーベラ・シュラーイン」
竜化:竜人族特有の能力。人間に近い姿から人間の形をした竜の姿になること。
1km=1ファイ
1m=1ミロ
1cm=1レハ
「はあ~もう、まったくなんでお前らみたいな化け物がこんなところにいるのよ。」
私たちはその声を聞いて振り返るとそこには竜のような角をはやした魔族が立っていた。
私は彼女を一目見た瞬間強いと思った。
これが魔族・・・。
彼女からあふれ出るオーラは私がさっき戦ったミノタウロスがただの埃と思えるほどのものだった。
だがこの時の私の心は収まりきらないほどの高揚感に満ちていた。
私はこういう強者と戦いたかったのだ。
「この神聖なる竜人族の前にひれ伏しなさい、この愚かな人間どもよ。」
彼女がそういうのと同時にさっきより強いオーラが私たちを襲う。
ママとロストさんはそのオーラに耐えきれずにその場に倒れ込んでしまった。
だが私はそのオーラを受けても何事もなかったかのように立っていた。
女はそれを見ると少し驚いたような顔をした後大きく高笑いをした。
そして女は、
「面白いわね。この私のオーラを前にそんなに平然としてられるだなんて。」
と言って音速に近い速さで私の後ろに回り込むと私の頭にめがけて蹴りを入れてきた。
その蹴りの威力は風圧によって周囲の木が折れてしまうほどのものだった。
だが私はそれをいとも簡単によけて見せた。
ママたちはそんな私たちを見て目を丸くしていた。
すると女はまたもや驚いた表情を浮かべる。
そして邪悪な笑みを浮かべながら私に、
「お前、名前は?」
と名前を聞いてきた。
「私はガーベラ・シュラーインよ。」
名前を聞かれた私は素直にそう答える。
すると今度は女が、
「私は魔王アルカード様の側近にして雷霆の龍王ケラウノス様の三眷竜が一体。名をライ。以後お見知りおきを。」
と名乗った。
私はそれを聞いて一瞬思考が停止する。
魔王の側近?
それにあの原初の七色龍のうちの一体である雷霆の龍王アルダークの三眷竜の一体・・・。
どうりでこの女のオーラがやばかったわけね。
でもなんでそんな化け物がこんな辺境の地に・・・。
そう思った私は女にその疑問を直接ぶつける。
「なんであんたみたいな化け物がこんなところにいるのよ。」
私がそういうと女は少し目をぴくっとさせる。
そしてそれと同時にとてつもない殺気を放ち出した。
すると女は、
「愚かな人間のくせに何よ、その口の利き方は。まあでもお前は私の攻撃を完全に見切っていたわけだしその無礼、今回だけは許してあげるわ。」
と少し怒りながら言った。
私はそれを聞いてなんて器の小さい女なのかしらと思う。
そして女は続けた。
「私は龍王様の命でここのゲ・・・ゲフィ・・・ゲフ・・・ゲ何とか樹海内で発生した空間の歪みの調査に来たのよ。」
ゲ何とか樹海ってたぶんゲファール樹海のことよね。
空間の歪み?
