ep.10 親友と異世界で買い物!!してみた☆
この世界のお金の相場
金貨1枚=10万円
銀貨1枚=1000円
銅貨1枚=10円
「どりゃー!」
俺が振りかぶると、
「遅い!」
父さんはそういいながらいとも簡単に俺の木刀を流した。
その結果俺はバランスを崩して転んでしまった。
すぐに起き上がろうとしたが父さんの剣の先がすでにこちらを向ていた。
「これで一本、だな。」
父さんはそう優しく言うと俺の頭を木刀の腹で軽くたたく。
俺は父さんに何もできずに今日も負けてしまった。
剣の稽古を始めてからもうすぐで2年になる。
なんと俺はもう8歳になっていたのだ。
時間の流れって早いなー。
じゃなくて、俺は剣の稽古を2年近くもしているのにも関わらず一切剣の腕が上がっていなかった。
一応午前の剣の稽古以外の時間も木刀を振ったり、お姉ちゃんの剣の稽古から技を見て学んだりしている。
しかしそんなことをしても身体能力が人より低いせいで知識を得ても体が追いつけずに知識のままになってしまっていた。
でも実はね、俺の身体能力は前世基準だとそんなに低くないんだよ。
というか身体能力は前世だとアスリート級なんだよね。
ただこの世界の人の身体能力がおかしいだけなんだよ。
一応走り込みとかいろいろやってるけど魔法の時と同じで身体能力が上がっている気がしないんだよ。
このまま一生上がらないってことはないよね?
そんなことを考えていると、
「それじゃあ、今日の剣の稽古はここまでだ。今日も頑張ったな、レオン。」
父さんがそういって俺に手を差し伸べてきた。
俺はその手を取って立ち上がって服についた土を払った。
「やっぱり父さんたちはすごいんだね。」
「いや、レオンも動きがよくなってきているから俺を抜かすのも時間の問題だぞ。」
そんな他愛のない話をしながら俺と父さんが家に戻ろうとした。
すると、
「レオンー!」
庭の塀の向こうから誰かが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
ああ、そういえば今日は例の日だったな。
俺は父さんに、
「ちょっと隣町に行ってくるよ。」
と一言だけ言うと机の上に置いておいた俺の財布を取って急いでその声がする方に向かって走り出す。
父さんは少し困っていたが俺はそんなことも気にせずに塀の向こうへ向かって走り続けた。
そして俺はその声の主と対面する。
その声の主は俺の親友であるマルク・ハンストだった。
マルクは父さんの親友であるロストおじさんの一人息子で俺と同い年だ。
性格は人見知りで物静かだが心を開くととても元気で面白い子だった。
そして見た目は茶髪で前髪が長く左目が隠れていて目の色は赤茶色で顔立ちはかなり整っている感じだ。
そんなマルクと俺が初めて会ったのは去年のこと。
ロストおじさんは商人をやっているのだが仕事先で魔物に襲われてしばらく帰れなくなってしまうという事件が起こった。
マルクの母さんはマルクを生んだ時に亡くなっていていた。
このままだとマルクが家で一人ボッチなるのからといってロストおじさんが帰ってくるまでの間俺の家でマルクをしばらく預かることになった。
マルクと初めて会ったときは避けられていたがマルクが花好きだということを知ってからはよく村の端にある花畑にマルクを誘うようになった。
するとだんだん俺たちは仲良くなっていき今となってはお互いの家でお泊り会を開いたりご飯を食べたりする仲になっていた。
そんな俺とマルクは今日とある約束をしていた。
「今日の約束覚えてる?」
マルクがニヤニヤしながら俺に聞いてきた。
「もちろんさ。この俺が忘れるわけがないだろ?」
俺も同じようにニヤニヤしながら返事をした。
二人で周りを確認した後俺たちは自分たちの財布の中身を見せ合った。
「これでついに”アレ”買えるね。」
「そうだな。俺たちがずっと欲しがっていた“アレ”が買えるな。」
そう、俺たちはとあるもののためにお金をためていた。
そして昨日、マルクはお小遣いをもらってついに例のブツが買える金額分のお金が貯まったのだった。
それで今日二人で集まって例のブツを買いに行く約束をしていた。
「それじゃあ、行こうか。ランスト商店に。」
俺たちはそういって荷車に乗って隣町に向かったのだった。
荷車で隣町に向かっている間俺たちはいろんな話をしていた。
俺は自分がいくら努力しても成長できないこと、お姉ちゃんの俺に対する姉弟愛が歪み始めてて最近やばいこと、そして最近帝国の治安が悪くなり始めていることを話していた。
どうやらマルクも帝国の治安が悪くなっていることは知っていたらしく、最近は地方の村が盗賊によって襲われている事件も起こっているらしい。
「僕たちの村も襲われないよね・・・。」
マルクはとても心配そうにしていた。
それに対し俺は別にそんなに心配していなかった。
なぜかって?
