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11「武闘祭Ⅵ」


 私は元々軽薄だけど元気な女の子だった。でもレグルスはそんな私を望まないので私は自分の口調を変えた。私は今300日ぶりに本来の自分へ戻ろうとしている。


 私はアリゼ。アリゼ・ロスフェリア、強欲の大罪司教に故郷を滅ぼされ露頭に迷ったところをクルシュ・カルステンに救われた『土の姫』だ。


  *     *      *


 「すいません。お願いします!」

 

 私はこの戦いに勝ってクルシュ様に認めてもらう。絶対に誰よりも。


 「では、……。クルシュ・カルステン様が第一の執事、ヴィルヘルム・トリアス」


 剣鬼恋歌に出てくる人だ。尋常でない剣技なはず、少しも油断はできない。


 「『土の姫』アリゼ・ロスフェリア」


 まだあまり馴染んでないし私は姫という柄ではないが、……まぁ仕方ない。


 剣鬼が動く。


 「はやっ!」


 目で追うのがやっとだ。地竜なんて目じゃない、すぐに私を気絶させる気だろう。そんなことはさせない。


 「アル・ドーナ!」


 加護と併用し、地面から百はくだらぬ石の大槍を生えさせ剣鬼にぶつける。このまま串刺しにしてやる。

 

 そして槍は剣鬼を突き刺す…………ことはなかった。剣鬼は剣で槍を切りまくり少しも寄せつけない。しかも……


 「鞘に入れたまんまなんて……!」


 信じられぬことに剣を抜かずに鞘で切っている。  ……剣鬼、化け物なんて話じゃない、これは人の形をした何かと言った方が納得できるほどだ。まず鞘で岩を切らないでほしい。

 でもこんなのでへこたれてたまるか。


 私を層操の加護で地面を小刻みに揺らし、地面を液体化させる。地震と同じ原理だ。まずその速度を殺す。

 

 「む」


 剣鬼が足を取られたことに気づく、だがそれでも石の槍はすべて切っている。もっとやってやる。


 「アル・ドーナ!」


 再び演唱をして地面を操る。まず槍を継続させながら、周りに岩の触手を増やし弾幕の密度をあげる。もちろんこの程度じゃなんともないだろう。だから……


 「これで終わりです!」


 カケミチにやったものと同じだ。大岩を上空から突き落とす。これが単純で一番強いし、威力を上げるために大きさを小さくし硬度にマナを注ぐ。これを防げるはずがない。

 

 そして一様、ヴィルヘルムさんが死なないようにすぐ岩を瓦解させようとしたときだった。


 「まさかここまでとは、私も本気を出さざるをえませんな」


 不穏な宣言が聞こえる。


 「はー!」


 瞬間、大岩が真っ二つに割れ、いや切断された。


 「――っ!」


 見れば剣鬼は剣を抜き、その透き通るような刀身が太陽を反射する。そして岩をどんどん切っていき、徐々に、いや確実に小さく細切れになっていく。その剣の舞は剣鬼ではなく剣姫といった方がいいかもしれない。

 

 そして私はまけ……、るわけにはいかない。

 まだ足は取っているそのまま攻撃を続けて圧殺するように物量でおす。


 「まだ負けません!」


 地面の液化を激化させる。そしてまわりからの石の槍や触手を多くして攻撃で覆い尽くす。

 このまま削り切る。


 「凄まじいですな、これほどの魔法使いは40年ぶりに見ますよ……シュハルト」

 

 知らない人の名が聞こえた。


 「しゃぁー!」


 神のごとき剣鬼の剣圧がこちらに襲いかかる。その刀身でなぜそこまで広く切れるかわからないが、攻撃をすべてえぐりきった。そして地面に向け、また剣を振る。

 すると剣の圧力が地面を抑えて液化が解ける。粉を握りしめたら固まるのと同じだ。

 しかも信じられぬことにその一瞬の固体化を見逃さず、それを足場に高く跳ぶ。


 気づいたときには…………



 剣はアリゼ・ロスフェリアの首元に接していた。

 


 

 

 

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