いったいゲファール樹海で何が起こったのかしら・・・。
すると女はまた話し出す。
「でもあそこの森が変な力によって守られていたせいで原因を見つけ出すことができなかったのよね。」
女は不服そうにそう話していた。
私はそれを聞いてとあることを思い出す。
それはゲファール樹海内に入ったものは方向感覚が狂ってしまい一生出られなくなるという言い伝えだった。
なるほど。
だからゲファール樹海内に入ると方向感覚が狂ってしまうわけね。
私はそう勝手に納得していた。
そしてそれと同時にとあることに気付く。
確かこの女がここに来た理由ってその異変の調査なのよね。
それなら魔物を使って周囲の村を襲う必要はないはず。
するとこの後女は私の疑問をまるで見透かしていたかのようなことを口にする。
「でもその代わりに知性のある魔物たちを見つけてね。せっかくだから憂さ晴らしとして愚かな人間どもの村を壊滅させていたわけ。それにしても本当にいい憂さ晴らしになったわ。」
そう嬉しそうに話す女の姿を見てさっきまで私の心の中にあった高揚感がすべて怒りに置き換わった。
なぜならレオンたちが使ったであろうこことオーブレスト間の道はそのゲファール樹海に隣接していたからだ。
そこでまさかと思った私は女にとある質問をする。
「あんたが殺した人間の中に水色髪の男の子はいたか?」
私が怒りに満ちた表情でそう聞くとと女は不敵な笑みを浮かべながらこう答えた。
「さあ、私に愚かな人間どもの顔を覚える趣味はないもの。」
その瞬間私の中の何かが切れた音がした。
そしてそれと同時に頭の中に直接誰かの声が響く。
《ーーー「滅」ーーー》
と。
ライはガーベラの質問にそう答えた後とてつもない殺気とオーラを放っているガーベラを前に少し固まってしまっていた。
う、何よこの殺気は・・・。
それにこのオーラ。
さっきと雰囲気が変わったわね・・・。
それにしてもこのオーラ、人間、それに進化前の個体が放っていいものじゃないわよ。
それに加えただ立っているだけなのにあの隙の無さ。
とんでもないわね。
いったいどう動けば・・・。
その時私はあの少女の手がかすかに動いたことに気付く。
来る!
そう思った私は身構える。
すると少女はとんでもない速さで私の背後を取ると剣を私にめがけて振りかざす。
やばい!
そう思った私は何とか反応し両手の爪で必死にその剣を受け止める。
この時少女の攻撃の重さによって地面に大きなクレーターができた。
な、なんてパワーをしているのよ。
私は剣を振り払うと一度距離をとる。
幸い少女は追撃の意思がないのかその場から動いていなかった。
これはさすがにまずいわね。
本気で行かないと死んでしまうわ。
そう思った私は、
「ここからはこっちも本気で行かせてもらうわ。」
と言って竜化をする。
そしてそれと同時に空を飛びながら、
「百雷雷轟電転!」
と言って大量の電撃を放つ電魔法を少女に向けて放つ。
そして私はそこで勝ちを確信する。
なぜなら百雷雷轟電転は百を超える電撃が全方向から狙った対象に当たるまで追尾し続けるという相手を確実に殺せる魔法だったからだ。
あの少女がいくら早くてもすべてをよけるのは無理だろう。
それに加え私は空を飛んでいる。
そしてあの少女ただの剣士。
私に攻撃する手段はない。
勝ったわね。
だが私はすぐにそれが間違いだったということに気付くことになる。
なんと少女はそれらを剣で切ったり、うまくいなして電撃同士をぶつけることで相殺してしまったりして攻撃を完全に防いでしまったのだ。
私はそんな信じられない光景を見て思考が停止する。
嘘、私のあの攻撃を完全に無力化するだなんて・・・。
魔王様だってそんなことできなかったというのに・・・。
その時私は何かがとんでもない速さでこっちに飛んできていることに気付く。
だが私はそれを間一髪でよける。
そしてそれと同時にそれが剣だったことに気付く。
もしあれが当たってたらと考えると私は全身の血が逆流するのを感じる。
あの小娘め、私をなめやがって・・・。
そう思った私は、
「この小娘が!」
と言って一気に少女との距離を詰める。
そして至近距離で天から巨大な槍の形をした落雷が落ちる広範囲電魔法、
「神解けの槍!」
を放つ。
そしてそれと同時に少女に向かって周りの地面を削ってしまうほどの爪の高火力範囲攻撃、
「竜爪、旋風斬!」
を放った。
その時周囲が砂埃で見えなくなった。
これで、どうだ。
私はそう自信満々に思っていた。
攻撃があった感触はしていた。
だが砂埃が晴れるころには少女の姿はそこにはなかった。
「な・・・。」
その時私は後ろからとてつもないオーラを感じる。
まずい、背後を・・・。
そう思ったときにはもう遅かった。
これぞまさに時すでに遅し。
私はそのまま後ろから背中に背骨が折れるほどの強烈な蹴りを食らい上空に吹き飛ばされてしまった。
「がはっ。」
そしてそれと同時に大量の血を吐き出す。
そして今度はいつの間にか私の吹き飛んでいる先にいた少女からみぞおちに強烈なパンチを入れられると今度は地面に向かってすごい勢いで落ちていく。
この時私が意識がとびかかっていた。
だが何とか持ちこたえ意識が戻った瞬間、
ドーン!
