ep.15 村が大ピンチ!!全力で戦ってみた☆
レオンたちは今日の昼頃にオーブレストへ行ったっきり帰ってきていなかった。
魔動時計を見ると現在の時刻は午前2時47分。
そんな真夜中、俺はとある男と一緒に俺の家の居間でレオンたちの帰りを待っていた。
その男の名はロスト・ハンスト、今日レオンと一緒に隣街へ行ったマルクの父親だ。
ロストは俺の親友で俺が帝国騎士団「紅」の副団長をやっていた時からの知り合いだ。
出会えば杯を交わしながら談笑し、時には家族ぐるみで遊んだりするほど俺たちは仲がいい。
そんな俺たちだったがこの時だけは少し違っていた。
お互い不安と怒り、そしてそれによる疲労感で同じ机を共有しているのも関わらず俺たちはただ下を向いて黙っていた。
「遅いな・・・。」
「ああ・・・。」
疲れ切っていた俺たちはそんなつまらない会話をするとまた黙り込む。
その時の部屋には窓から入る風の音と外で鳴いている虫の声だけが響いていた。
深夜で俺たち以外は寝てしまっているから当たり前なはずなんだがなぜか俺はそんな状況が変だと感じていた。
その時ロストが重い口を開いて俺にとある提案をする。
「やっぱり、捜索隊を編成したほうがいいんじゃないのか?」
ロストがこの提案をするのは今日で6度目だった。
だが今回も俺は、
「いや、まだだ。」
と提案を拒否した。
するとロストが大きなため息をつく。
俺はそんなロストを見ていると心が締め付けられるような思いになる。
俺だって父親だ。
ロストの不安に思う気持ちがわからないわけがないだろ?
正直に言うと俺も捜索隊を編成してさっさとレオンたちのことを見つけ出したいと思っているんだ。
だがここで俺がそうしないのにはちゃんとした理由がある。
それはあまりにも情報が少なすぎるからだ。
ここら辺一帯は魔物の活動が活発な地域。
だからその危険性も踏まえて捜索隊を編成しなければならなくなる。
だがレオンたちの情報がない今、もし仮に捜索隊を編成してレオンたちのことを探しに行くとなるとかなりの被害を出すことになってしまうだろう。
それにもしかしたらレオンたちはただオーブレストの宿で寝泊まりをしているだけという可能性だってある。
だから俺はロストの提案を仕方なく断っていた。
本当にすまんな、ロスト。
するとその時ドンドンドンと玄関のドアを強くたたく音が聞こえてきた。
俺たちはその音を聞くとお互いの顔を見合わせる。
帰ってきた。
その時のロストも俺と同じことを思ったようだった。
俺らは一緒に玄関に向かう。
そして玄関のドアを開けるとそこにはレオンとマルクが・・・ということはなかった。
そこには村の情報伝達をしている男が立っていた。
だがどこか様子がおかしい。
息を荒げていて、ものすごい汗をかいていた。
俺はその様子を見てなんとなく嫌な予感がする。
そして俺のその予感は見事に的中してしまう。
「ジールさん、まずいです。あ、ロストの旦那もいるじゃないですか。あの、ちょっと本当にやばくて・・・。」
その男はとても焦りながら俺たちに必死に情報を伝えようとしていた。
だがあまりにも焦っているせいでその男の伝えたいことがまったく伝わってこない。
「おい、焦り過ぎだ。情報は俺の家に上がってから話してくれないか。飲み物を出すからそこでゆっくり落ち着いて話してくれ。」
俺はそういってその男を家に上げようとした。
だがその男は、
「いや、そんなことをしている場合じゃないんです!本当に緊急事態なんですよ!」
と断った。
いったい何なんだ。
何が起きたって言うんだ。
何かやばいことが起こっているのはわかったがこいつがあまりにも焦っているせいで何を伝えたいのかがさっぱりわからない。
