8「武闘祭Ⅲ」
色々としてしまったせいで帰り道の街道が戦場後のようになってしまった。
元々アリゼと俺はそれぞれ最速で終わったから他の大会参加者はいなかったのが幸いした。しかし道の中央に大量の岩があるのはよろしくない。なにせ領地同士を結ぶ大事な公道がこんな有り様だったら警備員が騒ぎ立てるに決まっている。
「アリゼ、早めにここから退散しないか?すぐに警備隊が来るはずだ、捕まってしまっては面倒臭いぞ。」
「……いきなり馴れ馴れしくしないでくれますか。さっきはまだ助けてくれた余韻があったけど今はもうないわ。貴方の体が私の故郷を滅ぼし、皆殺ししたことを忘れないでください。」
「それは申し訳ない。ただ今すぐここを離れないと行けないのは本当だ。とりあえず歩かないか。」
さすがにすぐ「はい、なかよくしましょう」とかになるわけないか。
「私も大事にしたくはありませんので従います。歩きながら話ましょう。」
一様聞き入れてくれたようだ。
* * *
小走り気味で歩いている間。
「俺から少し質問をしてもいいかな?アリゼ……さん?」
「なんですか? それと私をそんなに呼び捨てしたいのならば、条件を全部満たしてからにしてください。 ……それで質問とはなんですか?」
条件……明日の決勝で一発攻撃を受けるやつかー。こればかりは腹をくくるしかないし、俺が断る権利もない。
「アリゼさん。貴方の加護は具体的にどんな効果があるんですか?興味がありまして。」
宣告見せた天災の具現化のような土魔法の嵐。明らかに一嫁が持っている力ではない。
「加護ですか……、私自身は自分に加護があることは気づいていたのですが、いかんせん発揮する機会はなかったので詳しくはわかりません。……簡単にいえば『地愛の加護』が効率的に土魔法が使えて、『層操の加護』が地面を操れるといった感じだと思います。それぞれどれくらいが限度かはわかりませんがある程度融通は効くらしいです。」
加護、それは世界の人々が生まれるときに与えられる祝福のようなものであり一つ加護を持っているだけでも相当珍しい。それを2つ持っているとは凄まじい。他に2つ以上持っている人といえば、剣聖ラインハルト・ヴァン・アストレア、剣聖テレシア・ヴァン・アストレアぐらいだろう。もしかしたらラインハルトまではいかなくともテレシアほどの傑物にはなるかもしれないということだ。
「なるほどなー。そりゃああれだけの魔法が打てるのも納得だ。」
「私からも質問いいですか?」
「いいけど……、何?」
「貴方の強欲の権能。もしかして弱くなっていますか?」
………………隠す必要もないか。
「アリゼさんの想像通り、俺の強欲の権能は2つの内1つが機能していない。そのせいで俺は無敵時間が少ししかないだ。……一日に15秒までかな。」
「ーーあ、」
アリゼが瞬間なにかを考えているように見えたが、その時の俺にはわからなかった……。俺の体の強欲という罪の重さを。
* * *
次の日、武闘祭の2日目を迎えた。
活気と気品の両方を併せ持つ
「諸君、今日は大会の最終日だ。昨日時点で優勝の叶わなくなった者たちが数多くいる中、それでも大会を見届けようと来てくれたことにまず感謝をしよう。 さて、昨日の大会を生き延びたのは合わせて8人だ。優勝者はその中の一人に決まる。 ――大いに励め、そして表せ、お前の闘志を、願いを叶えたいとするお前の渇望を。 そのすべてを私、クルシュ・カルステンが見届けることを約束しよう。」