もう一度背中にすごい衝撃が走った。
なんと最悪なことに私の意識が戻ったのと同時に私は地面に凄まじい速さ叩きつけられたのだった。
そしてそれに追い打ちをかけるかのように今度は上空から落ちてきた少女が私の腹めがけて強烈な蹴りを入れる。
するとこの時私の周りにドラゴンが丸々一匹入るほどのクレーターができる。
それに加え私の内臓がぐちゃぐちゃにされたのを感じた。
そしてあまりの衝撃で一瞬意識が飛んでしまう。
だが幸い少女の発しているとてつもない殺気で私はすぐに意識を取り戻すことができた。
そして私の腹の上にある少女の足をめがけて爪を振りかざしたがこれも簡単によけられてしまった。
だが私はそうなることを狙っていた。
少女が攻撃をよけた隙に私は一気に少女との距離をとる。
そして自分に回復魔法をかける。
この時私は久しぶりに感じる死という感情と少女の異常な強さに混乱していた。
こ、これが死・・・か。
こんな気持ちを味わうのは久しぶりね・・・。
それにしてもなんていう強さをしているのこの少女は。
まるで魔王様を彷彿とさせるパワーと速さだわ。
この時私はさすがに逃げないとまずいと考えていた。
でなければ死んでしまう。
そう思った私は自分と少女の距離を確認する。
この時の私と少女の距離はだいたい30ミロ程度だった。
よし、この距離なら空間転移ができる。
そう思った私は空間転移を発動させるために転移魔石を取り出そうとする。
だがその時突然「死」の文字が浮かび上がっていた。
なんとこの時私の体がまだ少女の間合い内にいると信号を出していたのだ。
この時私はとてつもない恐怖で動けなくなってしまっていた。
相手は剣を持っていない人間の少女。
もう攻撃手段は素手しかないはず・・・。
なのに、なんで?
私は恐怖で泣きそうになりながらその時下に向けていた顔を恐る恐る上げて少女の方を見る。
そこでなぜ私がさっき死を感じたのかを私は理解する。
なんとそこには自分の右手を左手で持って大量の魔力を流し込んでいる片腕の少女が立っていたのだった。
一方そのころクレアとロストは意識を失って倒れているジールを安全な場所に運んでガーベラとライの戦いを見ていた。
そしてそんな二人は圧倒的な強さで三眷竜のライを蹂躙しているガーベラに恐怖していた。
私は今目の前で繰り広げられている戦いをまるで悪夢のように感じていた。
なぜなら今戦っているガーベラがいつもの優しくて可愛らしいガーベラとはかけ離れていたからだ。
確かにガーベラは昔から戦闘の才能があった。
剣を握って3日でジールとの一騎打ちに勝利する、魔法を勉強し始めて4日で上位魔法が扱えるようになるなど本当に才能に満ち溢れていた子だった。
だがガーベラはそんな自分に胡坐をかかず毎日努力をし、決して人のことを見下さなかった。
私たちが知っているガーベラはそんな素晴らしい子だった。
だが今目の前で戦っているガーベラにそういうものは一切なかった。
ただそこには戦闘に対する高揚感と圧倒的な殺意に満ちた表情をして戦っている赤い悪魔がいるだけだった。
「あれがガーベラなの・・・?」
私はこの時とてつもない恐怖に襲われていた。
今まで一度も見たことのないガーベラの一面に私は恐怖していた。
正直それは母親として失格だ。
なぜならそれはそういう自分の子供の良くない一面を完全に否定していることになっているからだ。
そんなの私が目指していたいい母親ではない。
でもこの時は不覚にもそう感じてしまっていた。
するとその時、
「ガーベラちゃんってこんなに強かったけ・・・。」
