表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

ep.16 ママだってやるときはやる女なのよ

 私はドアの端から顔を少し出してジールの様子をうかがっていた。

 そんなジールは今日の夕方ごろからずっと気を張っているせいかとても疲れているように見えた。

 あれほど疲れているジールを見たのはいつぶりかしら?

 私がそう呑気に考え事をしていると、


「クレア、そこで何をしてるんだ?」


 とジールに声をかけられる。

 あら、バレちゃったじゃない。

 まったく、私ったら何をしているのかしら。

 私はそう思いながらドアの陰から姿を現す。


「いやね~、ジールがさっきからずっと気を張りつめていたからさ~。私、それで心配になちゃってね~。」


 私がそういうとジールは大きなため息をつく。

 そしてさっきまで下を向いていた顔を私に向ける。

 そんなジールの顔には生気がまるでなかった。

 私はそんなジールを見てただ黙っていることしかできなかった。

 するとジールが話し始める。


「心配かけてすまないな、クレア。でも、あのしっかり者のレオンがこんな時間になっても帰ってこないなんて・・・。それでいろいろ変なことを考えちゃってさ。」


 そう話すジールの言葉の端々に疲れが見え隠れしていた。

 まずいわね、このままじゃあジールは自分を追い詰めすぎて廃人みたいになりかねないわ。

 まったく昔からそういうところを直してって言ってるのに変わらないわね。

 そう思った私は私らしい方法でジールを元気づけることにする。

 私はジールの隣に座るとジールの頭を私の膝に押し付ける。


「お、ちょっ・・・。」


 ジールはそう言って私の手を振りほどこうとしたが私がさっきより力を込めると諦めてそのまま私に身を任せた。

 そして私はジールに膝枕をしながら頭を優しく撫で始める。

 するとジールが何かを話し出そうとしたので私はあの時と同じように「花畑」という歌を歌ってジールの話を遮る。

 そういえば最後にこんなことをしたはいつだったかしら。

 懐かしい感覚がするわね~。

 確かあの時はこの村の端にあるお花畑でこんな風にしてたわよね~。

 それにあの時もジールはいろんないざこざに巻き込まれていて結構疲れ果ててたわね。

 本当、懐かしいわ~。

 するとその時誰かの声が部屋に響く。


「お取込み中のお二人さん、少しいいかね?」


 声がする方を見るとそこにはロストさんが意地悪な笑みを浮かべて立っていた。

 こんな時間にロストさんが来るなんて珍しいわね。

 何かあったのかしら。

 私がそんな風に驚いているとジールが顔を赤らめながら起き上がった。


「コホン、すまんロスト。今のは見なかったことにしてくれ。」


 ジールのその言葉に私は少しカッとする。

 だから久しぶりにジールをからかってみることにした。


「何よジール、そんなに私の膝枕が嫌だったのかしら?」


 私がそういうとジールは途端に焦り始める。

 そして、


「いや、その、それは違ってな・・・。」


 と必死に言い訳をしようとする。

 私はそんな可愛いジールを吹き出しそうになっているのを必死に抑えていた。

 だが私がそうしていたのにも関わらずロストさんが腹を抱えて笑い出してしまったので私もそれにつられて吹き出してしまった。

 そこでジールは初めて自分がからかわれていることに気付くと恥ずかしがりながら頭を軽くポリポリとかいた。

 しばらくて私たちの笑いが収まる。

 そしてそこで私はロストさんにこの家に来た理由を尋ねた。

 するとロストさんの表情が途端に暗くなる。

 どうしたのかしら。

 私がそう考えているとロストさんが話し出す。


「実は今日の昼からマルクが帰ってきてないんだ。それでマルクは出かける前にレオンと隣町に行ってくると言っていてね。もしかしたらここにいるんじゃないかと思ったんだけど・・・。」


