2「情報収集」
さて、情報を整理しよう。僕、いやこれからは一人称を俺としよう。俺、糸師カケミチはエレベーターの急落下により多分死亡。そして僕のよく知るラノベの世界で一番のクズに転生してしまったようだ。
それと後々説明するのが面倒くさいので、ここ親竜王国ルグニカの歴史についても触れておこう。ルグニカ王国とは数百年前に神龍ボルカニカと王族が盟約を結び繁栄してきたが、ある時、王族が続いて病死、王の血が最も濃かったフーリエ殿下などがことごとく死亡、王の血が途絶えた事により、賢人会が急遽新たな王を決める王選を開始した。
さて、説明はおわり。
というか、さっき偉そうに説明していたが、今が100年前とかだったらまだ王選は始まってすらない、まず俺はここがどこなのかすら知らない。今はできるだけ知る必要がある。ならば……
「出てこい」
そう言うとすぐに何もないはずの所から影が現れて、そこから人が出てきた。一般の魔女教徒である。こいつはほとんどの場合、大罪司教の手足であり、殺しから潜入までなんでもする。魔女教に頼るのは癪だが仕方がない。
一般教徒に情報収集をさせている間。僕、つまる所強欲の魔女因子の力に言いたいことがある。それは………………
強すぎると言うことである。
もちろん、俺自身知ってはいたがここまでとは…………
能力は実質3つある
一つ目は『小さな王』である。これは他人に心臓を寄生させたり、他人の不調を自らに変換するものである。レグルスはこの能力を使って二つ目の能力の副作用を無効化させた。
二つ目は『獅子の心臓』。これこそがレグルスが無敵であり続けた理由だ。その本質は対象の世界からの断絶するというものである。能力を使えば、あらゆるものが絶対不変の存在になり、石を投げれば永遠に飛び続け、全てを素通りするように破壊する。
だがこの能力を使う時、使用者の心臓も停止する。そして使い続ければ死ぬという感じだ。
帰る途中で61番を助ける時にわかったが、『小さな王』無しでの使用は連続で5秒が限界で合計で15秒以上使えば、動けなくなるほどの痛みに襲われることがわかった。
最後に三つ目、それに名前がないが簡単に言えば『圧倒的使いやすさ』である。元々疑問はあった。レグルスという生粋の馬鹿が能力を使いこなしていたことがおかしかった。奴が鍛錬するなどとは思わないからだ。
権能を使おうとした時、自分が想像した通りに魔女因子が演算して、発現させてくれる。さすがに空を飛ぶといったことはできないが、5歳でも使えるほどの簡単さだとわかった。つくづくこれで負ける方が難しいだろう。
半月後、調査が終わり結果の報告を聞いた。
「王族が死に、各国から竜の巫女に相応しいものを探しているというわけか」
おそらくスバルが転移してくる半年前に来たということか……。あと5ヶ月半でナツキ・スバルが転移してくる。
俺としてはレムやクルシュのような、スバルが助けることの出来なかったものたちを助けたいがどうすればいいんだ?
とにかくレムやエミリアはスバルがなんとかするだろう。俺が歴史に干渉することで影響が出ればどうしようも無くなくなる。少し考えたいが、この際僕が行きたいところに行こうと思う。何せ何もわからないのだ。俺ががこうなった時点でな。……………………………………………………
ならば俺は何がしたい? それはすぐに思いついた。
俺は前世でクルシュが好きだった。その在り方や気品は男女構わず、目を引き、尊敬の念を抱かんとするものだ。
俺はクルシュ派に行く。何があってもクルシュ様を暴食や色欲から守る。それが俺がこの世界に来た理由だと思うほどに。
「俺はクルシュ・カルステンを王にする」
それが俺、魔女教大罪司教”強欲”担当糸師カケミチの物語だ。