エピソード2:神傷(しんしょう)
第2話では、主人公が不死の体で蘇り、不思議な印により運命を背負うことになります。復讐心は強まり、同じ宿命を持つ仲間たちと出会い、新たな敵も現れます。孤島は壮大な戦いの舞台となり、世界の行方を変えるかもしれません。
エピソード2:神傷
生き返った直後、まず感じたのは――空腹だった。
「もう我慢できない…」
そう思い、俺は神の宮殿へと向かい、あいつが俺たちから奪った作物を片っ端から食い漁った。腹がはち切れそうになるまで食った後は、当然のように昼寝をした。
目を覚ました時、体は軽く、気分も少しだけ晴れていた。俺は風呂に入り、長年の汚れを洗い流した。そして風呂上がり、鏡の前に立った時、初めて自分の姿をまともに見た。
「…俺って、案外イケてる?」
だが、すぐに目が釘付けになったのは、胸の中心にある不気味な紫色の印だった。十年前、神に貫かれたその傷口…そこには今、奇妙な塊が存在していた。
そのとき、不意に背後から声が響いた。
「それは、生き延びた証だよ。」
「誰だ!神なら、覚悟しろよ。腹も満たしたし、ぶっ飛ばす準備はできてる!」
俺が怒鳴ると、声の主はこう答えた。
「落ち着けってば。ほら、ここにいるよ。」
振り返ると――そこには、人語を話すサイが立っていた。
「お前は誰だ?なんで話せるサイがここにいるんだ?」
「俺自身もわからない。ここに来た経緯もわからないんだ。」
「生き残ったからその印があるって言ったな。それはどういう意味だ?」
「知らないよ。ただ生き残った、それだけだ。」
「でもお前はそう言ったじゃないか!怒りが湧くぜ!」
「生きてるからそう言っただけ。バカみたいな顔して俺を見んな。」
俺はため息をつき、そいつに帰れと言った。
「帰りたいけど、ここにどうやって来たかもわからない。」
俺は仕方なく了承した。
「いいよ、一緒にいろ。」
「ありがとう。」
あの神との戦いを思い返し、次に奴が来たときは絶対に倒すと心に誓った。そこで俺の修行が始まった。毎朝、島の一番高い山まで石を運び、体を鍛えた。腕立て伏せ、スクワット、格闘技の練習も欠かさなかった。
ある日、サイ(通称ライノ)が、船が島に来たと知らせに来た。その知らせは十年前の神の到来を思い出させた。奴らが神か人間か、遠くから観察することにした。
船から降りたのは六人。三人の女性と三人の男性。
一人目の男は死体かと思うほど顔色が悪く、灰色の着物に灰色の目で、白髪交じりだった。
二人目は黒いジャケットに白いシャツ、赤いネクタイ、白い手袋をはめ、茶色のローファーを履いていた。背は約180センチで、グレーの髪と茶色い瞳を持っていた。
三人目は一番若く見え、明るいオレンジ色のTシャツにカーキのズボン、緑の目とオレンジの髪をしていた。俺より三歳ほど年上の十九歳くらいだった。
女性の一人は空中に浮かんでおり、黄色い髪で白い枕の上に寝ているように見えた。これを見て、奴らが神だと確信した。
二人目の女性は細身で可愛らしく、赤のグラデーションの服にミニジーンズを履いていた。赤い目と白い髪をしていた。
三人目の女性は一番美しく、瞳の中は黄色で縁は黒。黒髪に黄色いメッシュが入り、赤いイブニングドレスを着ていて、太ももまでのスリットがあった。かなり豊かな体型だった。
浮かんでいる黄色髪の女性に攻撃しようとしたが、ライノに止められた。方向を変えた時、屋根の瓦が一枚落ちてしまった。
その音を聞いて、黒と黄色の髪の女性が白髪の女性に様子を見に行くよう言った。彼女が上がっていくのを見て、俺は待てなかった。
今がチャンスだと、屋根から飛び出し、右足のかかとで彼女の頭を蹴りつけた。彼女は倒れ、気を失った。
ジャガーのように地面に着地し、歯を食いしばったが、奴らの反応は驚くほど冷静だった。浮いていた女性はまったく起きなかった。
すると、オレンジの髪の男が言った。
「おい、ひとりで…」
彼の言葉が終わらぬうちに、俺は猛獣のように飛びかかった。彼はティラノサウルスに変身し、大口を開けて俺を食らおうとした。
彼の頭を蹴り台にし、回転しながら次に灰色の目の男に強烈な左手を叩き込んだが、彼に跳ね返されて後ろに飛ばされた。
黒いジャケットの男が言った。
「ガキ、落ち着け。悪い奴らじゃない。」
だが、俺には何も聞こえなかった。復讐に目が眩んでいた。
彼は続けた。
「中村明子、小林優希、渡辺さくら、鈴木亮太、佐藤武、田中浩史!」
「優希、助けてくれ!」
浮いていた女性が言った。
「ごめん、眠すぎて無理。明子に頼んで。」
「明子、お願い。」
黒髪と黄色い髪の女性が言った。
「わかった。」
彼女を敵だと思い、全速力で飛びかかったが、彼女は驚くほど落ち着いていた。
「やめろ。」
その一言で、俺は動けなくなった。
「落ち着いたか?」
ジャケットの男が言った。
「すごいな…俺の力でもお前は抵抗するのか。面白い。」
俺はライノに助けを求めた。
「悪い、無理だ。」
「なぜ?」
「俺は透明人間だって忘れたのか?」
俺は思い出し、でかい声で「くそ!」と叫んだ。
「ガキ、誰と話してる?」
「俺のサイとだ。」
「ははははは!」
彼女は笑った。昔の神を思い出し、怒りが込み上げた。
「落ち着け。嘲笑ってるんじゃない。」
俺は怪訝な顔で彼女を見た。
「俺たちは大きな間違いを犯した。悪いな。俺たちは敵じゃない。」
「神じゃないのか?」
「違う。俺たちはお前と同じ人間だ。」
彼女は服の前を下ろし、胸の一部を見せた。俺は赤面した。
「何してる?その魅力で俺を惑わそうとしても無駄だ。」
「よく見ろ。」
胸のそばに、俺の胸の印と同じ紫色のマークがあった。
その時、俺は理解した。彼らも俺と同じ、神に殺されて生き返った人間だ。
印のことを教えてもらう代わりに、俺は村の話をした。
白髪の女性は涙を流し、
「苦しんだおかげで、頭を蹴ったこと許す。」
と泣きながら言った。
「じゃあ、この印の話をしよう。」
明子が言った。
「この印は神傷と呼ばれている。神に殺されて生き返った証だ。攻撃を受けた場所に現れる。生き返ると、神の力と自分の魂が融合した存在が生まれる。少なくとも俺はそう信じている。この力で神の力が使える。だからさっきさくらが空を飛び、ひろしがティラノサウルスになった。」
「だからお前たちの神傷のおかげか?」
「そうだ。」
「じゃあ、俺のはなぜできない?」
「普通ならできるはずだ。壊れてるのかもしれない。」
「お前が壊れてるよ。」
「最初に壊れてるのはあの髪型だろ。」
「何言った?」
「いや、何でもない。」
「名前は?」
「ボタロ・D・ラクン。よろしくな。お前らは?」
「中村明子。よろしく。」
「小林優希。よろしく。」
「渡辺さくら。よろしく。」
「鈴木亮太。よろしく。」
「佐藤武。よろしく。」
「田中浩史。よろしく。」