落ち着かせなければ話にならないっていうのに・・・。
まったくどうすれば・・・。
その時さっきまで黙っていたロストが怒鳴るような声で話し出す。
「いい加減にしろ!もう少し落ち着いて話せないのか?」
ロストは普段温厚で優しい人だったから俺は少し驚いてしまった。
もちろんその男も同じだった。
普段怒らない人の怒るところってこんなにも怖いんだな・・・。
でも助かったよ、ロスト。
俺は心の中でロストに感謝する。
そうして男は何とか落ち着きを取り戻すと真剣な表情を浮かべながら話を始めたのだった。
「単刀直入に言います。危険度Aランク相当の魔物がゲファール樹海から出てきて20体ほどの大群をなして周辺の村を襲い壊滅させました。そして今、その魔物たちはこちらに向かっているようです。」
俺たちはそれを聞いてその場で固まってしまった。
Aランク相当の魔物・・・。
一体だけでも厄介だというのにそれが20体も。
というか魔物って集団行動しないはずじゃ・・・。
さすがにそれはまずいな。
これは俺たちだけで何とかなる話じゃないな。
帝都に連絡して騎士団を派遣してもらわないといけないレベルだぞ。
「帝都に連絡はしたのか?」
俺がそう聞くと男は困ったような顔をする。
俺はそれを見てなんとなく察した。
「まさか、騎士団は動かないって言ったのか?」
俺の言葉を聞いた男は静かに頷く。
クソが。
その魔物の大群を俺らだけで何とかしろってことかよ。
いくら俺たちが辺境に住んでいるとはいえ、これでも帝国の民なんだぞ?
これだから騎士団は嫌いなんだよ。
俺がそんなことを考えているとロストが俺の肩を叩く。
「こうなった以上は俺たちだけで何とかするしかない。」
ロストは絶望している俺にそう言葉をかける。
だが俺はそれを聞いてもより絶望が増していく一方だった。
するとロストが大きなため息をついた。
そして、
「俺は守りたいもののために最後まで絶対に諦めたりしない!だろ?元「紅」の副団長、聖人ジール・シュラーイン様。」
俺はその言葉を聞いてハッとする。
それは俺が「紅」の副団長に就任した時に宣言した言葉だった。
俺は昔からこの国が大好きだった。
そしてこの国に住んでいる人たちも大好きだった。
みんな暖かくてお互い困ったことがあったら助け合う、俺はそんな帝国の民が大好きだった。
だから俺はそんな人たちを守れるような存在になるために必死に努力して「紅」の副団長になった。
そうじゃないか・・・。
なんで俺はそんなことを忘れていたんだ。
ここには俺の守りたいものがたくさんいる。
帝国の民、親友、そして俺の家族。
俺が諦めたらここにいる守りたいものを守れないじゃないか・・・。
俺は絶対に諦めたりしない!
「ありがとうな、ロスト。おかけで自信を取り戻すことができたよ。」
俺がそういうとロストが呆れたように笑う。
そして俺は情報伝達の男にこう伝えた。
「今からそいつらを迎え撃つ。村で戦えるやつを集めろ。」
その時突然今まで聞いたことのないような鳴き声が森の奥から聞こえる。
な、何なんだ今のは・・・。
それにとてつもない量の魔物の気配もする。
ってことはもうすぐそこまで来ているのか。
まずいな・・・。
今からみんなを集めても遅い。
これはもう・・・。
そう思った俺は、
「早くみんなを呼んで来い。それと戦えない奴は非難させろ。俺がまずあいつらの相手をするから準備が整い次第応援にこい。」
と言うと俺は戦いの準備をするために一度家に戻ろうと振り返る。
するとそこにはガーベラとクレアが俺の武器と防具を持って立っていた。
それに加え二人とも完全武装をしていたのだった。
え、いつ起きたの?
