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アリス・ト・ロメリア

 わしの名はアリス・ト・ロメリア。全知全能にして精霊の頂点に立つ者。楠木に宿り、精霊使いにふさわしき者を待ち続け1000年。そのふさわしき者として出会ったのが我が主人であるウエダミサキ。自称、異世界から来た男。おかしな術を使って精霊が持つような力を見せたかと思えば、医者のような知識を持っていたりする。わしと契約できるくらいな男だからめちゃめちゃ凄いかと思えば、夕飯を食べてから辺りが暗くなっていると言うのに明かりもつけず、テント広場で買った一般的に広く流通している輪を閉じて使う鍵を、後ろに回した左手で持ち、右手にある細い棒のようなもので鍵を開けては閉め、また開けては閉めを繰り返しておる。

「ミサキよ、さっきから何をしておるのじゃ?」

「うん。こっちの世界の鍵を開ける訓練かな」

「鍵開けとな?泥棒でもするのか?」

「しないよ。これは手品の訓練たから。後ろ手に縛られた状態から鍵を解除する訓練」

「だからと言って暗闇でやる事はないじゃろ?」

「まあね。これは夜に備えてだから」

いつもこんな調子だからのう。何を考え手いるのかちっとも読めぬ男だわ。まあ、わしは酒とうまい飯を食べさせてもらえるならなんでもいいんだかな。

 酒を飲み続ける間ずっと鍵開けをしていたミサキを見ていたら眠くなってきた。どれくらい寝てたんだか、目覚めたら暗闇の中でミサキのやつ持っていたトランクバッグを開け、何か探し物をしているようじゃ。今日は月も出ていないし星の明かりだけしかないから人間の目ではろくに見えないだろに。

「何をしておるのじゃ?明かりもつけずに」

「あぁ、明日の裁判に使う手品のネタを探しているんだけど、確か持っていたはずなんだよなぁ。あっ、明かりはつけるなよ」

「何じゃい?目が悪くなるぞい」

「逆だよ、目のためだよ。お、あったあった。ちょっと出掛けて来る。付いてこなくていいからな」

ミサキは透明な袋のような物に入った黒いものを持って部屋を出て行く。わしもできるならベッドで寝ていたいんじゃがなぁ、精霊は物に憑き従う呪いがあるゆえ、憑く対象が動かぬ物から動く者に変わったとしてもその呪いは変えられぬわけで、憑き従う主人が離れすぎればどうなるか。

「何で付いて来るんだ。そんなにフラフラしてるんだから付いて来なくていいって」

「わしも寝ていたいんじゃがのう。契約関係を結ぶと主から距離を取れなくなってしまうんじゃ」

「そんな話し聞いてないぞ」

「してなかったかのう?精霊とは言っても霊には変わりなく、誰かに宿ってないと生きていけないんじゃ」

「なんだそれは?それじゃあの木に留まっていた対象が僕に移っただけって事?」

「そうじゃ。今の宿主はミサキじゃ。だが心配せぬとも良いぞ、ミサキが女を連れ込んで大人の遊びをしようとも黙って見ておるからのう」

「冗談じゃない、誰がロメリアの前でそんなことをするか。その前にいつか解除してやるんだからな」

 解除か、相変わらず面白い事を言うものじゃ。普通のやつなら死ぬまで利用することを止めることはないんじゃが、そう言う事を思わないのはやはり住んでいた世界が違うからかのう。さてわしはミサキの髪の毛でゆっくりさせてもらうか。ミサキの髪の毛に居座り前を向けば、進む方向は廊下の突き当たりにある司祭の部屋?ミサキはどこに向かっておるのやら。今夜は誰も教会にはおらぬはずじゃから明かりくらい持てば良いもを。

「のうミサキよ、なぜに灯りを持たぬ。あかりをつけたとて今日は誰もここにはおらぬゆえ、見つかることはなかろうに」

「誰がどこで見てるかわからないだろ?それに万が一誰かが来たら明かりを見つける事が出来やすいし」

「そんなもんかのう。しかしこんな薄明かりの中。良く歩けるものよ」

「ずっと暗闇に目を慣らしていたからね、これくらい星あかりがあれば十分だよ」

「ミサキはこれから何をするつもりなんじゃ?」

「司祭の執務室の奥にある大切なものを保管してある部屋にね、そこに明日の裁判に使われるビンの蓋が保管してあるから、それをちょっとね」

「ほう。向こうがトリックを使って色を変えているなら、取り除いてそうならないようにするわけじゃな」

「いきなり色をつける元がなくなっていたら新しいのに交換されてしまうだけだろ、それじゃ意味がないからちょっと細工をするのさ」

「よくわからぬが、うまくいきそうなんじゃな?」

「多分ね。あとは無罪が主張できた後の司祭たちの行動がどうなるか、僕には力がないから暴力に訴えられたらどうにもできないけど、皆の目がある前で強硬な行動には出ないかなって」