とロストさんが言った。
私はそれを聞いてハッとする。
ガーベラは確かに強い。
でもあの三眷竜を蹂躙できるほど強くはなかったはず。
強さがまるで別人だわ・・・。
私がそう考えていると突然さっき上空に蹴り飛ばされたはずのライがとんでもない速さで落ちてきた。
そして今度は空からガーベラが落ちてくる勢いそのままでライに強烈な蹴りを入れる。
その時の衝撃でこの森全体が大きく揺れた。
すると、
「うわ。」
と言ってジールが目を覚ました。
私はそんなジールに黙ってガーベラとライの戦いを見ように促す。
するとジールはあのガーベラを見て顔に恐怖の感情を浮かべたまま固まってしまっていた。
やっぱりジールもそうなるのね・・・。
私はそう思いながらもう一度戦いに目を向ける。
その時の二人の間にはかなりの距離があった。
そうして二人の間にしばしの静寂が流れる。
すると私はライが転移魔石を取り出そうとしていることに気付く。
やっぱり逃げるのね・・・。
私がそう思った時ジールが、
「あっ・・・!」
と声にならない声を出しながらガーベラの方を指さす。
何かしらと思った私はガーベラの方を見るとあまりの衝撃に気絶しそうになった。
そしてジールは続けてこういう。
「ガーベラが、ガーベラが自分の右腕を・・・。」
そうなんとガーベラはライの動きに気付いた瞬間自分の利き手ではない右腕を引きちぎってしまったのだ。
そしてそれにとてつもない量の魔力を注ぎ込んでいた。
私たち三人はそんなガーベラの行動に絶句していた。
いったい何をしているの・・・?
お願いだから、もうやめて・・・。
いつものガーベラに戻って・・・。
私はそんなガーベラを見てそう感じていた。
するとその時雲の間から月が顔をだしてガーベラたちを月光で照らし始める。
そこで私はとあることに気付く。
ガーベラの目が・・・おかしくなってる!?
そう、なんとガーベラの目が明らかにいつもと違っていたのだ。
ガーベラの目は私と同じ黄金色で普通の目をしている。
だがこの時は目の白いところが黒色に、そして黄金色だったところが赤くなってそこから赤い煙のようなものが出ていた。
私はそんな状況を見て確信する。
今あそこで戦っているのはガーベラじゃないと。
どうやらジールたちもそれに気づいたらしくいろいろと騒いでいた。
いったい何なのよ、あれは・・・。
するとその時ガーベラの右腕が赤黒い光に包まれるとガーベラらしき人物は怪しげな笑みを浮かべるのだった。
ガーベラの右腕が赤黒い光に包まれたのを確認したライはあまりの禍々しさに恐怖で固まってしまっていた。
な、何なのよあの光は・・・。
それにさっきよりオーラが強くなっているし、本当に何なのよこの子は・・・。
し、死にたくない・・・。
だ、誰か・・・助けて。
魔王様・・・。
龍王様・・・。
誰でもいい・・・お願い・・・。
私はあまりの恐怖で呼吸が乱れ、目には涙が浮かんでいた。
するとあの少女は私の表情を見て笑みを浮かべた。
私はそれを見て深淵の底に突き落とされる。
そしてそこで悟った。
私の旅路はここまでだと。
私は気づかぬうちに眠れる獅子の尾を踏んでしまった。
もっと私が強ければ・・・もっと私が賢かったらこうはならなかったかもしれない。
私はあまりにも人間を舐めていた。
それが私の敗因。
そこで私は大きく深呼吸すると静かに覚悟を決める。
そして私は体にかけていた回復魔法を止めると静かに構えをとる。
そんな私を少女は嘲笑うかのような表情で見ていた。
そして、
「私の全身全霊をお前にぶつけてやる。この化け物が!」