俺は心の中でそう突っ込む。
「パパ、私たちも一緒に行くよ。」
「そうよ、ジール。いくらあなたでもあの量の化け物は相手にできないでしょ?」
二人はそういうと俺に武器と防具を渡してきた。
そして俺はそんな二人を見てとても頼もしいと思った。
なぜならガーベラは俺より数倍強いし、クレアはかつて帝都で名をはせていた魔導師だったからだ。
だが俺は、
「ダメだ。ついてくるな。」
と断る。
すると二人は驚いたような顔をする。
そして、
「なんでよ、パパ。私だってこの村を守るために戦いたいわ!」
ガーベラは必死に俺にそう伝える。
それに続くようにクレアも、
「そうよジール。それにあなた一人だけだと死ぬかもしれないじゃない!そんなの私は絶対に許しませんわ。」
と俺に怒りながら言う。
だが俺はそんな二人の言葉を聞いてもただ下を向きながら黙りこんでいた。
確かにこの二人が一緒に来ればどれだけ心強いことか。
だがこの二人は俺の家族。
守るべき存在をわざわざ戦場という危険な場所に連れていくなんていう頭のおかしいことはしたくない。
だから俺は断った。
二人の視線が痛い。
だがこれは父親としての判断だ。
すまない。
するとロストが俺の考えに賛同するように二人の説得をし始めた。
「ジールは君たちを危険な目に合わせたくないんだよ。二人ともジールの気持ちを分かってあげてくれ。」
ロストがそう言うと二人とも何か言いたげだったがしぶしぶとその場を後にした。
すると今度はロストがこちらに話しかけてきた。
「ここのことは俺に任せろ。お前は構わずに行け。」
そうしてロストは俺の胸を軽くたたく。
「ありがとう、ロスト。」
俺がそういうとロストは俺に優しく微笑む。
俺はそのロストの表情を見て気持ちを切り替える。
そして俺は戦いの準備をする。
準備を終えると俺はロストに、
「任せたぞ、ロスト。」
とだけ言って魔物の気配がする方へと向かった。
だがその時ロストが、
「死ぬんじゃねーぞ、この大馬鹿野郎が。」
と静かに言ったことに俺は全く気付いていなかったのであった。
森の中をしばらく走ると魔物の気配がだんだんと強くなってくる。
この気配の強さと多さ的に本当にAランク相当の魔物が群れを成して移動しているんだな・・・。
だが一体ずつ倒していけば何とかなるだろう。
魔物の気配がだんだん強くなっていくにつれ俺の心臓の鼓動が早くなっているのを感じる。
そう俺は怖がっていたのだ。
そりゃあ無理もないさ。
俺は確かにそこら辺にいる人より強いがそれはあくまで人の中での話。
Aランクの魔物からしたら俺は平均的なAランクの魔物と変わらないだろう。
それに俺には守りたいものがあるんだ。
そのためにも俺は死ぬわけにはいかない。
そんなことを考えながら進んでいると突然地面から魔力を感じた。
来る!
すると地面から土の棘が生えてきた。
俺は何とかそれをよけることができたがその後もその攻撃が何度も続く。
この土魔法の圧倒的な物量攻撃・・・クソ、ストーンゴーレムか。
俺はよけながらストーンゴーレムの気配を探る。
だが今度は上から大量の魔力を感じる。
まずい!
そう思った俺は、
「暗き夜を明かす・・・。」
急いで防御魔法を展開しようとしたが間に合わず空から大量の風魔法が放たれてしまった。
その攻撃に続いて大量の羽も飛んできた。
俺は地面から来る攻撃と空から来る攻撃を必死によける。
だがここは森の中。
足場も悪い上、視界も悪い。
そのせいで俺はだんだんと攻撃を食らい始める。
まずいな・・・どうしよう。
俺は攻撃をよけながら必死に考えた。
すると前方から木が折れる音が聞こえてくる。
何か来る。
クソ、これは村を守るためにも魔物を引き付けていったん開けたところに逃げるしかない。
そう思った俺は村から逆の方向に向かって走った。
その間も攻撃は絶えず続く。
そして魔物もこちらを追ってきている。
そうしてしばらく走っていると、やっと開けたところに出る。
よし、これで今度はまともに戦える。
そう思ったのもつかの間。
気付くと俺は魔物の大群に囲まれてしまっていたのだ。
まさか、俺は誘導されていたのか?
いや、そんなことはないはず。
魔物には知性なんてないからな。
もし知性があったらそれは魔物じゃなくて魔族だよ、もう。
俺は警戒しなが周りの観察をする。
地上にはストーンゴーレムが5体と大蜘蛛が3体。
空中には翼竜が4匹に鷲獅子が2匹。
報告にあった数より少ないがきっと誰かが倒してくれたのだろう。
この中で一番勝ち目がありそうなのは・・・大蜘蛛だな。
だがストーンゴーレムのあの土魔法と翼竜の風魔法、鷲獅子の羽を飛ばす攻撃を避けつつ大蜘蛛のあの硬い体に攻撃を入れれるか?
