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ep.12 ダンジョン攻略!!してみた☆

 俺たちは例の扉をくぐって少し奥に進むと突然ゴゴゴと鳴りながら扉が閉まり始めた。


「まずい!」


 その状況を見て俺たちは急いで引き返そうとしたがそう思ったときには扉は完全にしまってしまっていた。

 俺たちは扉を押したり叩いたりする。

 しかしまったくびくともしなかった。


「でも、これはこれでよかったんじゃないかな。」


 マルクがそういった。

 どうやら俺たちの今置かれている状況を理解できていないようだ。

 しっかり伝えてあげないといけないな。

 そう思った俺は、


「いや、扉が閉まったら俺たちはどうやって帰るんだ?」


 と伝える。

 するとマルクの顔色は途端に青ざめていった。

 やっと俺たちの状況に気付いてくれたみたいだ。

 まったくなんかこう変に抜けてるところがあるんだよなー。


「ぼ、僕たちはこれからどうすればいいの?」


 マルクはさっきの余裕そうな表情とは打って変わって恐怖で満ちた表情をしながら言った。

 そんなこと俺に言われてもなー。

 俺も今頭が非常に混乱しているんだよ。

 んーでもここに入ろうって提案したのは俺だしなー。

 よし、ここはしっかり俺が責任を取ることにしよう。

 そう考えた俺はマルクに、


「この先に進むことにしよう。もしかしたらそっちに出口があるかもしれないし。」


 と提案した。

 マルクはしばらく考えてしぶしぶ俺の提案を受け入れてくれた。


「とりあえずまずは何か明かりを探さないと。」


 この先は真っ暗闇だ。

 この真っ暗闇の中進むわけにはいかない。

 そう思った俺は何か明かりになるものをカバンの中から探すことにした。

 だがそのかばんがどこにも見当たらなかった。

 あ、そういえばかばんは荷車に乗ってたんだった。

 クソ、どうすれば。

 俺がそう悩んでいると突然周りが明るくなった。

 なんと俺の頭の上にかなり大きい光の玉が浮いているではないか。

 俺がそう驚いてるとマルクがこちらを呆れた表情で見ていることに気づく。


「あのさ、レオン。魔法っていうものがあることを忘れたでしょ?」


 呆れた口調でマルクがそういった。

 あはは、そういえばそんなもんがあったな。

 俺は魔法がまったくもって使えないから完全に忘れてたぜ☆

 そうして俺たちはどんどん奥に進み始めたのだった。





 俺たちはしばらく歩いた結果ここがどんな場所なのかを理解することができた。

 石レンガでできた通路。

 たくさん分岐している道。

 そして常に感じる邪悪な気配。

 そうたぶんここはダンジョンなのだ。

 まだ魔物の一匹にも出会っていないのが不幸中の幸いなのだがダンジョンに軟禁されているからには危険であることに変わりはない。

 しかしマルクが俺たちの奥に進む選択は最善の選択だったと言っている。

 どうやらダンジョンの仕組みはゲームの世界と同じでダンジョンには層がいくつか存在していて、最下層にいるダンジョンボスを倒すと入り口に転移できるのだそうだ。

 だがそのダンジョンボスの強さはダンジョンにはびこる魔物の強さによって異なる。

 だから俺たちのいるダンジョンはとてつもない高難易度なダンジョンである可能性があって慎重に進まないといけないことに変わりはない。

 そうして俺たちはこのダンジョンを慎重に進んでいたのだった。

 しばらく進んで俺はとある違和感を感じていた。


「なあ、マルク。ダンジョンにトラップって存在してないのか?」


 そうこのダンジョンに入ってからトラップにまったくもって引っかかっていなかったのだ。

 俺の世界の常識だとダンジョンは魔物とトラップがたくさんある危険な場所なんだ。

 まあ、魔物だけでも十分危険だが。

 だから少し違和感を感じていたのだ。

 すると、


「うーん、確かに言われてみればそうだね。結構進んだけどトラップに引っかかってないもんね。」


 とマルクは何かを考えながら返事をする。

 やっぱりトラップは普通だったらあるみたいだな。


「それに魔物の気配をすごい感じるのに襲ってくるそぶりは一切見せないのもおかしいよな。」


 マルクはさっきより険しい表情でそうつぶやいた。

 そのマルクの言葉に俺は同意する。

 さっきからすごい殺気に満ちた視線を感じるが一切襲ってくる気配もそぶりもないし姿も一切見えない。

 マルクの表情から推測するとこのダンジョンは普通のダンジョンと比べて明らかに異常なのだろう。

 すると突然さっきとは比べ物にならないほどの殺意を感じた。

 それと同時に暗闇の向こうから何かの羽の音が大量に聞こえてくる。


「何か来る!」


 そう言ってマルクは杖を構える。

 俺もその言葉を聞いて魔短剣を構える。

 すると大量の巨大なハチの魔物がこっちに向かってきた。


「レオンは魔物との戦闘経験は?」


 突然俺はマルクにそう聞かれた。

 こんな状況で何を言ってるんだ?