 そう話すロストさんはどこか疲れていたことに私は気付く。

 そして今回の件は私たちの家族だけの問題ではないことにも気づく。

 うそ、てっきりレオンだけだと思っていたのにマルク君まで・・・。

 その時部屋がしばらくの静寂に包まれた。

 するとロストさんがその静寂を破るように話し始めた。


「その感じだとまさかレオン君も帰ってきてないのか?」


 その言葉を聞いたジールが静かに頷く。

 それを見たロストさんはしばらく何かを考えた後、


「俺もここであいつらの帰りを待っていいか?」


 と言う。

 ジールはそれを了承した。

 そこで、


「私もレオンたちの帰りを待ちたいわ。」


 と言って私も待とうとしたがジールはそれを、


「ダメだ。」


 ときっぱり断ってきたのだった。

 私はこの時いろいろと言いたいことがあった。

 だがジールは昔から一度言ったことを曲げようとしないところがある。

 だからここで何かを言ってもすべて無駄に終わる。

 でもせめて理由だけでも聞かないと気が済まないわ。

 そう思った私は、


「なんでなの・・・。」


 と聞くとジールは少し黙り込んだ後、


「これは父親が出る幕だ。」


 と一言だけ言って黙り込んでしまった。

 私はそれを聞くと、


「そう。」


 とだけ言って部屋に戻った。

 その様子を見ていたロストさんはどこか気まずそうにしていたのだった。





 部屋に戻った私は必死に寝ようとしていた。

 だが部屋に差し込んでくる月光がいつもよりまぶしく感じてしまってまったく寝れる気がしなかった。

 それはそうよ。

 だって私はレオンの母親なのよ。

 さっきはいつもと同じように振舞っていたが実際は今にでもレオンを探しに行かないと正気を失いそうになるほどレオンのことが心配で心配で仕方がなかったんだもの。

 でも私はそんな姿を家族に見せたくないわ。

 私は家族のムードメーカーだからそんな姿を見せちゃうとみんなに迷惑をかけてしまう。

 こんな大変な状況でそんなことはできっこないわ。


「それにしても何よさっきのジールの言いぐさ。ここは父親の出る幕だ?何よそれ。私だってレオンの母親なのよ。なんで私の気持ちが理解できないのかしら・・・。」


 それに加え私はさっきのジールの言葉に対する怒りもあって余計眠れそうになかった。

 本当にあれはムカついたわ。

 さすがにあのいい方はないわよ。

 もう、あの分らず屋!

 その時私の部屋の扉が開く音がする。

 驚いた私はその方向を見るとそこにはガーベラの姿があった。


「ママ、私、寝れないの。一緒に寝てもいい?」


 そういうガーベラにはいつもの元気がなかった。

 まあ、そうよね。

 だってガーベラは本当に昔からレオンのことが大好きだったものね。

 きっと心配で寝れないのだわ。

 そう思った私は、


「ええいいわよ、ママと一緒に寝ましょ。」


 と言ってガーベラが入れるようにベッドを少し整えるとガーベラと一緒にベッドに入った。

 ガーベラはその時ずっと私に抱き着いていた。

 私はそんなガーベラを見て本当に優しいお姉ちゃんなんだなと改めて感じる。

 そしてガーベラの頭をなでながらガーベラが小さかった時によく歌ってあげていた歌である「花畑」を歌う。

 私がしばらくそうしているとガーベラの抱き着く力が弱くなり完全に眠ってしまった。

 私はそんな可愛らしいガーベラの寝顔を見て安堵する。

 本当によかったわ。

 その時私は大きなあくびをする。

 ふわー、やっと眠気が来たわ・・・。

 そう思った私はガーベラの額にキスをしておやすみと言いうとガーベラと向き合いながら眠り落ちたのだった。





「・・・マ、起き・・・。ねえ、ママってば。」


 私はガーベラのその声で目を覚ます。


「ん~どうしたの~?」


 私はそういいながら窓の外を見るとまだ夜だった。

 いったいどうしたのかしら~。

 私は一瞬そう思ったがそこで森がいつもより騒がしくなっているのに気づいた。

 それに加えとても小さいが嫌な気配?魔力の波動?みたいなものが外を漂っていた。

 ジールはこれに気付いているのかしら・・・。


「ママもわかった?」


 ガーベラが私にそう声をかけると私は静かに頷く。 

 その時私は改めてガーベラはすごい子だなと感じた。

 こんな微弱な気配を察知して起きるだなんて・・・。

 全盛期の私でもそんな芸当はできないわ。

 恐るべし我が愛しの娘。

 でもさすがにこれはやばい気がするわ。

 そう思った私はガーベラに、


「とりあえず戦闘の準備をしてちょうだい。それとパパの部屋からパパの装備も持ってきてくれないかしら。」


 と言うとガーベラは軽く頷いて私の部屋を出ていくのだった。

 そして私は魔導師時代の装備を部屋のクローゼットから取り出すと一瞬懐かしいと思いながらも急いでそれに着替える。

 着替え終えると私は部屋にある鏡を見て自分の姿を確認する。

 そしてそこでとあることに気付く。

 少しお腹周りがきついわね・・・。

 それに足もなんか、うん。

 明日からダイエットを始めることにするわ・・・。

 するとそこでガーベラが開いている部屋のドアをコンコンコンと叩く。

 そして私のそんな姿を見ると今にでも吹き出しそうな顔をしながら、


「ぷ、ママ、何してるの?ぶふ。」


 と私の恥ずかしい行動を指摘してくる。

 そんな私はというと顔が破裂しそうになるほど赤くなっていた。


「も、もう~、こっちを見ないで~。ほら、パパのところに行くわよ。」


 私は顔を両手で隠しながらそういうとジールにさっきのことを報告するために一緒に下の階へと降りて行った。

 そして居間に着くとそこには誰もいなかった。

 あれ?

