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2「Let’s Magic」

2「Let’s Magic 」

 

「では、明日の早朝ここでお待ちしております。」


 そう、一般員から言われたあと商会を出た。

 少なくとも移動手段を確保出来たことは良かった。今はまだ正午を回ったぐらいだ。まだまだ時間がある、どうしようか。


 「ドーナ!」


 いきなり聞こえたのは土の最下級魔法。どうやら銀行強盗ならぬ商会強盗のようだ。小さい商会だったら護衛がずっと店の前にいるわけじゃないし、少しの手練れであれば強盗ぐらい簡単だろう…………俺がいなかったらだが。実験台となってもらおう。


 今まで権能を使ってわかったことがある。

 

 俺の権能である強欲の魔女因子の1つ目の能力『獅子の心臓』は対象のあらゆるものを世界から孤立させ、全ての法則を完全無視し、不変の存在となる。

 が、おそらく正しくはそうではない。そうじゃないと重量も効かずに宙に浮いて何もできなくなる。しかし、やろうと思えば宙に浮くこともできる。

 つまり、『獅子の心臓』の本当の能力はこの世全ての法則の取捨選択。ならば魔女因子の演算ではなく、自分で効く法則を選択できるはず。

 買った扇子の風に権能を一瞬だけの約0.3秒を乗せて、すぐに解除し、慣性だけ残せば、初速が音速の極高速の風を出すことができる俺の開発した風の三つの内の一つ。その名を……


『壊風!』


 瞬間、俺から人工の台風と言えるほどの業風が吹き荒れ、盗人を弾丸の如く吹っ飛ばし、家を3個ほど突き破って行ったが……。


「やべ……!」


 範囲を絞るのを忘れて盗人ごと家を粉々にしてしまった。血は飛び散っていないから人はいないと思うがさすがにまずい。カネだけ置いて早く逃げよう。


「おい!なにが起こったんだ?」


 本格的にやばいな。早く街の中心へ走らねば。


  *    *     *


「さーさーさー。今日は大特価だ、買ってけ買ってけ。」


 すごいな大事な街道が通れなくなってもこの賑わい、北街道も通れたらどれほどなのだろうか。だと言っても買いたいものは特にないのだが…………、そういえばさっきまで魔法がこの世界にあることを忘れていたが俺も使えるのだろうか? せっかく異世界に来たのだ。試さめば損というものだ。


 中心の大通りから外れた薄暗い路地、そこに元々とても強かった魔法使いがいたと聞いたが、まさかここまで寂れたところに住んでいるとは、魔法使いも楽じゃないのかもしれない。


「ごめん下さーい。誰か居ますか?魔法を教えて欲しいんですけどー。」


 もしかして誰も居ないのか?


「おや、お客さんかな。珍しいねー。」


 いきなり後ろから声をかけられ、ビビってしまった。

 見るからに弱そうな50後半ほどの老婆であった。


「あんた今私のこと弱そうとか思っただろ。失礼なやつじゃ。」

ぎく!バレていたか。


「いえいえ、そうなことありませんよ。………………すみませんでした。」

「よろしい。若造や、魔法を学びたいんだろう?カネ払うなら、私が適性を見てやる。こっちに来い。」


 少し広々とした明るい場所に案内された。


「さて、では順番に『ゴーア』『ヒューマ』『フーラ』『ドーナ』『ジワルド』『シャマク』と唱えてくれ、火を水を風を土を熱線を陰を生み出すイメージで打つんだ。魔法の発動は私が補助しよう。」


「わかりました。「ゴーア」!」

 何も起きない。


「ヒューマ!」

 何も起きない。


「フーラ!」

 何も起きない。


「ドーナ!」

 何も起きない。


 うんともすんとも言わない。まさか魔法の才能がないとかだったりして……、この体だしありえるか。


「ジワルド!」

 か細いが確かに熱線が出た。よかった使うことができて。


「よかったな若造。陽魔法とは珍しい。攻撃にも強化にも使える便利なやつじゃ。一様陰魔法も確認しよう。「シャマク」と言え。」


「シャマク!」

 小指の爪ほど、ジワルドよりももっと微かに陰が手から出てきた。


「陰魔法も適性があるのか。しかも陽と陰の相反するものとは、ただ陰の方は適性が薄すぎて使えんなー。やるにしても合成魔法ぐらいじゃろう。」


「これからどうすればいいんでしょうか?」

 使えはしたがこんなに弱いと使い物にならない。


「威力は気にするな。練習すれば使い物になるぐらいは上達する。ただ若造のオドの量は少なくもないが多くもない。魔法中心に戦うことはできないと思え。……若造、お前が強くなりたいのなら体術か剣術を学ぶといい。それを中心として陽魔法で強化し戦えばそこら辺のチンピラや兵士には負けないぐらい強くなれる。」


 具体的かつ的確なアドバイスをくれるなこの婆さん。


 「具体的にどんな魔法が使えるんだ。陽魔法ってのは?」

 

 「そうじゃな。まず若造がさっき使った「ジワルド」、そして身体強化などに使える「アクラ」の2つがある。また陽と陰の合成魔法が他人と意識をつなげる「ネクト」じゃ。 ……実は私も陽魔法が使えるから最初の2つであれば教えられる。良かったな若造。…………返事は?」

 

 「お願いします!」


 それから魔法の基礎知識とオドとマナの使い方を教えてくれた。またどうやら魔法の適性さえあれば結構簡単に使えるようだ。

 そして、この婆さん予想以上の傑物だとわかった。

 彼女の名前はシュハルト・バーネイン。20年前の亜人戦争のときに剣鬼ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアとほぼ同数の強者を倒した。元ルグニカ1の魔法使いだったそうだ。


 「亜人を焼き殺す灼熱の魔女とは私のことよ。今は根暗のクソ辺境伯に負けちまったがね……ケ。ついてこい若造。陽魔法の真髄を見せてやる。」

 

 そう言って俺は街の外へ出た。


 「若造、よく見ておけ。これがお前の目指すところだ。」


 周りのマナが明らかに激しくなり、彼女の周りに集まる。


 「この魔法で私より強いやつはおらん。」

 手を空に向け、

「「「「「「「アル・ジワルド!」」」」」」」

 

 隕石の弾道かと思うほどの美しい陽光が夜の暗闇を飲み込んだ。

 

 

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