と言うと私はさっきとは比べ物にならない速さで少女との距離をつめる。
そして爪で私の出せる最速の連撃を放つ。
「竜爪、超迅斬!」
この技は竜の鱗を粉々にするほどの威力の斬撃を一秒に30発撃ち込み続けるというものだ。
だが私の動きが遅くなったのかもしくは少女の動きが早くなったのかはわからないがこの攻撃を少女は余裕の笑みを浮かべながらよけ続けていた。
それに加え少女はさっきの姿勢をこの時ずっと保っていた。
飛んだ化け物め。
そして、
「まだまだー!」
というとさっき使った大量の電撃を放つ電魔法、
「百雷雷轟電転!」
を超迅斬と一緒に放つ。
しばらくの間その少女はさっきと同じように避けていた。
私はそれでも攻撃をやめなかった。
だが少女が飽きたような表情を見せると、
「顕現せよ、魔剣スルト。」
と言うとさっきまで赤黒い光に包まれていた腕が剣に変化した。
剣の持ち手は漆黒に染まっていてその中央に赤黒い魔石のようなものがはめてあった。
そして剣身は赤黒い炎でおおわれていた。
私はその剣が「死」そのものかのように感じた。
だが私は攻撃をやめなかった。
すると少女が目を閉じながら、
「終末世界。」
と言ったかと思えば気付くと私の両手が宙を舞っていた。
そしてそれと同時に私の視界に自分の体が映る。
あれ、なんで私の体があんなところに・・・。
そう私はあの一瞬で手と頭を切り落とされてしまっていたのだ。
それと同時に私の手と体が灰のようになって消えた。
そして私の頭はそのまま地面に落ちる。
すると少女が私に近寄ってきた。
そして、
「君の名前を教えてくれないかな。」
と私に微笑みながら聞いてきた。
私はそれを聞いて一瞬、え?と思ってしまった。
だってさっき・・・。
と考えようとしたがもう頭が回らなくなってきていた。
だから私は、
「ライ。」
とだけ言う。
するとその少女は、
「ライちゃん・・・か。いい名前だね。」
と嬉しそうに言うと私の頭を撫で始める。
いつもの私ならここで怒鳴りつけているだろう。
でもこの時私は意識が朦朧とし始めていたから文句を言うことすらできなかった。
そして少女は続けてこう言った。
「ウチは君みたいな頑張り屋さんと本気の殺し合いができて楽しかったぞ。いい戦いっぷりだったよ、ライちゃん。」
私はその言葉を聞いて自然と涙があふれていた。
久しく言われていなかった自分に対する褒め言葉。
私は昔から抜けてるところがあって魔王様や龍王様そして他の魔族の人たちにもずっと馬鹿にされていた。
そんな私でもやるときはやるんだということを見せつけるために強くなる努力をしたが誰もその努力を認めてくれなかった。
むしろお前みたいなやつが強くなってもただ強いだけの馬鹿になるだけだと周りに言われ続けていた。
でも実際その通りだった。
私が努力して得たのはただ強いだけの馬鹿という称号だった。
でもこの少女は私の努力を見抜いていた。
そして私が一番褒められたかったところを褒めてくれた。
私はただただそれがうれしかった。
やっと・・・私の願いが・・・かなっ・・・た。
そこでライの頭は灰となって消えたのだった。
ライが完全に焼き尽くされたのを確認したガーベラ?はライと最初に戦っていた開けた場所に戻ろうとしていた。
この時ウチは森の中で完全に迷ってしまっていた。
そんな森の中で迷っている美少女であるウチの名前はガーブル・シレイン。
名前はこれであってたかな・・・。
まあ、いっか。
実はウチってこう見えて方向音痴なんだよねー。
なんつって・・・。
いや、そんなボケをしてる場合か!?