 さっきまではロストさんと一緒にいたはずなのに・・・。

 するとその時、


「いい加減にしろ!もう少し落ち着いて話せないのか?」


 という声が玄関の方から聞こえてきたのだった。

 これはロストさんの声!?

 え、ロストさんが怒っているなんて珍しいわね。

 私はそう思いながら一度ガーベラと顔を見合わせるとそのまま外の会話の盗み聞きを始めた。

 そして私たちはその会話の内容があまりにもやばすぎてその場に固まってしまうのだった。

 Aランクの魔物が20匹、それに加え普段はしないはずの集団行動を・・・?

 その時私の体が震え始めていた。

 こ、これは・・・全力で暴れられるいい機会じゃない!

 そう、私は魔法で大暴れできると思い体が震えるほど喜んでいたのだ。

 なんせここに来てからまともに魔法を使っていなかったからね。

 確か最後に魔法で暴れたのはこの村の教会でシスターをやっていた時にこれが私の奥義よと言って森に氷の上位魔法をぶっ放した時以来ね。(本当は最上位魔法を使おうとしていことは内緒だよ☆)

 あの時は、うん、最高だったわね。

 そう私が過去の愉悦に浸っているとガーベラのことを思い出す。

 あ、でもガーベラはこういうことは初めてだからきっと緊張しているわよね。

 大丈夫かしら。

 そう思った私はガーベラの方を見るとその心配はすべて無駄だったことを知る。

 なんとガーベラは目を輝かせながら、


「魔物・・・しかもAランク・・・、ぐへへ。」


 と嬉しそうに口にしていたのだ。

 私はそんなガーベラを見て、


(あれ?もしかして私の悪いところ受け継いじゃってる?)


 と不覚にも思ってしまったのだった。

 その時ジールの戦いに行くという声が聞こえたので私たちはそのままジールの前に万全の態勢で出た。

 ジールはそんな私たちを見て非常に驚いていた。

 そんなジールに私たちも一緒に戦うわというとジールは少し考え事をした後、


「ダメだ。ついてくるな。」


 と一言だけ言って黙ってしまった。

 もちろん私とガーベラはそんな返事に納得できるわけもなくジールを問い詰める。

 するとロストさんが、


「ジールは君たちを危険な目に合わせたくないんだよ。二人ともジールの気持ちを分かってあげてくれ。」


 と右目でウィンクしながら私たちに言ってきた。

 ガーベラはそれに気づいていなかったが私はそれに気づくと少しの疑問を持ちながらも家の中に戻っていった。

 居間に着くとガーベラが、


「なんであれ以上言わなかったの?私だって戦いたいのに。」


 と残念そうに言っていた。

 私はそんなガーベラにさっきの状況を説明した。

 するとガーベラはしぶしぶ納得してくれたのだった。

 その時今まで聞いたことのないような鳴き声が響き渡る。

 それと同時に森のほうからとてつもない量の魔物の気配が漂ってきた。

 これはやばいな・・・。

 その時私はそう考えていたのだった。

 しばらく待っているとロストさんが戻ってきた。

 そしてさっきは申し訳なかったと一言置いてから話し始めた。


「ジールはああなったら何を言われても言うことを聞かないからね。だから一度君たちを戻らせたんだ。」


 ロストさんは失笑しながらそう話す。

 なるほど、だからさっきはあんなことを言ったのね。

 私はそう納得するとさっきの合図のことを聞く。

 するとロストさんが少し怒りながら、


「あのジールの馬鹿はさ一人であのAランクどもの相手をするつもりなんだよ。魔法が使えるならまだしも剣だけだとあれは死ぬために向かっているのと同然。俺はそんなジールを見たくない。」


