7「武闘祭Ⅱ」
疲れたーなんとか書けました。
7「武闘祭Ⅱ」
「グッドモーニングエブリワン。今日も張り切っていきましょう。」
はい。というわけで俺が転生してから9日が経ちました
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さて、二日後の武闘祭の要項を見て俺が絶望したことを話そう。実はこのままだと初日で負けるということだ。
俺の権能は一日に15秒しか使えない。それ以降使えば、…………多分、心臓がお亡くなりになる。
でだ。そうなると一番連発できる『壊風』でも50発が限度となる、もちろん一発で十人全員倒せるとは限らない。それにこれは俺が決めたルールだが何かあった(正体がバレた)時のために5秒は必ず残す必要がある。
つまり、対戦回数が多いとジリ貧で詰むということだ。
ではどうすれば良いか?簡単だ、権能を使わずに勝てばいい。 何!そんなのレグルスの体じゃ無理だって?
そこは気合いと根性ーーと行きたいところだがそれは無理なので魔法と体術を使うしかない。つまるところ『エル・アクラ』を使えるようになる必要がある。元々、魔法を習ってから毎日練習していたが中々使えない。なのでこの2日間は全て『エル・アクラ』の練習だ。
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アクラとは体に陽のマナを付け、身体能力を上げるというシンプルなものだ。だが、ただマナを体に付けるだけではマナが定着せずすぐに霧散してしまう。だから、細胞一つ一つにマナを結びつける必要がある。そして結び付けるには体を細かく知覚する必要があり、だからこそ最下級のアクラだと体の皮膚付近にしか強化を及ぼせない。
俺の魔法の師であるシュハルト婆さんが言うには段階は四つに分けられるそうだ。
一段階目、アクラ……体の皮膚付近
二段階目、エル・アクラ……筋肉と骨
三段階目、ウル・アクラ……体の五臓六腑
四段階目、アル・アクラ……魂
という感じだ。因みにアル・アクラを使えるのは世界で見ても片手で数えるぐらいしかいないらしい。元々陽魔法を使える人が少なく、魂の知覚がとんでもなく難しいそうだ。…………俺は一生無理だと思う。
実を言うと俺は三段階目までの知覚は済んでいる。この世界では手術などの治療はなく、ほとんどが水魔法よる治癒に頼りきっている。だから体の構造や詳細についての文献や知識は残されておらず、アクラを使う人は自らの勘で体を知覚する必要がある。
しかし、俺は前世で生物のテストはべらぼうによくて、やりたいことがなかったので安定の医者の道への勉強していた。医者になれるほどではなかったが…………。そのおかげで俺は体の知覚を勘ではなく知識でできる。でも俺はマナの使い方、つまり、マナの結び付けがお粗末だからできないんだ。
それでも体の知覚よりは全然マシだ。2日間死ぬ気でやればいけるはず、………………一緒に扇子の武術も練習しないとなーー。
がんばれ俺…………
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二日後
「俺はこの大会で有名人になってやるんだぜ」
「俺こそがクルシュ様に仕えるべき存在だ、部外者はすっこんでいろ……アーン!やんのかお前」
輩が何やら揉めている。
武闘祭当日、開催はカルステン領に隣り合っているアーガイル領で行われた。どうやら昔、ここには屋敷があったようだが燃やしてしまったようだ。
武闘祭への参加を登録し、待っていると
中央の壇上に一人の女性が現れた。 まさかあれが……
「武闘祭に参加をしてくれた諸君。はるばる来てくれたことを感謝する。私はカルステン領、公爵兼領主であるクルシュ・カルステンだ。皆それぞれここにきた意義があるはずだ。全力で示せ、お前の強さを、意思を。皆が当家の金獅子に恥じぬ戦いをすることを願っている。」
クルシュ・カルステン、俺の尊敬し、敬愛する誇り高きライオンの如く佇む美しい女性。この目で見ることができるとは。俺はこの大会で優勝し、貴方を王にすると決めた。必ず勝たねば
「武闘祭の開始を告げる!」
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参加人数は大体2000人ぐらいだとわかった………多いな
まぁーそんなことを嘆いていても仕方がない。一日目はランダムに十人ずつ選び、直径50メートルぐらいの少し盛り上がった壇上で戦うようだ。