ミサキは司祭の執務室の前まで難なく歩いて来たが、その入り口の扉にはU時形の金物がついた鍵でしっかりと施錠がされておる。当然部屋には入れるわけがないがどうするつもりじゃ?ほう。ポケットから針金を1本取り出しそれを鍵穴にとな、そんなので鍵が開けば苦労は・・・開くのかよ。

「何じゃミサキは盗賊でもあったのか」

「盗賊?ピッキングだよ。手品師ならこれくらいできなきゃ脱出マジックなんてできないからね、出来て当然だってやつ」

執務室とやらに侵入する。何じゃいここは、キラキラとセンスの悪い宝飾品が飾られた棚の前には立派な机。その机の上にも金色の使えなさそうな文房具を置いて、ここを使っている者のセンスは最悪じゃのう。目的の場所はここではなく奥にあるもう一個の部屋か。ここにはもっと強固な鍵があるがどうするつもりじゃ?今度はまた違う道具を取り出して解除とな。そんなに簡単に解除されては鍵の価値がないのう。真っ暗な倉庫、さすがにミサキも明かりをつけるが、何じゃそれは。

「ミサキ、手の明るい物は何じゃ?小さな筒みたいな物から光が出ておるではないか。その筒には何が入っておるのじゃ?」

「これ?あぁLEDライトね。筒の中には電池と光源の・・・小さい妖精でも入っているのかな」

「ミサキ。なんかワシをバカにしておらぬか?」

「うん?ロメリアにもわかった?」

「バカにしおって」

 わしは棚に置いてある瓶の蓋に細工を始めたミサキを横目に、部屋の奥へフラフラと飛んで行く。前にも来たがお宝とかって置いてある物も価値はなさそうだが、唯一あるとしたらこの袋だけじゃのう。まあ奴らにしたらこれも宝の持ち腐れだろからワシが有効的に使用してやるとしょうかのう。

「ロメリア、こんな暗がりで何をしてるんだ?というかこんな暗闇でよく見えるなぁ」

その筒から出る光はやたらと眩しいのだが。

「ワシの目はどんな暗闇でも見えるからのう、特にホレ、こんなに輝いていたら暗闇でも見逃せないだろ」

「それ金貨だけど光を当てなきゃ輝かないだろ、で、その金貨をロメリアはなにをしてる?」

「うむ、寂しいと言うのでなぁワシの空間に納めておるのじゃ」

「寂しい?それって金持ちが財産が増えるって言うの例えで違うと思うが?」

「気にするでない。ミサキもお金持ちの精霊の方が良いじゃろ。ヒモとして」

「どっちが泥棒だか」

 何だかんんだ言いながら待ってくれるミサキはやはり良い男じゃ。

「もう大丈夫じゃ。ミサキはもう終わったのか?」

「とりあえずね、うまく行くかはわからないけどね」

「うむ、なら帰るとするか」

 音を立てぬように扉を閉め、鍵を確認して部屋を出て行くミサキ。ワシは再び髪の毛の上に乗り廊下に目をやる。人の気配のない教会は不気味なものじゃ。はて、そういえばミサキは幽霊とか苦手のようじゃったが大丈夫ななのか?

「のうミサキ、お主大丈夫なのか?」

「な、な、何が?」

「ほれ、幽霊とか苦手じゃったろ?」

「言わないでくれ、さっきは行くことに集中していて気が付かなかったけど、こんなに不気味だったなんて」

いきなり外で何か音がする。多分動物が草をかき分ける音じゃと思うが。ミサキよいきなりなぜに立ち止まる。倒れたりはしないじゃろな。

「ミサキよしっかりせい。アレは動物が動いた音じゃ」

「わ、わかってるよ。言わなくても」

再び歩き出すミサキじゃが、何か様子がおかしい。

「何じゃ漏らしでもしたのか?」

「そんな事・・・ちょっとだけ」

「まったく、情けないのう」

「うるさい」

まあ倒れなかっただけ良かったわい。倒れておったらワシが引きずって連れて帰らないとだっだわけだし。まあワシの力を持ってすれば容易いがのう。

 誰もいない大部屋に戻ったワシはベッドにに飛び込む。安いベッドは硬くてあまり跳ねないから、高い位置から飛び込むのは危険のようじゃ。さてミサキは何をしておる?今度はちゃんとランプに火を灯して部屋を明るくしてから動いているようじゃな。そんな隅で隠れるようにして着替えなくとも誰も見てはおらぬと言ううのに、そこは堂々として欲しい物よ。やれやれ、やっと着替えが済んで寝るようじゃ。ワシもやっとゆっくり眠れるわい。

「灯りが消えた部屋に入っていた星あかりはやがて登ってきた朝日にとって変わり、明るさを増してゆく。ついに裁判が行われる朝がやってきた」



「なぜにミサキがナレーションして物語が進んでおるんじゃ?このターンはワシの番のはずじゃなかったのか?」

「え?これは僕が主役の物語だから進めたっておかしくないでしょ?」

「何でじゃ、この物語りはワシが主役なんじゃからこれからはワシが進めるんんじゃ」

「やばいツッコミが欲しい」

「ワシだけでは物足りぬとは、まったくスケベじゃのう」

「助けてくれー」



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