 と話した。

 私はそんなロストさんを見て本当にジールのことを大切に思っているんだなと思った。

 まあ、でも私のジールに対する愛情と比べたら大したことはないわ。

 するとロストさんは話を続ける。


「だから君たちにも一緒に戦ってもらいたい。いや違う。この村であの化け物どもと戦えるのは君たちしかいないんだ。」


 私はそれを聞いてなるほどと納得する。

 確かにこの村にはジール以外の衛兵や狩人がいる。

 だがその人たちがいくら束になってもAランクの集団には手も足も出ずに死んでしまうだろう。

 なんせAランクは一体でも帝国の騎士20人でかかってやっと勝てるぐらいの強さをしているからね。

 それだったらかつて帝国で名をとどろかせていた魔導師とジールより数倍強いガーベラに任せた方がこの村が助かる確率が高いってことか。

 そう考えた私は一度ガーベラの様子を確認する。

 どうやらガーベラもそのことに納得しているようだった。

 それなら私の答えは一択しかない。


「わかったわ。いっちょ暴れてこようじゃないの。」


 私たちはそう言って家から出ると魔物の気配がする方を目指して走り出したのだった。





 森の中を走っていると私は魔物とは別の気配を察知する。

 これは何かしら?

 魔物にしては変に人間味があるわね。

 するとその時私はガーベラに声をかけられる。


「ママもこの気配、気づいてる?」


 どうやらガーベラもこの気配に気づいているようだった。

 その時ロストさんも、


「実は俺も気づいていたんだ。」


 と言った。

 どうやら私だけではなくみんなもこの気配に気づいていたらしい。

 するとこの後ロストさんが衝撃的なことを口にする。


「これは・・・魔族の気配だよ。」


 魔族・・・。

 私はそれを聞いてさっきまであった心の余裕が一気になくなってしまった。

 確か魔族ってとんでもなく強くて残忍な種族なのよね。

 なんでそんな魔族がこんなところに・・・。

 というかなんでロストさんはこの気配が魔族のものだってわかったのかしら?

 そう思った私はロストさんにそのことを聞くとロストさんは少し黙り込んだあとに話し出した。


「実は俺の嫁、アリアーナは魔族だったんだ。」


 嫁が魔族・・・ということはマルク君は半魔ってこと?

 何よそれ初耳よ。

 だけどもしそれが本当ならマルク君からなんでそういう気配は感じなかったのかしら。

 その時ガーベラが私の気持ちを代弁するようにそのことをロストさんに聞いた。


「だとしたらなんでマルクからはそういう気配が感じられなかったの?それに見た目だって完全に人間じゃない。」


 ロストさんはそれを聞いてしばらく黙り込んだ後悲しそうに話してくれた。

 マルクの母はヴァンパイアだったこと。

 ヴァンパイアは妊娠しない代わりに自分の血を相手に入れることで数を増やしていること。

 それなのにアリアーナさんはマルクを妊娠したこと。

 その反動でアリアーナは亡くなってしまったこと。

 そしてそれらのことからマルクはほとんど魔族の特徴は持たなかったのではないかとロストさんは推測していること。

 ロストさんはこんなことを話してくれた。

 そこで私はそのマルクは「ほとんど」魔族の特徴は持っていないということに疑問を持った。

 ほとんどってことは完全にヴァンパイアの特徴がないっていうわけではないってことよね。

 そう思った私はロストさんにそのことについて質問をする。

 すると、


「マルクのあの魔法の才能、人より白い肌、赤茶色の目、そしてあの左目。多分これらの特徴はヴァンパイアの由来のものなんだと俺は考えている。」


 と言ったのだった。

 確かに言われてみればマルク君は私以上に魔法の才能があった。

 それに加えてあのマルク君の左目。

 あれはなんとなく人の目をしていないように感じていた。

 私はそれを聞いて完全に納得した。

 でも辛いことを思い出させてしまったわね。

 そう思った私はロストさんに謝ることにした。


「辛いことを思い出させてしまってごめんなさいね。」


 私がそういうとロストさんは、


「いや、謝らなくていいんだよ。これは俺が話したくて話したんだし。」


 と言った。

 そんなロストさんの目はどこか遠くを見ているような感じだった。

 するとその時目の前からとてつもない魔力を感じると大きな水の渦ができたことに気付く。

 これはジールの魔法!?

 早くいかないと。

 そう思った私は、


「まずいわね。さっさと行きましょ。」


 と言ってさっきより速い速度で走る。

 すると開いたところに出る。

 そこには大量の魔物に囲まれているジールがいた。

 だがその時ジールは後ろからストーンゴーレムの攻撃をまともに食らってしまい吹っ飛ばされてしまった。

 するとガーベラがとあることに気付き叫ぶ。


「あ、あれはミノタウロス!?なんでここに・・・。」


 ガーベラが指さす方を見ると本当にそこにはミノタウロスが立っていたのだった。

 なんでこんなところに・・・。

 ダンジョンの魔物じゃなかったの?

