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強くてニューゲームはハーレムを確約する  作者: 岩瀬隆泰
第6章 小学6年
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6-5.蒼嶺学園受験②

「お連れしました」

「どうぞ」


 水島さんが声をかけるとドアの向こうから返事が聞こえた。


 ガラガラ。

「どうぞ、お入りください。」


 俺たちは水島さんに促されて教室に足を踏み入れた。


「推薦者の皆様は一列に並んでいる5つの席にご着席ください。順番は、今入った順番で奥から順にお詰めください。片山様は一番後ろの席にご着席ください」


 水島さんに指示された通り、5人は一列に並んでいる5つの席に、俺はその真後ろに1つだけ置かれている椅子に着座した。入室前にノックする、おじぎをして入室する、椅子に座る前に挨拶するなどの作法確認は徒労だったな。

 教室内には、教卓を背にして3人の面接官が長机の前に腰かけていた。俺たちから見て左端と中央に座る2人は風格漂う老婦人で、こちらからしたらすでに見慣れた顔。そして右端に座るもう1人は蒼嶺学園の制服を身につけた少女。明らかにこの学校の生徒だ。


「では、私はこれで失礼いたします」

「はい。水島さん、ありがとうございます」


 水島さんが3人に挨拶すると、左端の女性が答え、水島さんはそのまま教室を後にした。

 

「ではよろしくお願いします。まずこちらから自己紹介させてもらうわね。私は神崎(かんざき)澄江(すみえ)。この学校の理事長よ」

「校長の(たちばな)園子(そのこ)です。と言っても、私たち2人とも何度も顔見てるでしょうから、今更かしらね?」


 真ん中に座る校長先生が左端に座る神崎理事長に目をやって笑うと、神崎理事長もつられて微笑む。

 そう、見覚えがあるのはパンフレットに写真が掲載されていたり、オープンスクールや学校説明会で登壇したりで何度も顔を見ているからだ。


「最後に紹介するわね」

 

 校長先生が隣の少女へ視線を向ける。


「私は瀬戸(せと)史佳(ふみか)。あなたたちの1つ上の中学1年よ。一応、中等部の生徒会長やってるわ」


 「生徒会長」という言葉に、前に座る5人の背筋が無意識に伸びた気がした。彼女もそれを狙ったのか「生徒会長やってるわ」のくだりで明らかに口角を上げていた。


「それじゃあまず、一番奥のあなたから順番に名前を教えてくれるかしら?」

「は、はい!春野七海です」

「村中結乃です」

「佐藤凛です」

「金井みずきです」

「石川藍です」


 神崎理事長に促されて、七海から順番に名前を名乗っていく。面接官3人は5人の名前を手元の紙にメモしているようだ。


「はい、ありがとうね。そしてあなたが片山隆一くんね?」

「そうです」


 俺が返答すると、神崎理事長は一度頷いて改めて正面の5人に向き直った。


「では早速始めましょうか。橘先生、お願いね」

「はい。それじゃあいくつか質問させてもらうわね。肩の力を抜いていいわ。普段おしゃべりするような感覚で教えてちょうだい。ただし答えるのは、私たちの正面に座っている『推薦者の皆さん』。隆一くんは、今日は見守りに徹してね」


 やはりこの面接は、俺ではなく彼女たちが主役だ。俺は背もたれからわずかに体を離し、彼女たちを目で支える。


「みんなが書いてくれた志望理由書と隆一くんの推薦書については、私たちもすでに読ませてもらったわ。だからここで改めてその内容を問うことはしません」


 やわらかな声に、5人が小さく息をつく。


「今日はそれ以外の、あなたたち自身のことについて具体的に聞かせてもらうわね」

 

 なるほど、志望理由書や俺への推薦書からではわからない、彼女ら自身のことについて知りたいってことだな。


「じゃあ最初の質問。今、あなたたち5人が熱中していること、夢中になっていることを教えてください。夢中になっていることなら何でもいいわ。テレビや漫画、ゲームでもね。ひとりずつ順番に質問していくけど、他の人が自由に補足したりフォロー入れて大丈夫よ」


 最初は割とオーソドックスな質問。もちろん対策済みだが、今回は「表向き」の答えじゃなくてより「リアル」な答えをした方がよさそうだ。そういう意味では藍から始まる方がいいのだが。


「じゃあ最初は藍さんからいきましょうか」

「え!?あ、はい!」


 と思っていたら本当に藍が指名された。藍はまさか自分が最初とは思っていなかったようで、一瞬慌てたもののすぐに背筋を伸ばした。


「校長先生がおっしゃっていたゲームが、私すごく好きで……夢中になっています」

「どんなゲームをするのかしら?」


 校長先生が藍の答えに重ねて質問する。


「色々です。アクションもRPGもやります。テレビゲームだけじゃなくて、ボードゲームも好きですし、クイズも大好きで」


 そこへ結乃が「そういえば」と身を乗り出した。


「この前、懸賞付きのクロスワードパズルを私が持っていったら、藍ちゃんが一緒に解いてくれたんです。ヒント見たら、あっという間に全マス埋まっちゃって……」

「テレビのクイズ番組に出てる問題もすぐに解いちゃうもんね」

 

 結乃に続いてみずきが話したエピソードに「いやたまたまだって」藍は照れて肩をすぼめたが、頬はほんのり上気している。これに対して「『たまたま』を重ねられるのは実力よ」と校長先生が柔らかく微笑む。


「クイズやパズルって、知識はもちろん、筋道を立てて考える論理的思考力や、直感も大切。あなたはそれらの使い方をしっかり身につけているのね」

「ありがとうございます///」

 

