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強くてニューゲームはハーレムを確約する  作者: 岩瀬隆泰
第5章 小学5年
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5-7.復讐、そして決意④

 火曜日の夕方、片山家の電話が鳴った。受話器を取ると、電話の向こうから七海の声が聞こえる。


「隆ちゃん?私、七海だよ。友加里ちゃんも一緒にいるの」

「こんばんは!隆一くん」


 七海の声に続いて友加里の声も聞こえた。俺はすぐに用件を察し、受話器を握り直した。


「もしかして突き止めたのか?」

「うん!間違いないと思う」


 友加里の声に確かな手応えが感じられた。俺は視線を鋭くしながら、続く友加里の言葉に耳を傾ける。


「現場はね、校舎の3階から屋上に通じる階段の踊り場。授業の合間とか休み時間とかに、あかねがそこで何人かの子を呼び出して話してるのを何度か見たの」


 俺の予想通りだった。いじめの指示を出すなら、教室のように人目につく場所ではなく、少しでも隠れた場所を選ぶはずだ。


「なるほどな。そこに隠しカメラを仕掛けるとして、隠せそうな場所はあるか?」

「あるよ。踊り場の脇にダンボールがいくつも積まれてるの。先生たちもほとんど気にしてないみたい。誰も片付けたりしないし、カメラを仕掛けるなら絶好の場所だと思う」


 それなら問題なく設置できそうだ。友加里の報告に俺は軽く息を吐く。


「ありがとう。じゃあそこに仕掛けよう。設置と回収は、もし難しそうなら俺がやるけど」


 友加里が設置できるならそれに越したことはないが、さすがに小学生ひとりでやらせるのは荷が重いかもしれない。そう考えていると、友加里が続けた。

 

「それなら大丈夫!お姉ちゃんに協力してもらうから」

「お姉ちゃん?」


 友加里の言葉を俺は繰り返す。

 

「うん、明里(あかり)っていう私のお姉ちゃん。1つ上の6年生なんだけど、七海のことをすごく心配してて『何かあったらお姉ちゃんも力になるから』って言ってくれてるの」


 なるほど、6年生の協力が得られるなら、それは大きな戦力になる。しかし、七海は少し戸惑ったように言った。


「明里お姉ちゃんにまで迷惑かけられないよ……」

「そんなことないよ七海。お姉ちゃんは自分から手伝うって言ってくれてるんだから、頼らないと逆に申し訳ないでしょ?」


 友加里の説得に、七海は黙り込んだ。しばらくして、小さく「ありがとう」と呟く。俺は明里さんの申し出に感謝しつつ、電話口の向こうの2人に伝えた。


「ありがとう友加里。明里さんにもよろしく伝えてくれ。こっちも明日までに、踊り場用の隠しカメラを用意しておく。設置の準備が整ったら、また連絡する」

「うん、わかった!」

「ありがとう、隆ちゃん」


 七海と友加里の声を聞き、俺は電話を切った。そしてその足で、踊り場用隠しカメラの構成を頭の中で練りつつ、自室へ向かった。




「こんばんは。あなたが隆一くんね。はじめまして。友加里の姉の明里よ」


 翌日の水曜の夕方。俺たちは再び春野家を訪れていた。今回はみずきも参加している。七海の部屋に入ると、友加里の隣に座っていた友加里の姉、明里さんが俺の方へ来て挨拶してくれた。顔立ちは友加里とそっくりだが、ロングヘアで、友加里より数センチ身長が高い。


「はじめまして。今回は七海のためにありがとうございます」

「ううん。私にとって七海ちゃんはもう1人の妹だもの。七海ちゃんのためなら何でもするわ」


 そばにいる七海を抱き寄せながら明里さんは言う。続けて結乃たちとも挨拶を済ませた後、俺たちはテーブルを囲んで着座した。


「これが、階段踊り場用の隠しカメラです」


 俺は懐から、昨晩徹夜で作り上げた隠しカメラをテーブルに置いた。一昨日、春野家で披露した携帯端末の隠しカメラに、別の機器がコードで接続されている。


「これって携帯電話と、ICレコーダー?」

「そうです」


 明里さんが興味深そうにカメラを覗き込みながら訊ねる。俺はそれに返答すると、ICレコーダーのスイッチをONにした。


「ICレコーダーのスイッチを入れると、レコーダーとカメラの両方の電源が入ります。レコーダーはスイッチを切らない限りずっと録音を続けますが、カメラは違います。カメラが録画を開始するのは、レコーダーが一定の音量を超える音を感知したときだけです。そして、録画が始まった後、その音が10秒途切れると録画がストップする仕組みになっています。試しに、10秒間無音にしてみましょう」


 俺は口の前に人差し指を立てながら全員に無言を促す。そして10秒後、カメラの緑のランプが消灯する。


 パンッ!