早く元の場所に戻ってあの大人たちを見つけないとこの体がもたないぞ。
ウチはそういって森中を駆け回り始める。
そう、もうとっくにわかっていると思うけどウチはこの少女本人ではないんだよねー。
んーなんというか、残滓というか、残り香というか、まあ、そんな感じのものと思ってくれれば全然いいよ。
あくまでウチの予測だけどこの子の体にウチの魂が思っていたよりも合っていたからこうなったんじゃないかと思っているんだよねー。
まあ、それはそれで面白いからいいんだけどね。
そんなことを考えながら走っていると突然足からバチッという音がする。
そしてそれと同時にとんでもない痛さに襲われる。
あちゃー、これはやってしまったなー。
どうやらこの体はもうこれ以上動けなくなってしまったらしい。
それにウチの意識もだんだんと薄くなっているから本格的にまずい状況になっちゃってるねー。
んーどうしようか。
パッと見この森にはたくさんの魔物の気配がするしこのままここにいたら確実に死んじゃうんだよなー。
やっと歯車が嚙み合ってきたっていうのに・・・。
はあ、マジでどうしよう・・・。
クソーこのままじゃまたアイツに馬鹿にされる羽目になるじゃん。
そんなのはもう嫌だ!
嫌だ嫌だ嫌だー!
ウチがそうやって駄々をこねていると人間の気配が南東方向の距離1ファイから近付いてきていることに気付く。
はあ、これであのイケメンの皮を被ったロリコンお化けに馬鹿にされずに済むわー。
これで一件落着だね☆
するとその時バチンと大きな音が体の中で響いた。
そしてそれと同時に業火に焼かれるような激痛に襲われ体も動かせなくなってしまった。
あれ、これウチやりすぎたかもしれない。
だって全身の筋肉が再生不可能なレベルで切れちゃってるもん。
あちゃー、まあこれはこれで・・・んーよくないね。
まあ、でもこの体はウチの体と違って回復魔法が効くようだしそこは使えるやつに任せるとするかー。
お、ちょうど意識の朦朧が激しくなってきたねー。
それじゃあまた?なのかな。
まあいいや。
またねー。
そうしてガーベラ?の意識は完全にガーベラの中から消滅した。
しばらくするとロストたちが地面に横たわっているガーベラを見つける。
そして体の状態を確認すると全身の筋肉の損傷、数か所の骨折、そして右手の損傷という大怪我をガーベラはしていた。
意識も戻りそうにないと判断したロストたちは応急措置の回復魔法をかけるとそのまま家に帰っていったのだった。
2日後ガーベラは自分のベッドの上で目を覚ますことになる。
そしてそこでガーベラは三眷竜のライを自分が討伐した事実を知ることになる。
当然その時はあの変な女に乗っ取られていたためガーベラにその記憶は一切なかった。
だがガーベラはその功績で名が帝国全土に知れ渡るほどの有名人になる。
暁闇の薔薇「ガーベラ・シュラーイン」として・・・。
変な女「おい、このイケメンの皮を被ったロリコン野郎(IKKR野郎)。なんでウチがお前なんかに変な女呼ばわりされないといけないんだよ(チョイ怒)。」
IKKR野郎「いや、だってそれは事実だろ?こん中で一番性格が終わっているのはお前だってあの時の人たちも言ってたよ。」
変な女「は~い?そんなのウチは知らないんですけど(激怒)。」
IKKR野郎「まあまあ、少しは落ち着こうじゃないの(嘲笑いながら)。」
変な女「うぜーんだよ、このロリコン!」
そしてこの後IKKR野郎は女に顔の原型が残らないほどにボコボコにされるのであった。
???「うるさい・・・。あ、おしまい。」