 そう思った俺は少しキレながら、


「こんな状況で何を言ってるんだよ。ないに決まってるだろ?」


 するとマルクは苦笑いを浮かべながら、


「僕もだ。」


 と一言だけ言った。

 え?

 ってことは魔物と戦ったことない子供二人であの量のハチの魔物と戦わないといけないのか?

 俺は一瞬そう思ったがマルクの手が震えていることに気付いた。

 そんなことを言っている場合じゃないな。

 マルクも初めてなんだ。

 それにここのダンジョンに入る提案をしたのは俺なんだ。

 俺がしっかりしないとマルクを守れない。

 そう決心した俺はマルクの前に飛び出し、


「マルクは後方で魔法で俺の援護を。それと光輝球(ホーリーライト)は解除しておいて。俺が代わりに複数個発動させるから。」


 と指示を出す。

 俺はマルクを責任もって守らないといけない。

 だから今こそ魔剣士の見せ場なんだ。


剣幻影(ソードエフェクト)光剣(ホーリーソード)✕斬撃(クロススラッシュ)!」


 そうして俺は魔短剣で大きなバツ印を描くように空を切る。

 するとそこから光の斬撃がキィーンと大きな音を立てながら魔物の群れに向かって飛んでいく。

 そうしてその光に触れた魔物がどんどん切れていく。

 しかしそんなことを気にせずに魔物の群れがだんだんと近づいてくる。

 まずい!

 このままじゃ・・・。

 すると、


「罪人に下される神の怒り。童が神の名の元で天誅を下してしんぜよう。電魔法(フルメンマジック)発動。電撃光線(ブリッツアクティナ)!」


 後ろからとてつもない威力の電撃が飛んできて前線の魔物たちに命中した。

 太い光線に当たった魔物は灰のようになって消えてあの太い光線から伸びた細い光線は周りの魔物に伝わって溶かしてしまった。

 にしてもすごい威力だったな。

 いや、感心している場合じゃない。

 まだでかいのが残ってる。

 さっきまでは魔物が多すぎて気付かなかったがどうやら群れのボスがいたようだ。

 このままだとマルクに全部の手柄を持ってかれそうだから最後ぐらいは持ってくぞ!


陰魔法(シャドウマジック)発動。ダ・・・。」


 俺がそう唱えようとするとそれを阻止するためにあのでかいハチが俺に突っ込んできた。

 そして俺はあいつの巨大な針に刺されてしまった。


「がはっ。」

「レオン!」


 マルクは俺を助けようとしたが間に合わなかった。

 そうして俺は地面に倒れる。

 それと同時に俺の体が霧のようになって消えた。


「はっはっは、よくぞ引っかかってくれた。これでとどめだ!光断絶(ホーリーセバー)!」

 