それに確か大蜘蛛は植魔法と水魔法を応用して毒を飛ばして来るんだよな・・・。
クソ、あまりにも状況が悪すぎる。
これは一体ずつなら勝てると油断した俺が悪かったな・・・。
どうする、俺。
この状況をどうやって切り抜ける?
ここで俺はとあることに気付く。
俺はさっきから考え事をしながら攻撃を受ける準備をしていたがなんでこいつらは攻撃しようとしないんだ?
普通の魔物なら人間や動物を見ただけで攻撃してくるというのに・・・。
そういえばさっきのこいつらの行動、明らかに俺をここに誘導していたよな。
それに加えさっきの攻撃。
明らかに連携が取れていたよな。
まさかこいつらには知性があるのか?
いや、まさかそんな。
だがそうじゃなければこの状況に説明がつかないぞ。
俺がそう焦っていると、
「うおおおおおお!」
と大きな雄叫びのようなものが聞こえてくる。
俺はその声がした方を見ると森の奥から何かガサガサと音を立てながらこちらに向かっているのが分かった。
すると森の奥から巨大な斧を持ったミノタウロスが3体現れた。
俺はそれを見て非常に驚いた。
なぜならミノタウロスは危険度Aランクではなく危険度Sランクの魔物だったからだ。
それに加えミノタウロスはダンジョンにしか生息していないとされている魔物だ。
それなのになぜか今俺の目の前に3体のミノタウロスが立っている。
なんでこんなところにミノタウロスなんかがいるんだ。
それに3体も!?
いったい何が起きてるっていうんだ。
俺がそんなことを考えていると魔物たちが一斉に咆哮をあげる。
そしてそれと同時にものすごい殺気に襲われる。
まずい、攻撃が来る!
すると俺は羽、風魔法、土魔法、毒の集中砲火を食らう。
だが俺はそれを何とか避けていた。
さっきより足場良くうまく動けて何とかなっているがこれじゃあ攻撃に転じれない。
そうして俺は攻撃をよけ続けると魔物の攻撃がやむ。
よし魔物の疲れている、今がチャンスだ!
そう思い攻撃に転じようとした途端後ろから斧で攻撃される。
俺は何とかそれに反応し剣で攻撃をいなそうとする。
だがさすがミノタウロスと言ったところか。
俺はあまりの攻撃の重さに後ろの吹っ飛ばされた。
なんとか受け身を取り立ち上がろうとすると別のミノタウロスからまたもや斧の攻撃が来た。
今度はうまく避ける。
するとまたもや別のミノタウロスから突進攻撃を受ける。
今回も俺はそれをしっかり避ける。
が、またもや最初のミノタウロスに攻撃をされる。
そうしてミノタウロスの攻撃が一切やまなかった。
クソ、これじゃあまた攻撃ができねーじゃねーか。
こいつらの連携が凄すぎて避けることしかできねーぞ。
まずいな、このままじゃ体力が切れるのが先になりそうだ。
どうする、俺。
この状況をどう切り抜ける?