 いや、今はそんなことどうだっていいわ。

 ジールが危ない。

 そう思った私は二人に指示する。


「二人は私が魔法を打って周りの雑魚を倒したらジールの助けに行って。」


 私がそういうと二人は頷く。

 そして私はここで火の上位魔法の詠唱を始める。


「すべてを焼き尽くす破滅の天火。紅蓮の炎が貴様を骨の髄まで食らいつくすだろう。火魔法(イグニスマジック)発動。爆熱火針(デトネーションスピア)。」


 すると空から大量の火の針が魔物たちにめがけて放たれ次々に魔物たちに突き刺さった。

 そこでようやく魔物たちがこっちの存在に気付き走ってきたがもう遅い。

 その時魔物たちの体に刺さっていた針が爆発し魔物たちの体も一緒に爆散したのだった。

 残っている魔物は中央にいるミノタウロス二体とジールの方にいるストーンゴーレム一体とはぐれミノタウロスが一体ってところね。


「あとは任せたわよ。」


 私がそういうとガーベラはロストさんと一緒にジールの方へ向かった。

 そしてガーベラがジールの前にいたストーンゴーレムとミノタウロスをまるで埃を払うかのように吹き飛ばしてしまう。

 私はそれを見て顎が外れそうになる。

 と、とんでもない力・・・。

 ああ、私のかわいらしい娘がだんだん超人の域に足を突っ込み始めているわ。

 頼むからかわいらしい女の子のままでいてくれ~。

 私がそんなことを考えているとガーベラが残りの魔物の相手をし始めた。

 Sランクの魔物三体にAランクの魔物が一体の4対1という圧倒的不利な盤面なのにもかかわらずガーベラはそれらの魔物を圧倒していた。

 一体、また一体とミノタウロスの首を切っていく。

 その時のガーベラの剣は金色に光っていた。

 すごいわ。

 あそこまで剣幻影(ソードエフェクト)を扱えるだなんて。

 でもほんととんでもない強さをしているわね・・・。

 その時ロストさんが、


「ガーベラちゃん・・・噂以上に強いね。」


 と言う。

 私はそれを聞いて驚く。


「う、うわ。いつの間に!?」


 そうさっきまではジールのところにいたはずなのにいつの間にか私のとなりにいるから私は驚いていたのだ。

 するとロストさんが、


「ははは、足には自信があるものでね。」


 と笑いながら言った。

 そいうことじゃなくてどうやって気配なく私の隣に来たってことだったんだけど・・・いいか。

 するとロストさんは続けて、


「あ、そう。ジールの周りに小さな防護結界を張っておいたから安心して。」


 と言う。

 私はそれを聞いてホッとする。

 なんせさっきから魔族の気配が消えていなかったからね。

 今戦闘不能になっているジールが襲われたら大変だもの。

 するとその時私はガーベラがミノタウロスとストーンゴーレムの頭を同時に吹き飛ばしているところを目にする。

 あらあら、もううちの子は何でもありだわ。

 もうやってることが人間のそれじゃないわ。

 私はそんな12歳の少女がそんなことをしている光景をみて語彙力がなくなってしまっていた。

 その時のロストさんはというとその光景を見て目を丸くした状態で固まってしまっていた。

 そしてガーベラが不服そうに私たちの元に戻ってくると、


「ミノタウロスは結構強いって聞いていたけど大したことなかったわ。」


 と言って剣を鞘にしまっていた。

 この時から私の中でのガーベラの認識が大きく変わってしまった。

 今まで人より少しだけ戦闘の才能がある女の子という認識だったが今はかわいらしい女の子の見た目をした超人というものになってしまった。

 だから私はいちいち驚かないわよ。

 驚くだけ疲れるからね。

 そんなことを考えていると私たちの後ろからとてつもない気配が漂ってきた。

 そして、


「はあ~もう、まったくなんでお前らみたいな化け物がこんなところにいるのよ。」


 と後ろから聞こえてきた。

 そこで私たちはゆっくりと後ろを振り向くとそこには頭に大きな角をはやした紫髪の女が立っていた。

 その女は私たちの視線に気づくと、


「この神聖なる竜人(ハーフドラゴン)族の前にひれ伏しなさい、この愚かな人間どもよ。」


 と不敵な笑みを浮かべながら言ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