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01_絶望

 「神崎議員、新たな税金を課すとというのはいったいどう言うことなのでしょうか!?」

 「神崎議員、ご返答を!!」

メディアの記者らが、神崎議員を囲み、質問をあびせていく。


神崎議員は鋭い目を目をキラリと光らせた。

 「現在、総理や他の幹部の方との調整中です。お答えする事は出来ません。」


 ガチャン

神崎議員は国会議事堂にある、控え室に入った。

『はぁ……。全く庶民ら口だけ口だけ、税金を新たに課そうが、言葉で批難をするだけで、何も行動を起こさない。』

 神崎敦彦(かんざきあつひこ)は54歳、東京大学出身の与党議員であり、政党の幹部でもある。エリート街道を突き進んだ彼であるが、その中であるひとつの事実に彼は気づいた。それは、"自分は優秀だ"と言うことと、"日本の庶民のレベルは低い"と言うことである。


彼は机の上に鞄をおき、荷物を整理する。

『この世は優秀な者が得を出来るように出来ている。弱者は自分が弱者であると言うことに気付いていない。だから、立ち向かう事も歯向かおうとすることも出来ない。全く愚かな人たちだ。』

「宮城くん、私はもう帰宅するが書類の整理は任せていいかな。」

彼は秘書にそう伝える。

「はい。もちろんです。ですが、国会前では未だに、新税に対するデモが行われています。裏口から出られた方が良いでしょう。」

「分かった。それじゃ。」


彼は裏口から抜け、タクシーを捕まえ。帰路に着いた。

「1万3600円です。」

「はい。じゃあこれで。」


タクシーが去っていく。

『さぁ、帰ってビールでも。』


グサッ!!!!

「うっ!!」

玄関に入ろうとしたとき、彼の背中に激痛が走る。後ろを振り向くと、ニット帽にマスクの男。手にはナイフ

「苦しむ国民の気持ちを考えろ!!この……!クソ政治家がぁぁあ!!」 

ニット帽の男はナイフを神崎議員の背中から抜き、走って逃げていった。

「まっ……!待てぇ…………。」 

追いかけようとするが力が入らない。それどころか、傷口から更に出血する。


バタン!

玄関の前で彼はついに倒れた。

「この、一般庶民がぁ!!」


徐々に視界が白くなっていった。

「うっ……うぅ……」

視界が晴れ、目が覚める……。

そこは見慣れた玄関。しかし、彼は違和感を感じた。

「どう言うことだ……。」

身長が、目線が明らかに低い。自分の声も高く聞こえる。

『子供……?』

体感としては、10歳位だろう。子供用の服を着ていて、靴や靴下は履いていない。彼はポケットの中に、何か入っているのを感じた。手をいれてみると、ぼろぼろの財布と小銭が少し、そして『非純血国民』と上に書かれたカードが見つかった。それ以外は、保険証や免許証のような体裁である。また、そこには青髪の少年の写真、名前は……

「佐藤マーク」


『いや、だが一旦……。』

自分の家の表札をみると、『神崎』と書かれていた。

「よし……。」


ピンポーン

イヤホンを鳴らす。

しばらくして、初老の女性が現れる。

「はい……。」

神崎議員の妻であった。

「俺だ!敦彦だ!」

彼は必死に訴えた。

「後ろから刺されて、そしたらこんな風に!!」

しかし、妻の表情は曇っていく一方。

「まぁ!?こんなところに、混血が!?」


バタン!

扉を閉められてしまった。

彼が途方にくれていると、辺りからパトカーのサイレンが聞こえてきた。

……音が大きくなるにつれて、少年の身体は身震いをする。本能がそれを嫌がっている様に。


パトカーが家の前に止まり、恐ろしい形相をした警官が二人出てくる。

「この、ゴキブリ野郎がぁ!!!」

ドゴッ!!

「ううぁ!!」

いきなり警官は、彼を殴る。

「ちょっと待ってくれ!俺は……」

「黙れ!この野郎!」

ドゴッ!ドゴッ!バチン!

警官は繰り返し殴る!


数分間殴り続けた。少年の意識は薄れてきていた。顔はボコボコになっており、鼻・口から出血している。

その時、後ろにたっていた警官が、口を開いた。

「その辺りにしておけ、市民の夢見が悪い。パトカーで、市街地の外の河川敷にでも放り出しとこう。」


その瞬間、少年の意識は途切れた……。

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