確か残り八人になるまでやるはずだから3から4回戦で終わるのか、と負けるんじゃねと思っていたら。
それと先に言ってしまうが俺の二日の努力は無駄になった。元々「壊風」を耐える奴がいる前提だったんだが魔法や武術が多少使えるやつでも一発で場外に吹っ飛ばされてしまうのだ。意外とこの世界、怪物のような人は人はそうそういない。王都の近衛騎士団や「鉄の牙」がおかしいだけで………………今のところまだ2秒分も使ってないし、アクラすら使っていない。
そんなわけで俺は試合時間が合計20秒で武闘祭の参加時間30分という破格の時間で終わったため、あとは見学するか帰るしかなかった。帰って美味しいもの食べようかなーと考えていた そんな時だ
別の壇上で大きな打撃音と土石流のような音が聞こえてきた。なので急いでその場へ行くとどうやら凄腕の土魔法の使い手がいたようで試合が始まるやいなや壇上を魔法で変形させて石の触手みたいにして相手を吹っ飛ばしていたようだ。
明らかに強さが別次元をいっている。そう思って選手の顔が土煙で見えないのが落ち着くまで待っていると、武闘祭の本部から茶髪の可愛らしい猫耳の女性が岩の触手で吹っ飛ばされた人を治療しにやってき…………いや、この人男の娘のフェリスだ。クルシュ主催なのだフェリスがいて当然だ。
「みんなどいて!急患です!」
彼女は参加者の中を強引に進み、怪我人に水魔法を使う。
怪我人を見ると見る絶えない姿になっており、下顎が丸ごと消し飛んでいた。フェリスが治療し、下顎が生えてくるのを見ると若干ホラーだが治ってよかった。
土煙が収まり、見えるようになると、水色のショートでクルシュ様に負けず劣らずの美形、無表情で倒した人の様子を一切見ない非情の女性が現れた………………いや、あれって
「61番!?」
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なんであいつがいるんだ?妻たちは一旦カララギに行くように手配したはずなのに、、途中で別行動をとったのか?
わからないが今、一番会いたくない人がいるのは確かだ。とりあえず逃げないと……
俺はすぐに会場を出た。どうしよう……。少なくとも彼女が俺を殺そうとするのは確かだ。クルシュ様に俺が大罪司教だと告げ口されでもしたらその時点で終わる。
「今、殺せばいいのか?」
…………いやいやいや、俺は今何を考えていた?殺す?何様のつもりなんだ。
どうやらレグルスの魂の殻の一部が俺の思考に影響を及ぼしているようだ。元々、俺が転生して奴の魂のほとんどを塗り潰したはずだが、やはり少しは残っている。
そのせいで多分人を殺してもそこまで動揺することはないだろうが、あまりこんな思考はしたくないものだ。
「アル・ドーナ!」
土の最上級魔法が聞こえ、後ろを見ると
「うおわーぁー!ごべ」
いきなり大きな20メートルはあろう山のような土石の津波が襲ってきた。すぐに権能の常時発動をして津波は粉々に砕け散った。
「誰だ。」
いや、今考えると聞くまでもなかった。……そう61番だ。
「この野郎、死ねーーェー」
再び襲いかかる津波が来る
「エル・アクラ」
まさかここで使うとは、……俺は全てを押し潰さんとする津波を避けた。確か彼女の名前は……
「待ってくれ、アリゼ。話を聞いてくれ」
「聞くわけないでしょこのノミやろー。アル・ドーナ!」
次はあの岩の触手か、話は聞いてくれなさそうだし戦いながらしか無理そうだ。
『エル・アクラ、フォーカス下半身!』
アクラの強化を下半身に集中させ、扇子を二つとも開く。
「断風!」
岩の触手の根元を切断することで攻撃を一旦全てなかったことにする
「アリゼ、薄々わかっているかもしれないが俺の体はレグルスだがレグルスじゃないだ。」
「一度だけ助けたぐらいで許すとでも?貴方は私の故郷を皆殺しにした。許すわけがない。どうせ私を殺すのでしょう。なら最後まで抗いますよ。」
話が少しズレているな……仕方ないか。自動車ほどの岩の礫が飛んでくる
「確かにレグルスはクソだ。俺も嫌いだ、だから俺もこの体に転生した時、とんでもなく悲しかったし死にたくなった。」
礫をなんとか走りながら避け、壊風で礫の軌道をずらす
「じゃあ早く死ねばいいじゃないですか、魂が違うならかわいそうかもしれませんが、その体の業に免じて死んだ方がいいに決まってるでしょー! アル・ドーナ!」
地面から石の槍が生えてくる。
「でもそれじゃーダメなんだ。俺が死ぬだけじゃ、ルグニカの災厄を防ぐことができないんだ。俺がしないと何千万人の人々が死ぬことになるかもしれない!」
