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強くてニューゲームはハーレムを確約する  作者: 岩瀬隆泰
第5章 小学5年
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5-11.復讐、そして決意⑧

「わかってもらえたと思うけど、隆ちゃんと一緒に蒼嶺学園で学校生活を送るためには、とても高いハードルがあるの。最終的な判断は隆ちゃん次第だけど、もしみんなが隆ちゃんを推薦するなら、隆ちゃんは絶対に受験してくれる」


 七海の話を一同は黙って聴いている。七海の隣にいたレオが起き上がり、七海の膝の上に移動して再び丸くなる。


「でももし、みんなの負担が大きすぎて自信がなければ、私は無理にとは言わない。みんなを苦しませることはしたくないから。そうなったら私も隆ちゃんを推薦しないで、一般選抜試験で受験する。もともと私としては隆ちゃんがいる、いないに関わらず蒼嶺学園へ入学するつもりだし、そうなったからといって、みんなと離れ離れになるわけでもないから」


 七海としては、もし結乃たちの許しがあれば、自分1人でも隆一を推薦する覚悟はあった。しかし、仮に結乃たちから許可が出たとしても、進学先を結乃たちと一緒の地元の公立中学にするか、蒼嶺学園にするかで隆一自身が確実に悩んでしまう。七海はそこまでして自分のわがままにみんなを付き合わせたくないと考え、1人で隆一を推薦するという選択肢を最初から除外していた。


「でも、わがままを言わせてもらうと、私は隆ちゃん、結乃ちゃん、凛ちゃん、みずきちゃん、藍ちゃんのみんなと一緒に同じ学校へ通って、同じクラスで学校生活を送りたい。こんなチャンスは中々ないと思うし、私自身、ずっと夢見てたことだから。でも、もし推薦に失敗しても、私は一切後悔しないし、誰かを責めるなんてことは絶対にしない。頼んだのは私だし、そんな資格もないから」


 七海は1人1人と目を合わせながら、力強く自分の思いを口にする。膝の上で丸くなっているレオの背をそっと撫でながら、もう一度、みんなの顔を見渡した。


「わがまま言ってるのはよくわかってる。いじめのことで助けてもらったばかりなのに、今度はこんなお願いまでして……でも、それでも……みんなと一緒に行きたいって気持ちは、どうしても諦められないの。だから、私と一緒に隆ちゃんを推薦して、蒼嶺学園を受験してください。お願いします!」


 七海が姿勢を正し、深々と頭を下げて改めて結乃たちに受験を頼み込む。目をギュッと瞑り、体を震わせながら結乃たちの返答を待っていると、誰かに肩を抱かれる感覚を覚えた。


「大丈夫だよ、七海ちゃん。みんなで同じクラスで学校生活を送りたいのは、私たちも同じだから」


 みずきの声に顔を上げると、自分の肩を抱くみずきを含めて、全員が吹っ切れたような笑顔で七海を見つめていた。


「私やるよ」


 みずきは七海の肩に添えた手に少しだけ力を込めると、真っ直ぐな瞳で七海を見つめながら言う。その言葉に、七海は驚いたようにみずきを見上げる。


「もちろん、不安がないって言ったら嘘になるし、全部乗り越えられるか自信はない。でも……それでも、やりたいって思ったの」


 みずきは少し息を吐き、視線を結乃たちにも向けながら続ける。


「私、ずっとみんなに助けられてばっかりだった。でもいつも支えてもらってるのに、自分からみんなに何かしてあげられたことって、まだ何もないなって思って。だから、今度は私がみんなのそばにいて、みんなを助けたいんだ。もし、同じ学校に行けたら、それがきっと叶うよね?」


 みずきは七海の手をぎゅっと握りしめた。


「七海ちゃんにも、たくさん助けてもらったから……今度は私が、一緒に受験して合格することで恩返しする。だから、覚悟決めたよ!」


 その力強い言葉に、七海の瞳がじんわりと潤む。


「私も受けるよ」


 藍の宣言を受けて、七海が藍の方に顔を向ける。

 

