1「61番」
296日目、私の名前は61番、あの日旦那様にすべてを奪われてから毎日毎日こんな日が終わることを願いながら数えている。
ここは親竜王国ルグニカの南西、神聖ヴォラキラ帝国の国境に位置する山。そこに隠れている屋敷である。今日は旦那様であるレグルス・コルニアスがここの近くにあるリカコ村出身の子どもがうるさいと言う理由で滅ぼすそうなのでその付き添いである。
私はレグルスを殺したい。やつは私の故郷を焼き、私の友人や恋人、家族に至るまで皆殺しにしたのだ。今では生きる理由もなく、今すぐにでも死ぬかレグルスを殺すかしたいところだが、やつが強すぎるせいでどちらも叶わない。私には死ぬ権利すらないのだ。
村につく
「君たちのガキが僕の家の近くで喚き立てて迷惑しているんだ。一体全体どういう教育をしているんだ。それは僕の生きる権利を、幸せに生きる権利の侵害だ。」
理不尽な理由が罪のない命を刈り取っていく。逃げることも出来ない圧倒的な暴力。半刻もしないうちに数百はいたであろう村人は残すところあと二人となっていた。
そんなときだった。
「俺は、いや僕は誰だ?」
いきなり意味の分からないことを言いだした。いや、いつも意味不明なことばかり言っているのだが……。
しかも、レグルスは今日始めて、人を逃がしたのである。今まで気づかずに逃がしたことはあったのだが、自分からにがしたのは初めてだった。
屋敷に戻る途中
レグルスは私を魔獣から守った。いつもなら見殺しにするはずがおかしい。今更、善人ずらするのは余計気持ち悪いが明らかに変だった。
しかしその謎を見つけることは一生なかった。