俺は避けながらそう考えているとミノタウロスの攻撃がやむ。
が、それと同時にまた他の魔物からの集中砲火を食らう。
そこで俺はとあることを思いつく。
それはストーンゴーレムと鷲獅子の攻撃を完全に止めることだ。
こいつらの攻撃は土と羽を使ったもの。
だから水で濡らせば使い物にならないはずだ。
そう思った俺は攻撃を避けながら俺が唯一扱える上位魔法の詠唱を始める。
「生命の女神の涙がもたらす恵みと破滅の力を我がものに。水魔法発動。大嵐渦。」
すると俺の周辺で巨大な水の渦ができる。
俺はそれに巻き込まれて他の魔物も無力化できればいいなと思っていたがやっぱり無理だったようだ。
なんせミノタウロスや大蜘蛛はあの巨体を持ちながら地上にいるわけだし翼竜の場合は風魔法でうまく障壁を作って攻撃を無力化してしまうからな。
だが鷲獅子の羽と地面の土が濡れることであの二体の魔物の攻撃を完全に無力化することに成功する。
それに加え鷲獅子はさっきの大渦に巻き込まれて地面に墜落している。
チャンスだ。
俺はその隙をついて鷲獅子を片付けようとする。
だがここであのミノタウロスどもが鷲獅子たちの前に立って俺の邪魔をしてきた。
そういえばそうだったな・・・。
完全にこいつらの存在を忘れてしまってた。
そこで俺は剣を構える。
さあ、どうする。
さすがにミノタウロス3体を同時に・・・。
すると突然俺は吹き飛ばされてしまった。
すごい速さで吹き飛ばされた俺はそのまま木にぶつかる。
「がはっ。」
俺はすごい速さで木にぶつかったことで一瞬意識が飛びそうになった。
だがそれを気合でなんとか乗り切る。
そして俺はさっき俺が立っていた方を見るとそこのはストーンゴーレムが立っていた。
そういえばあいつら近接戦も強かったな。
普段、魔法を多用しているせいでそのことが頭からすっかり抜けてしまっていたな。
俺がそう考えていると突然視界の右側が赤く染まる。
それに驚いた俺はおでこの右の方に触れると俺の手が真っ赤に染まっているじゃないか。
どうやら俺はさっきの衝撃で頭に傷がついたらしい。
それと同時にストーンゴーレムとミノタウロスがこちらに近寄ってくる。
まずい、立ち上がらないと・・・。
そう言って俺は立ち上がろうと体に力を入れると体の左側に激痛が走ってしまいうまく立ち上がれない。
そこで俺は急いで体の状態を確認する。
すると衝撃的なことが判明し俺は絶望する。
なんとさっきのストーンゴーレムの攻撃で俺の左側の骨がほとんど折れてしまっていたのだ。
これはまずいな・・・。
このままじゃあ、殺される。
早く、立ち上がらないと。
俺は絶対に諦めたりしない。
俺には守りたいものがあるんだ。
だからここで負けるわけには・・・。
するとストーンゴーレムとミノタウロスが俺の目の前まで来て立ち止まる。
俺はそれでも必死に立ち上がろうとするがあまりの激痛でまたその場に座り込んでしまう。
立ち上がれ。
あきらめるな。
俺はここで死ぬわけにはいかないんだ。
俺はそう自分を鼓舞したがそれでも立ち上がることができなかった。
そうしてミノタウロスが斧を振り上げる。
俺はその光景を見ると死という文字が俺の視界に浮かびあがってきた。
終わった・・・。
俺はそう思いすべてを諦める。
だがその時ドンという爆発音のようなものがミノタウロスの後ろの方から聞こえた。
そしてそれと同時にストーンゴーレムとミノタウロスが吹っ飛ばされた。
俺は何が起こっているのかわからなかった。
俺はただただ驚いていた。
すると、
「この大馬鹿野郎が。」
と聞きなれた声がする。
俺は声がする方を見るとそこにはロストとガーベラが立っていた。
そうその声の主はロストだったのだ。
よかった、これでまた戦える・・・。
だがなんでガーベラもいるんだ?
そう思った俺はロストにこう聞こうとする。
「な、なんで、ガーベラ・・・。」
俺が必死に言葉を出そうとすると、
「パパは黙ってて。ここからは私たちでやるから。」
とガーベラが俺の言葉を一蹴した。
そしてガーベラはすぐさまその場を後にする。
ロストは俺のことをただ黙って見ていた。
そこで俺はロストに今の状況を聞こうとすると、
「お前はもう黙って寝ていろ、ジール。お前の家族のことはあとで説明するよ。」
と俺の言葉を遮るようにジールが言った。
家族のこと?
ってことはまさかクレアも来ているのか?
ってことはさっきの爆発音、クレアの魔法か・・・。
はあ、俺は父親失格だな。
いや、元「紅」の副団長、聖人ジール・シュラーインとして失格だな。
まったく守る側の人がなんで守らないといけない人たちに守られているんだよ・・・。
そうして俺は意識を失うのだった。
その時ロストはジールが気を失ったのを確認すると、
「お前のそういうところ、昔から変わらないな。ジール副団長。あとは俺たちに任せろ。」
と言ってジールの周りに小さな防護結界を張って戦闘に参加するのであった。