「実は、前々からずっと引っかかってたんだけどさ……」


 藍はそう言うと、視線を少し下に落とした。


「もし予定通り公立中学に行くなら、私は隆と結乃たちと同じ中学へ進むことになる。でも私だけが隆たちと一緒の学校になって、七海だけが別の学校って……七海だけ仲間外れにしてるみたいでモヤモヤしてたんだ。いじめのことだって、私は最後にちょっと乗り込んだくらいで、そこまで役に立てたわけじゃないしな」


 藍は照れくさそうに頭をかきながら続ける。


「でも、こうすれば七海も一緒にいられるんだろ?だったら断る理由はないよ!」


 藍はニッと笑い、七海の肩をポンと叩いた。


「私も受験するよ」


 凛が七海を見つめながら言う。


「私も七海ちゃんと同じ。みんなで合格して、同じクラスで過ごしたいから。それにね……」


 凛は少し考えるように視線を落とし、言葉を選びながら続けた。


「共学化に反対してる人たちって、たぶん理由はいろいろあるんだろうけど……きっと、男子に対して何かしらの負の感情があるんだと思うの」


 その言葉に、結乃たちが静かに耳を傾ける。


「女子校だった環境が変わることへの不安もあるだろうし、男子がいることで学校の雰囲気が変わるのを嫌がる人もいるかもしれない。でも、少なくとも私は、男子だからってだけで、隆くんがそういう目で見られるのは絶対にいや」


 凛の言葉には、強い意志が込められていた。


「共学化に反対する人たちに、男子が全員いやなやつばかりじゃないってことを証明したい。少なくとも、隆くんは違うってことを」


 そう言い切ると、凛は七海に向かって優しく微笑んだ。


「……確かに、隆くんがそんな風に思われるのは癪だな」


 凛の言葉を受けて結乃が同調する。


「だってさ、隆くんは誰よりも優しいし、私たちのことをちゃんと見てくれるし、困ったときは必ず助けてくれる。そんな隆くんが、『男子だから』ってだけでネガティブに見られるのは納得いかないよ」


 凛はもちろん、七海、みずき、藍も頷きながら結乃を見つめる。


「七海ちゃんが勇気を出してお願いしてくれたんだから、私もちゃんと応えようと思ったけど、これは隆くんのためにも頑張らないといけないね!」


 結乃はそう言うと、膝をパンッと叩いて姿勢を正した。


「七海ちゃんと隆くんのためにも一緒に頑張ろう!みんなで合格して、同じクラスで過ごそう!」

「うん!」

「やるぞーっ!」


 結乃の宣言に凛とみずきが力強く頷き、藍は勢いよく拳を上げた。


「みんな……ありがとう……」


 七海は頬を伝いそうになった涙をそっと指で拭う。そして5人は互いの顔を見合いながら微笑むのだった。


 


「……」


 俺は七海から渡された蒼嶺学園の案内冊子を眺めながら考える。

 午後になってから、七海から「女の子たちだけで話がしたい」と言われて自室で待機してから1時間。女子たちに呼ばれて遊び部屋に入り、そこで切り出されたのが蒼嶺学園の受験だった。