 そうして俺はその巨大なハチを縦に真っ二つにした。

 その後魔短剣に付いたハチの血を払う。

 ふう、これで俺もそれなりに活躍できたぞ。

 それにしても危なかった危なかった。

 危うく全部持ってかれるところだったからな。

 でも思ったけど俺って意外と戦えるんだな。

 今までお姉ちゃんと父さんにボコボコにされてきてたからてっきり俺は弱いのかと思ってたけどよくよく考えたらあの二人は化け物みたいな強さをしてるんだったな。

 少し感覚がマヒしてたぜ。

 そんなことを考えていると突然マルクが俺に軽いゲンコツをしてきた。


「いて。なんだよ、急に。」


 俺がそういうとマルクは少し起こった表情で話し始める。


「僕はてっきりレオンがあの魔物に刺されて死んだのかと思ちゃったじゃないか。まったくああいうことをするときは事前に言ってくれよ。」


 俺は苦笑いをしながらマルクに謝った。

 まあ、あれは勘違いされても仕方がない。

 なんせ俺はあの時瞬間魔法(ブリンクマジック)で二つの魔法を同時発動させてたからね。

 それは陰魔法(シャドウマジック)陰人形(ダミー)と隠密だ。

 陰人形はお姉ちゃんに昔いたずらでやられたことがあった魔法で自分そっくりの人形を出すことができる魔法だ。

 それに加え自分の意志で動かすことができるから俺はあの時刺されたかのように動かしてたんだ。

 そして隠密。これは名前のままで一定時間自分が透明になれる魔法だ。

 俺はこの魔法二つを使ってあの魔物をだました。

 正直幻夢という幻を見せる魔法が使えればもっと楽だっただろうけど俺はそのレベルの魔法は扱えない。

 まあ、あの戦いで俺はこんなことをしてたのだった。


「ま、まあ、あの時はそんな余裕がなかったし、すまんすまん。」


 と俺が言うとマルクはホッと軽いため息をついた。


「それにしても僕たちすごい暴れちゃったね。」

「うん、そうだな。」


 俺たちは目の前に転がってる魔物の死体を見ながら話す。

 そこで俺はとあることを思い出す。


「そういえば俺たちって魔物と戦うのは初めてだったんだよな?」


 俺がそういうとマルクが一瞬固まる。

 そしてすごい明るい表情になって俺に話しかける。


「僕たちってもしかして結構強い?」


 俺はそんなマルクを見てとても可愛いなと思ってしまった。

 俺と一緒にいるときは頑張って大人ぶっているけど年齢は8歳でまだまだ子供だ。

 だからこそこの時々見せる子供特有の可愛らしい笑顔と言動がたまらなく愛おしい。


「当ったり前だ。俺たちは最強の親友だからな!」


 俺がそういうとマルクは俺に飛びつくように抱き着いてきた。

 そして、


「そうだね。」


 と楽しそうに笑いながら返事をする。

 本当にこいつは大切にしないとな。

 こんなにいい子、めったにいないからな。


キィーン!


 すると突然とてつもない耳鳴りとともにとてつもない頭痛が俺を襲った。

 そして俺は地面に膝をついた。

 マルクは俺に必死に声をかけてくれているが今はそれどころじゃない。

 痛い・・・。

 苦しい・・・。

 頭が、割れそう・・・。

 そう考えてると突然頭に誰かの声が響いてきた。


強奪(プリワーレ)。そして【奪】うんだ。》


 俺はこの声を聴いた瞬間全身の血の気が引いた。


(こ、この声は・・・た、確か・・・あの時の・・・。)


 そうこの声の主は俺が魔法を使って倒れたときに聞いた声だった。

 もっとわかりやすく言えばあの「影」の声だった。

 もうずっとあの夢らしきものは見ていなかったからただの悪夢だったと思っていたのに・・・。

 まさか「アレ」は実在しているのか?

 その声が聞こえたあとさっきまでの耳鳴りと頭痛がまるで幻だったかのように収まった。

 しかし俺の頭は相変わらず混乱していた。

 でも一つだけ確かなことがあった。

 強奪(プリワーレ)、そう唱えないといけない。

 それだけははっきりとしていた。

 そして俺は立ち上がって魔物たちの死体の方に向かって手を伸ばす。

 マルクは俺の異常な行動に混乱しているようだったが俺はそんなことを気にせずに続けた。


強奪(プリワーレ)。」


 俺がそう唱えると魔物の体から白色の光の粒がたくさん飛び出してきた。

 そして俺の体にそれらが入り込んできた。

 それらの光が全部俺の体に入ると俺はなぜかもう一度、


強奪(プリワーレ)。」


 と唱えた。

 すると今度は魔物の死体が赤黒い光となって俺の体に入り込んできた。

 そして俺は体の力が全部抜けその場に倒れ込む。

 な、なんだったんだ、今のは・・・。

 まるで自分が自分じゃなかったかのようだった。

 するとマルクが心配そうに俺に声をかけてきた。


「レオン、大丈夫?」

「うん、大丈夫。」


 俺は素っ気なく返事をした。

 マルクが俺の心境を察してくれたのかそれ以上は何も聞かないでくれた。

 そしてマルクがここで一回休息を取ろうと言った。

 マルクはダンジョンの通路に土魔法(テラマジック)で壁を作って俺たちはその中でしばらく休息をとった。

 俺はさっきのことを話そうか迷っていた。

 なんせ俺の勘があれは世界の禁忌に近いものだと危険信号を発しているからな。

 でもマルクならわかってくれるかもしれない。

 信じてみよう。

 そう思った俺はさっきの出来事をあの「影」のことも含めすべて話した。

 マルクは終始静かに聞いてくれた。

 そして俺が話し終わるとマルクは真剣な表情で話し始めた。


「正直僕はなんていえばいいかわからない。「罪」のことも知らないし、その変な能力のことも知らない。でも一つだけわかることがある。それは僕以外の人にそのことは絶対に話しちゃいけない。いいね?」


 そうしてマルクが優しく笑いかけてくれた。

 俺は安心した。

 マルクが俺を信じてくれた。

 俺はただただそれがうれしかった。

 それで俺がわかったと返事するとマルクが思い出したかのように、


「あ、別にレオンのことが嫌いになったとかはないよ。それは絶対にない。だってレオンは今でもレオンだもん。僕の親友だもん。」


 とすごい早口で俺のフォローをしてきた。

 俺はそれがあまりにも面白くて吹き出してしまった。

 別にそんなことを言わなくてもマルクはそういうことはしない子だってわかってるよ。

 それにさっきのあの真剣そうな表情。

 あれはまるで自分のことかのように共感してくれていた証だったからね。

 まったく本当に面白い子だ。

 正直いろいろ言いたいことがあった。

 でも俺はそこで一言優しく、


「ありがとう。」

 

 とだけ言った。

 なんとなくこれだけで十分だと思えた。

 そうして俺たちはその後もしばらくの間いつものような雑談をしてもう一度ダンジョン攻略を始めたのだった。

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