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ネメシス  作者: Kuroyami
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第1話:ネメシスの誕生

消えることのない痛みがある。

時でさえ癒せぬ、見えない傷跡がある。

この世界は、俺からすべてを奪った。

家族も、名前も、生きる意味さえも――。


俺は英雄じゃない。

救世主でもない。


忘れ去られ、壊され、捨てられた者だ。

そして今――裁くのは、俺だ。


名前は「ネメシス」。

この世界を、跪かせる。

神々の狩人の誕生 — 第一章:神を狩る者の誕生

むかしむかし、モンスターと人間が共存する世界があった。

人々は日々、モンスターの襲撃に怯えていた。

その苦しみを終わらせるために、神々が地上に降り立ち、モンスターを討伐した。

百年にも及ぶ戦いの末、神々は傷つきながらも勝利を治め、空の果てにある自らの王国へと戻った。


それ以来、神々の姿を見る者はいなかった。

だが、伝説によれば、時折、神が地上へ降りて人間の様子を確かめに来ると言われている。

そして、大雷が鳴るとき、それは“神の降臨”のしるしだという。


「…それで、ラクン。このお話、どう思った?」


「すごかったよ、お母さん!神ってやっぱり、すっごく強いんだね!

ねぇ、僕もいつか神と同じくらい強くなれるの?」


「ええ、もちろんよ。

でも今は、畑を手伝ってくれる?お母さん、腰がつらくて…」


「うん、わかったよ、お母さん!もう僕は大人だもん!任せて!」


僕は笑顔で答えた。

母は優しく見つめながら言った。


「ありがとう、ラクン。あなたには頼りにしているわよ…。

お父さんやお兄ちゃんたちみたいにね…」


僕は笑い出した。すると、長兄のコユキがからかってきた。


「そういうお前がリンゴ一袋も持てないって、笑えるな!」


みんなが笑い声をあげた。

僕はムッとして、袋を持ち上げようとした。


伸びをしてから手をかけた瞬間、その重さに耐えられず倒れ込み、地面に落ちてしまった。

みんなの嘲笑が浴びせられたけれど、一人だけ違った。

大好きな姉は台所でご飯の支度をしていて見ていなかった。


母がそっと僕を抱き起こし、優しい声で言った。


「大丈夫よ、ラクン。あなたはまだ小さいんだから…。

お兄ちゃんたちくらい強くなるまで、お母さんがあなたを守るからね。」


その声はまるで子守歌のように、僕の心を暖めた。


「焦らなくていいんだよ、わかった?」


「うん、お母さん!」


正午。 太陽が頭上に照りつける頃、遠くから旅の男が現れた。


「私は海の向こうから来た神だ」と名乗った。


村人は最初、笑い飛ばし、追い出そうとした。

でも、その男が手を掲げると、曇りひとつない青空でも雷が落ちた。

そして、どこにもやけどの跡はなかった。


彼は次々と“奇跡”を起こし、その存在が神であることを証明した。

夜になると、村人たちは盛大な宴を開いた。


人々は歌い、踊り、酒を飲む。笑い声が夜空に響いた。

しかし、その夜の静寂は、悲鳴によって打ち破られた。


「やめて…お願い…!」


一人の妻が泣き叫びながら懇願した。


神は彼女に無遠慮に触れ始めた。

夫は怒りに燃え起き上がるが、神は静かに問いかけた。


「神に向かって夫として戦う気か?」


会場は凍りついた。

夫は動けず、妻は必死にもがき、涙を流した。

彼女が彼女の絶望の末に、神を平手打ちすると…その頬を神は一瞬で叩き切り、彼女の頭は床に転がった。


夫は激しく吠えた。


「この神め!俺がお前を…殺す!」


男は神に飛びかかったが、神は胸を貫く光線を放った。


「うわあああああ!」


人々は逃げ惑うが、その神は魔法のように姿を移し、群れを一瞬で葬り去った。


視線が交差したとき、彼は僕の胸に向けて光線を放った。

死を覚悟したその時、母が僕をかばい、僕の前に倒れた。


僕は母に抱きつき、涙をあふれさせながら震えた。


母は小さな声でつぶやいた。


「大丈夫よ、ラクン。リンゴ袋を持てなくても…」


そして母は動かなくなった。

僕の泣き声が夜に響いた。

神は拍手し、笑っていた。


その後、地獄のような十年が始まった。


飢餓、拷問、暴行、嘲笑…。

自殺を試みる者には、再び苦しみを与えるため蘇らせ、神は笑い続けた。


十年ののち、コユキは立ち上がった。


「今日こそ反乱の日だ。」


僕は打ちひしがれて答えた。


「何を?神には勝てないよ。俺たちは虫けらだ…」


「虫かどうか、どうでもいい!

勝つまで何度でもやるんだ!」


僕は言葉を失ったが、コユキは続けた。


「諦めるってのは不正を許すってことだ。

立ち上がらなきゃ、誰がこの世界を変える?

この世界は神だけのものじゃない。俺たちの世界だ。

今こそ、思い知らせてやるんだ。」


その日、コユキは僕の英雄になった。


夜、反乱が始まった。

男女子供、誰もが力を合わせて神に襲いかかった。

神は現れ、不敵に微笑んだ。


「まだ学んでないのか?」


しかし、僕たちの目には恐れがなかった。


戦いは凄惨だった。

多くが散り、最後に立っていたのは僕一人だった。


神は僕を見下ろし、問いかけた。


「意味はあったか?」


僕は答えた。


「…あなたには分からないほど、あった。」


僕は神に突進した。

その時、神の光線が僕の胸を貫いた。

僕は空を見つめ、死ぬはずだった。

しかし、僕は死を拒んだ。


無限の闇に落ちた。

奇妙な構造物に囲まれ、僕は遺志を抱えてそれらにしがみついた。

そして、ゆっくりと光へと昇った。


気づくと、僕は生きていた。

胸の穴は塞がり、代わりに深い紫色の傷跡が残っていた。


俺は戻ってきた。

今、俺が生きる理由は一つしかない—

神々への復讐のために。


つづく…

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