 藍の表情から、最初の緊張がほどけていくのがわかった。それにつられてほかの4人も自然な笑顔になる。

 ここからは順番に同じ質問が投げかけられ、全員が自然に等身大の回答を返していった。七海はピアノ、バレエに加えて少女漫画が好きなことを話した。結乃は新体操と漫画について、特に絵を描くことが好きで漫画を自作したエピソードを語った。凛は工作や家事、そして結乃と七海の影響で少女漫画に目覚めたことを伝えた。みずきは剣道と弓道のこと、さらにぬいぐるみなどのファンシーなものを小さい頃から蒐集していることを話した。

 みずきの回答が終わると「皆さんいろいろなことをやっているのね……」と感心した様子で紙にペンを走らせている。神崎理事長も同様の表情だ。


「ありがとう。じゃあ2つめの質問よ。5人のうちの誰かひとり長所と短所をそれぞれ教えてください。そのひとりは……七海さんにしましょう」


 形式が独特とはいえ、これもありがちな質問。指名された七海は思わず姿勢を正した。


「七海さんの長所と短所を、結乃さん、凛さん、みずきさん、藍さん、それぞれ教えてください。順番は問わないわ。自由に私たちに教えてちょうだい」


 校長先生の質問からそこまで間を置かず、結乃がすっと手を挙げた。


「はい、結乃さん」

「七海ちゃんの長所は、美人でかわいいところです!」

「いやそこ!?」


 結乃の回答に藍が思わずツッコミを入れる。俺も思わず心の中でずっこけた。面接官3人も予想外の回答だったようで思わず吹き出してしまっている。


「だって実際そうでしょ?テレビに出てるアイドルより十分かわいいよ。私七海ちゃんに初めて会ったとき、あまりにかわいくて一目惚れしちゃったんだから!」

「いやかわいいのは否定しないけど、もっとなんかあるだろ……?」


 俺の頭の中には、緑山駅で2人が初めて会ったとき、結乃が七海に抱き着いている光景が昨日のことのように浮かんでいた。


「ふふ。ありがとう結乃さん。とても素直でいい答えだわ。じゃあ短所はどうかしら?」


 校長先生が微笑みながら訊ねると、結乃は「う~ん」と少し唸って答える。


「短所は……漫画の話になると止まらなくなるところ?」

「それ結乃ちゃんが言う!?」


 七海も耐え切れなかったようで思わず結乃にツッコミを入れる。結乃と七海が漫画の話題になると、横から止めるまで延々と続くのは俺もよく知っている。けれど結乃は全然悪びれず、むしろ笑みを浮かべて続けた。


「でも、私も漫画が大好きだから、七海ちゃんと一緒に話してると本当に楽しいんです。止まらなくなるのも、私にとっては一緒に楽しませてもらってるということなので、違う角度から見れば長所かもしれません」

「なるほど、2人で談義する様子がなんとなく想像できるわ」

 

 校長先生がくすりと笑う。神崎理事長や瀬戸さんもつられて口元を緩め、場の空気が和やかに揺れた。七海は頬を染めて「もう、結乃ちゃん……」と小声で呟くが、その目元は嬉しさを隠しきれていない。


「じゃあ次は……凛さん」

 

 促されて、凛が小さく手を上げる。


「七海ちゃんの長所は、努力家なところです。ピアノもバレエも、この1年はそれに加えて受験もあって、本当に大変なのに、一度も投げ出さないで続けていて……私にはできないなって、いつも尊敬しています。短所は……」


 凛は少し視線を落として続ける。


「がんばりすぎること、です。自分が苦しくても、心配かけないように隠してしまうんです。だから、抱え込みがちなところがあると思います」


 七海は小さく「あ……」と声を漏らし、耳まで赤くなっていく。


「私からもいいですか」


 みずきが真っすぐ手を挙げた。


「七海ちゃんは芯が強い子です。私たちが緊張しているときも、はっきり言葉にしてみんなを支えてくれます。今朝だって、受験で緊張している私たちをすごく力強い言葉で落ち着かせてくれました」


 今朝の出来事を思い出しながらみずきの回答を聞く。

 

「短所は……やっぱり凛ちゃんと同じで、無理しがちなところ。周りを励ます分、自分のことを後回しにするから……」

「そうそう!」


 藍がすぐに続ける。


「七海は自分が苦しいときでも、ほかの人への配慮を絶対に忘れないんです。そこは長所でもあるけど、こっちから見ると『もっと自分を大事にしてくれ』って思うことがあります」

 

 藍は真剣な眼差しで言葉を結んだ。


「……あ、ありがとうございます……」


 七海は俯きながら蚊の鳴くような声で答えた。頬も首筋も真っ赤で、耳の先まで熱が伝わっているのがわかる。


「ふふ、みんな七海さんをとても信頼しているのね」


 神崎理事長が目を細める。

 

「ええ。こんなに褒められたら、七海さんも照れちゃうわね」


 校長先生の軽口に、七海は「……もうやめてください……」と顔を両手で覆った。

 その姿に場がまた笑いに包まれた。けれど、俺は見逃していなかった。みんなに照れながらも、七海の表情がどこか誇らしげに緩んでいるのを。

 校長先生は前に置かれた紙にさらさらと文字を書き込み、それが終わると「うん」と小さく頷いた。


「ありがとう。みんなのことがよくわかったわ。じゃあここからは史佳さんにバトンタッチするわね」

 

 校長先生から指名された瀬戸さんはティーカップを置き、まっすぐに5人を見据えた。その瞳に、ほんの少し悪戯めいた光が宿る。


「それじゃあここからは私から、3つ質問させてもらうわ。今までとはだいぶ毛色が違うから注意してちょうだい?」

 

 その声は柔らかいのに、どこか試すような響きを帯びていた。5人に瞬時に緊張が走る。


「最初の質問。もし、隆一くんが犯罪を犯したら、あなたたちはどうする?」

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