「どうかな、隆ちゃん……?」


 遠慮がちに七海が俺に問いかける。後ろでは結乃たちが緊張の面持ちで成り行きを見守っている。俺は冊子から視線を上げ、七海を見た。


「みんながそこまで本気で考えてくれたんだ。俺に断る理由なんてないよ」


 そう言うと、七海の表情がぱっと明るくなり、結乃たちも安堵の息を漏らした。


「ただし、1つ忘れちゃいけないことがある」


 俺は冊子を閉じ、みんなに向き直る。


「俺たちが受験したいと思っても、親の説得をクリアしないとどうにもならない。私立に通うってことは、公立よりもお金がかかるからな」


 その言葉に、みずきが「確かに……」と眉をひそめ、凛も真剣な顔つきになった。


「学費のことも考えないといけないってこと?」

「そうだ。蒼嶺学園には授業料が免除される特待生制度もあるみたいだから、そこを狙うっていうのも1つの方法だな」

「特待生……」


 七海が小さく呟くと、結乃がすぐに前向きな声を上げた。


「それなら、なおさら勉強を頑張らないとね!」


 七海はしばらく考え込んでいたが、やがて力強く頷いた。


「……私も、提案した以上は、ちゃんと責任を持つよ。みんなのご両親を説得するの、私も手伝うから!」


 七海の言葉に、俺は「頼もしいな」と思わず微笑む。


「それともう1つ。七海、友加里にはこの話、もうしてるのか?」


 俺が訊くと、七海はすぐに「うん」と頷いた。


「もう話したよ。友加里ちゃんも受験するって。でも……隆ちゃんの推薦はしないって言ってた」


 七海は少し申し訳なさそうな顔をして続ける。


「推薦がいやってわけじゃなくて、自分の学力じゃそこまでやる余裕がないって……それで、隆ちゃんに謝っておいてって頼まれたの」

「なんだ、そんなことか。全然気にしてないって伝えてくれ」

 

 俺の返答に七海はぱっと顔を上げ、安心したように微笑んだ。 

 

「よかった……じゃあ、ちゃんと伝えておくね。それから、友加里ちゃんもみんなと同じクラスがいいから、特別クラスへの編入には同意するって」

「じゃあ友加里ちゃんも合格したら同じクラスになれるね!」


 七海の言葉にみずきが嬉しそうに重ね、結乃たちが微笑む。


「よーし、じゃあ私たちも負けてられないな!」

「うん、みんなで頑張ろう!」


 藍と結乃の言葉に、全員が力強く頷く。七海は涙を滲ませながら「ありがとう」と何度もお礼を言い、みんなに抱きしめられていた。


 転生前の七海も、中学受験をして私立中高一貫校に入学している。七海が中学受験する話をお袋から聞いたのも、確かに今の時期くらいだった気がする。しかし当時の彼女が入学したのは、蒼嶺学園とは別の共学校だった。

 ただ受験校が別でも、時期を考えると、やはり転生前の七海も小学校で嫌な思いをしたのではないかと思わずにはいられない。転生前の七海の受験動機は今となっては知る由もないが、少なくとも中高時代は楽しく過ごせていたようだ。今ここにいる七海も、そして結乃たちも、中高時代は幸せだったと後で振り返られるようにしてやりたい。俺は七海たちを見つめながら静かに誓った。



 

 その後、七海の努力もあって、俺たち全員の両親への中学受験の説得は無事に成功した。難色を示される覚悟をしていたが、意外にもあっさりと「みんな一緒なら安心だし、応援する」と背中を押してもらえた。こうして、俺たちは正式に蒼嶺学園受験に向けて動き出した。

 七海の学校では、七海の復帰に合わせて予定通りに臨時のクラス替えが実施され、あかね、桃子、萌は別のクラスへ、代わりに友加里が七海のクラスへ編入された。また復帰当日に、あかね、桃子、萌を除く七海のクラスの女子全員が七海に謝罪した。七海はこの謝罪を受け入れ、和解。今のところ、友加里の目が光っていることもあってか、大きな問題は発生していない。ちなみにクラスの男子たちは、誰もいじめに気づいていなかったという。

 そして、七海の学校で予定されていた開校100周年記念式典も、予定通り開催された。七海のクラスでは、式典のプログラムのひとつとして合唱発表があり、当初ピアノ伴奏を務める予定だったのは、いじめの首謀者であるあかねだった。しかし、あかねはまだ謹慎中で式典にも出席できないため、代役として七海が伴奏を務めた。七海は本番で完璧な演奏を披露し、保護者たちや来賓からも賛辞の言葉を受けたという。


「あの花の髪留めが誇らしげに光っていたよ」


 幸雄さんからのメールの文面を読みながら、俺は七海が演奏する姿を想像し、感慨に浸るのだった。

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