3「大罪の落とし所」
3「大罪の落とし所」
俺のやりたいことは見つかった。
しかし、それをするために絶対に見逃してはいけないものがある。それはレグルスの妻たちだ。この体の持ち主でレグルス・コルニアスは様々な場所で女を攫い、それ以外のものを皆殺しにしてきた。そして妻には笑うことを禁じ、少しでも癪に障れば、レグルスに消し飛ばされるという想像すら負けるほどの悪行をしている。
この妻たちをどうすれば良いのはものか。
案を出そう。
一つ目は「全員連れて行く」、まずこれは無理だ現状とやっていることは変わらないし、いきなり妻を百人近くつれてくる奴が信用されるわけがない。少なくとも俺なら絶句する。
二つ目は「皆殺しにする」、これも無し、死は救済とかいうが…………………………まぁ〜ないよね。
三つ目は「全員と離婚する」、である。つまり、全員を解放することだ。だがこれには注意点がある。すなわち、小さな王が使えなくなるということだ。そうなれば、常時無敵はできなくなり、普通に殺される可能性が高くなる。
でもそんなことは承知の上だ。これしかないだろう。
翌日、俺は78人の妻を全員集めた。全ての妻が無表情であり、さすがに恐怖を覚えるほどの異質さがある。これほどレグルスの恐怖に沈んだものたちだ。俺が離婚すると言ったら、その後に殺されると勘違いして自殺する可能性もある。ならどうするか?
「お前たちはこの屋敷から出禁だ。好きなところに行け、もちろん死ぬことは許さない。金はやる。もう一生俺の前に現れるな! 早く行けグズども!」
そう、恐怖には恐怖による命令しか無理なのだ。そうすれば全員どこかに行くと思った。なのに…………
「旦那様、私たちに不備があれば何なりとおっしゃりください。」
これでもまだダメか。でも、さっきまで無表情だったのが困惑と疑心に染まっている。効果はある、もう一息必要だ。
「僕に口答えするのか。ただ雌が!殺さないだけありがたいと思えよ。早く行け。山を降れば、大通りがある、その道に沿って行商人に金を払えばどこにでも連れて行ってくれるさ。今から半刻後、屋敷から出ていなければ殺す。目障りだ。」
金はすでに昨日全員に配った。元々国や村を滅ぼした後に得たものだ。軽く国家予算並みにあったのを等分した。おそらくどれだけ豪遊しても使いきれない額になるはずだ。
そして、78人の妻を小走りをしながら屋敷を出ていった。喜びと恐怖が混ざった顔をしながら、レグルスの気が変わる前に逃げようとするのがわかった。無責任なことなのはわかっているが、俺のような頭ではこれが限界だ。
妻たちの道を守るために昨日、一帯の魔獣を皆殺しにした。ギルティーラウなどもいたが雑魚に変わりない、そして離婚してわかったことは権能である『小さな王』は離婚しても消えない。これは推測だがおそらくこの効果は妻との距離だ。だからこそレグルスはプリステラにも妻を連れて行っていたのだ。
一刻した時、体に重力がかかるのを感じた。やはり推測は正しかったというわけだ。
彼女たちはもう何も持っていない。誇りも家族も恋人も…………それらを奪った張本人として俺は償わなければならない。
強欲の大罪は死ぬまでのしかかることはこの世界に来た時点で決まっていたのかもしれない。