壊風を真下に向かって放ち、体の前面をアクラで瞬間的に強化。ロケットのように高く打ち上がり、槍が追ってきて一束になったところを断風で一気に切断
「貴方にそんなことできるわけないじゃない。 貴方に何ができるって言うのよ。私の全マナをくらわせてやる!」
「えぇーえ!」
アリゼが両手を真上に上げると空にどんどん土石が集まり一体化していく。まさかここまで強い人が妻の中にいたとは驚きだ。
大きな岩の塊はどんどん大きくなり、いつのにか東京にそびえる高層マンションほどの馬鹿でかいものができた。
…………まさに世界の終わりのような光景が俺の真上にできる。
「ここまでのマナ量があるとは驚きだね。」
「「道連れだーーーーァーー」」
自分も死ぬ気か!時間がない
俺は全速力でアリゼの元へ行く
「間に合えー」
隕石がこの地に落ちようとする。明らかに生きることを強制的にやめさせる威力だ。
断風一回じゃ切断できない……デカすぎる
………………………………最後まで使いたくなかったが仕方ない、俺の残りの権能全部使ってやる。ヤケクソだ
彼女の元に着く
「来るな!」
「いいから俺に捕まれ!これは命令だ!」
彼女はもちろん捕まらない。 クソ!もうこれしかないじゃないか、扇子を振りまくる。
「断風、断風、断風、断風!」
俺の残りは4秒……しけるか
「断風、断風、断風!」
あと少し……
「「たちかぜぇーーーーーー」」
やらかした、まだ大きな岩が残ってしまった。あと少しなのに出来なかった。俺はここで死ぬのか?まだクルシュ様に会ってすらいないのに!
クソーーー!!!
「ドーナ!」
瞬間、アリゼが俺を掴んで岩の防壁を作り、トラクターほどの岩から俺を助けてくれた。
「なんで?」
俺は彼女の両親や彼氏を殺したんだぞ。
「貴方が私を魔獣から助けてくれたから、その貸しを返しただけよ。 貴方は本当にレグルスじゃないんでしょ。そうじゃないと私をこんなに自分を犠牲にしながら助けるわけないじゃない。」
「犠牲?」
「貴方、気づいてないの、口から血出てるわよ。」
え!と我に帰ると本当に血を流している。初めて限界まで使ったからか?
「でも、俺は貴方の故郷を滅ぼしたんだ。なんで許すんだ?」
バン!と鈍い音を立てながら頬にビンタをされた。
「許してるわけないでしょ。今だってあなたのことを殺したい。でも……私をこんなになるまで助けた人を体が同じだからって殺すのは違うって思っただけよ。それにこんな怒りがそう簡単消えるわけない…………。その代わり条件があるわ。」
優しすぎる……。条件付きでも俺を殺さないと決意するのはどれだけ辛いことだろう。魂が違っても本人は本人だ。その怒りの矛先が消えることはどれだけの苦痛だろうか?想像に難くないだろう。
「条件とは?」
まさか条件が自殺とかだったら笑えないがあり得るところだ。
「一つ目は明日の決勝戦で私の攻撃をくらうこと防御をしないで受けること。あとの勝敗とかはどうでもいい。私はクルシュ様に仕えれるのならどうでも。」
「なんでクルシュ様にそこまで執着するんだ?仕事なら他にも沢山あるし金も腐るほどあげたはずだ。」
「……クルシュ様は昨日、街で呆然と生きる理由の無くした私を気にして下さったのよ……。なんでそんなに絶望しているかも聞かないでくれて、行く当てがあるないなら当家で働くといいと、魔法や武術に秀でているのなら余計歓迎すると言ってくれたの。でもそれじゃ納得がいかないから武闘祭で勝ってクルシュ様に仕えると言ったのよ。」
「………………」
本当にクルシュ・カルステンはどこまでいってもクルシュ・カルステンなんだな。
「それと二つ目は自己紹介することよ。」
「え?」
「だから自己紹介よ、そうしたら貴方を別人と認識できそうな気がするの。 ……あ、それともちろん名前は変えてね。 じゃぁ私から」
「私の名前はアリゼ・ロスフェリア。『地愛の加護』と『層操の加護』を持つ珍しい北方のグステコ生まれの水色髪を持つ女よ。これからよろしくね」
なんとなくわかった気がする
「俺の名前は糸師カケミチ。元魔女教大罪司教"強欲"担当で今は裏切り者とされた。そしてクルシュ様を王にすることを願う地毛が白の黒髪の男だ。これからよろしく。」
そしてアリゼは初めて俺に笑顔を見せた。金木犀のような柔らかい美しい笑顔だった。
投稿が結構開くかもしれません。気長に待ってください。二週間後までには出します。
バレンタインはもちろんゼロだったよ。はは
あれ?目から涙が