簡単なことさ。
俺たちの村にはあの人がいる。
「安心しろ、マルク。俺たちの村には500年に一人の武術の天才で俺のお姉ちゃんであるガーベラ・シュラーインがいるんだぞ。あいつがいればどうってことないって。」
そういって俺はマルクを安心させる。
そう、俺たちの村にはお姉ちゃんがいる。
だから俺は別にそんなに心配していなかったのだ。
だがそれを聞いてもマルクの表情はあまり変わっていなかった。
「いや、そうだけどさ。あんな美しょ・・・じゃなくて可わぃ・・・コホン、女の子を戦わせるわけにはいけないでしょ。」
マルクは心配そうな表情と恥ずかしそうな表情が混ざったなんとも言えない表情をしながらそう言う。
そういえばマルクは俺のお姉ちゃんのことが好きなんだったんだ。
まあ、あれでも確かに美少女だからな。
俺も血がつながってなかったら・・・。
ないな。
うん、絶対にないな。
でも親友の好きな人が俺の姉っていうのはなんか変な気持ちになるな。
そう思った俺はマルクを少しからかうことにした。
「それならマルクがお姉ちゃんより強くなってお姉ちゃんを守る騎士になればいいんじゃない?」
俺が意地悪そうにそういうとマルクはあたふたとし始めた。
そして、
「いや、そんな、べ、別にkddhgぅあ・・・。」
と噛みまくりながら言う。
嚙みすぎて後半は何を言っているのかがわからなかったが慌てふためくマルクを見れて俺は気分がよくなっていた。
そして俺は続けて、
「あ~、騎士がダメならお姉ちゃん専属の魔導師になればいいんじゃない?マルクは魔法の才能があるわけだし。」
とまた意地悪そうに言う。
俺はマルクがまた慌てふためくと思っていたが俺のその言葉を聞いてマルクが何かを真剣に考えていた。
(あれ?俺が思っていた反応と違うぞ?)
そんなことを考えながら俺は混乱し始めていた。
するとマルクが衝撃的な言葉を放つ。
「ありかも。」
んーーーーー?
え?
何が?
虫のこと?
そんな風に俺は非常に混乱していたがマルクはそんな俺に気付くことなく目を輝かせながら、
「僕、ガーベラさんに振り向いてもらえるように頑張って魔法の練習をする。そしてガーベラさんに決闘を挑んで勝てたらお付き合いのお願いをすることにするよ。」
と俺に誓ってきた。
それを聞いて俺はしばらくの間思考停止してしまった。
そんな俺にマルクは一切気づいていなかったのは言うまでもないだろう。
そして俺はお姉ちゃんとマルクが付き合っている姿を想像してそれがあまりにも衝撃的な光景すぎてしばらくの間気絶してしまった。
そんなことがあったが俺たちは無事にオーブレストに着いたのだった。
「俺、初めてオーブレストに来たけどすごいなここ。俺たちの村とは比べ物にならないぐらいに賑やかだな。」
俺は初めて来たオーブレストを見てとても感心していた。
周りの建物は石レンガやレンガ、木などのものでできた西洋風の建物で道には様々な屋台が出ている。
これこそ俺の知っているファンタジー世界だった。
「プークスクス。レオンの田舎者ー。」
俺の感情が顔と行動にしっかりと出ていたらしくマルクはそれを見て俺をからかってきた。
「いや、マルクも俺と同じ村に住んでるだろ。それブーメランじゃないのか?」
俺がそういい返すとマルクは人差し指を左右に振って腕を組んで足を肩幅程度広げた。
そして自信満々に、
「僕はこう見えて商人の息子だからこういう街にはよく来るんだよね。」
と言った。
俺は何も言い返せなかった。
クソ、絶対今度いたずらを仕掛けて仕返ししてやる。
俺は静かにそう決心したのであった。
そうして俺らはランスト商店に向かった。
俺はランスト商店に向かって歩いている間周りを観察していた。
街の中心にある噴水。
西洋風の服を着た人たち。
銅貨や銀貨を使った取引。
冒険者ギルド。
そして街の警備をしている鎧を身に着けている衛兵。
観察をして俺は改めて異世界に転生したんだなと実感した。
今のところ順調にバカンス生活が送れているしこれからもこれが続くよう尽力しよう。
そんなことを考えているといつの間にか目的地に着いていた。
ランスト商店はとても立派な店だった。
「ここに”アレ”があるのか。」
「そう、ここに”アレ”がある。」
お互い顔を見合わせた俺たちはそのままランスト商店の中に入った。
「いらっしゃいませ。ランスト商店へようこそ。」
店の中に入るととても綺麗な人が立っていた。
一瞬俺は見とれてしまった。
なんせ好みの顔をしていたからな。
それにアレもたまらない。
ナニがとは言わんがアレも立派なものだ。
ナニがアレとは言わんがボンキュッボンだった。
すると俺は突然マルクに背中を叩かれる。
マルクが俺の背中を突然叩いてくれたことで俺は自分の世界から目を覚ました。
マルクはそんな俺を見てニヤニヤしていた。
クソ、これは絶対後でいじられるやつだ。
「お客様はどのような商品をお探しですか?」
店員さんにそう聞かれると俺はあなたのような美人さんを探しに来ました。
なんて言うのは冗談で、
「俺たちはケモミミ少女が題材のエロ本を探しに来ました。」
「ん?えちょレオン、何それ?」
「えっと、お客様そのケモミミショウジョとエロホンってなんでございましょうか?」
クソ、この世界にはエロ本はないのか。
異世界のエロ本とか絶対にたまらなく最高なはずなんだけど、ないなら仕方ないな。
少しがっかりしたけど。
というか俺たちは子供なのにしっかりお客様として扱ってくれるんだな。
この店はしっかりしているんだな。
「あーすみません。今のは気にしないでください。えーと、魔法の杖を買いに来ました。」
そう俺たちは魔法の杖を買うためにオーブレストまで来たのだった。
杖と言っても木の枝ぐらいの大きさの杖だけどね。
それでも普通魔法の杖は大人になってから買うものだ。
なんせ値段が値段だったからな。
だから俺たちは地道に計画を立てて親に秘密裏に動いていたのだ。
俺たちが魔法の杖を買うことになった経緯としてはマルクが俺との親友の証として何かお揃いのものを買わないかと提案したことから始まった。
そこで俺はマルクにはお姉ちゃんほどではないがかなりの魔法の才能があること、そして魔法の杖を使うと高レベルの魔法を扱えるようになるという情報から魔法の杖を買うことを提案した。
マルクは俺のその提案を非常に気に入ってくれた。
そうして俺たちはその日からコツコツとお金を貯めて今日ようやく魔法の杖を買うことができるようになったのだ。
そんな俺たちはとてもワクワクしていた。
「それじゃあ、魔法関連のコーナーに案内させていただきます。」
俺たちは店員さんに案内されるがまま魔法コーナーに向かった。
魔法コーナーに着くと店員さんは他のお客さんの対応をするためにすぐにその場を離れていった。
そこは最高の空間だった。
水晶から魔道具まで魔法関連のものがすべてそろっていた。
その中には魔短剣も売っていた。
値段は・・・金貨1枚と銀貨50枚か。
覚えておこう。
「ねえ、レオン。どの杖にする?」
おおっと、危うく本来の目的を見失いかけてしまっていた。
マルクのその声で我に返った俺は二人で魔法の杖を選び始めた。
俺たちの所持金は合わせて金貨5枚だ。
日本で言うところの50万円だ。
そして杖の金額はというと一番安いので金貨1枚と銀貨50枚。
大体15万円ぐらいだな。
二人分で金貨3枚か、ちょうどいいな。
「マルク、この黄色の魔石の杖にしようぜ。」
俺がそういうとマルクが嬉しそうに首を縦に振る。
多分杖の見た目がマルクの好みだったからであろう。
なんせその杖はどことなく花みたいな見た目をしていたからな。
まあ、俺は正直金額しか気にしていなかったけど。
すると、
「僕もそれすごいいいと思う。でも残りの金貨2枚がもったいないから僕からの日頃の感謝っていうことで何か買ってあげるよ。」
マルクが俺に最高の提案をしてきた。
その提案を聞いて俺は真っ先にさっき見つけた魔短剣を手にした。
値段は杖と同じ金貨1枚と銀貨50枚だった。
もしマルクが俺にそんな提案をしていなかったらどんな手を使ってでも俺は魔短剣をマルクに買わせていただろう。
だが今回はマルクが先に提案をしてきた。
これはもう甘える以外の選択肢はない!
「この魔短剣でお願いします、兄貴!」
俺はとても嬉しそうに返事をする。
するとマルクはやっぱりかみたいな顔をして、
「よし、わかった。兄貴のよしみでそれを買って差し上げようではないか。心の器が大きい兄貴に感謝をするんだぞ。」
と少し芝居がかった口調で話してきた。
どうやら俺の考えはマルクにはもろバレだったみたいだった。
だから俺もマルクと同じように、
「ははー、兄貴の器の広さに俺は心の底から感謝を申し上げます。」
芝居がかった口調で感謝したのだった。
そうして俺たちは杖と魔短剣を購入し店を後にしたのだった。
一方そのころオーブレスト付近の森が少し騒がしくなり始めていたのだった・・・。
<裏話>
レオンが5年かけて貯めていたお金をマルクはたった半年でそれを超える金額のお金をためてしまったことにレオンはかなりのショックを受けていた。
レオン「商人のマネーってパネー」
寒い風が吹いたのだった。
俺はわざと滑っただけだぞ?
決して俺のギャグセンスが終わっているわけではないからな。
それに・・・。
ーおしまいー
っておい!