 消灯して少し経ってから俺が手を叩くと、再び緑のランプが点灯する。


「今再び録画がスタートしました。先ほどの静かな時間の分は録画されていないはずです」


 俺はそう言ってICレコーダーの電源を切り、カメラの中からSDカードを取り出して持参したノートパソコンで読み取る。そして中に保存されていた動画を再生させる。


「すごい……ちゃんと音がない部分は録画されていないのね」


 明里さんを筆頭に女子陣が興味津々で動画を見つめる。

 

「隆一くん、君本当に小学生?」

「もちろん。れっきとした11歳さ」


 うがった視線を俺に向けながら言う友加里に俺は答える。もちろん、間違ったことは言ってない。転生前の経験と神様チートで底上げされた能力を持ち合わせてはいるが。

 

「とにかく、これなら踊り場に仕掛けるだけで、電池を無駄にすることなく、必要なタイミングで録画できるわけね」

「そういうことです」


 俺はSDカードから先ほどの動画を削除してパソコンを閉じ、SDカードをカメラに戻した。


「これで全ての準備が整いました。後はいつ作戦を開始するかを決めるだけです」


 俺の言葉に全員が息を呑む。俺は七海に視線を向けた。


「七海、どうする?学校に行くのは、もう少し待つか?」


 七海は一瞬だけ考えた。しかし、次の瞬間、強い意志を宿した瞳で俺を見据えた。


「……明日、行く」


 その言葉に、友加里が「えっ」と目を見開く。隣の明里も、少し驚いたように表情を動かした。


「七海、本当に大丈夫?」


 友加里が心配そうに問いかける。


「無理しなくていいんだよ。まだ準備期間を作ってもいいんだから」


 明里さんも慎重な口調で言う。しかし、七海は静かに首を振った。


「大丈夫。だって、こんなに心強い味方がいるんだもん。もう何も怖くないよ」


 七海の言葉に、女子陣全員が表情を引き締めた。


「……よし、じゃあ明日から作戦開始でいいな?」


 俺が皆を見渡すと、全員が「うん!」と力強く頷いた。


「七海、国語辞典と習字道具を借りるぞ」

「うん」


 俺は七海の許可を得て、国語辞典と習字道具入れにカメラを仕込む作業を始めた。そしてその作業をしながら、作戦の全容、各々がするべきことを再確認する。早ければ明日1日で、必要なものを全て揃えられる。そうなることを祈りつつ、俺は手と口を動かすのだった。




「七海ーっ!」

「友加里ちゃん?どうしたの?」

「ちょっと会いに来ちゃった!だってさ、今日から復活したんでしょ?」

「うん、みんなが支えてくれたから。友加里ちゃんのおかげでもあるよ」

「どういたしまして!あ!その髪留め、すごく可愛いじゃん!キラキラしてる!」

「あ、これ?これはね、緑山に住んでる友達からプレゼントしてもらったの。私の宝物なんだ」

「えー!めっちゃいいじゃん!ちょっと見せてもらってもいい?」

「うん、もちろん!」

 カチャッ。

「わぁ~、めっちゃ綺麗!こんなのもらえるなんて、七海、愛されてるねぇ!」

「えへへ、大切な友達だからね」

「いいなぁ~、私もこんな素敵なプレゼントほしいなぁ……あっ!そうだ!私もこの間友達にもらったお気に入りのペンがあるの!ちょっと見にきてよ!」

「え、今?」

「うん!私のクラスに置いてあるんだけどさ、一瞬でいいから!ほらほら、行こっ!」

「えっ、ちょ、ちょっと待って……!」

 カランカラン……

 タタタッ……


「クスクスクス」

 ガタッ。コツ、コツ、コツ……

「……ふふっ」




 木曜日の夕方、俺は結乃と凛を連れて再び春野家を訪れた。インターホンを押すと、すぐに玄関の扉が開き、七海が顔を出す。


「隆ちゃん、結乃ちゃん、凛ちゃん……」


 七海の顔には疲れが滲み、声は少しかすれていた。当然だ。今日、彼女は1日中、学校で気を張っていたに違いない。無意識に溜まった気疲れが表に出てきているのだろう。


「どうだった?何かされたか?」

「ううん。今日は大丈夫だった」


 七海の言葉に俺は一旦胸を撫でおろす。まだ復帰初日だから相手も様子を見たのだろうか。またいじめの被害に遭う可能性が十分にあった中で、何もなかったのは幸いだった。

 俺たちは靴を脱ぎ、すぐに七海の部屋へ向かった。テーブルにはすでに、友加里と明里も着座して待っていた。そしてその上には国語辞典、習字道具入れ、ICレコーダー付き隠しカメラも置かれていた。


「七海ちゃん、よく頑張ったね」


 結乃が七海の隣に座りながら、優しく声をかける。七海は少し照れくさそうに笑いながらも、小さく頷いた。


「カメラ、ちゃんと回収できたんだな」

「うん。先生や他の子にバレないように、お姉ちゃんと一緒にやったから」


 俺の言葉に友加里が答える。

 

「助かった。ありがとう、友加里。明里さんもありがとうございました」

「ううん。これくらいどうってことないわ」


 友加里と明里さんにお礼を言うと、明里さんは笑顔で答えた。


「じゃあ、早速確認しよう」

 

 俺はそう言うと、国語辞典と習字道具入れから隠しカメラを取り出し、そこからSDカードを抜き取る。さらにICレコーダー付き隠しカメラからもSDカードを抜き取った。そしてまず、国語辞典に仕込んだ隠しカメラのSDカードを持参したパソコンに差し込んだ。画面にデータの一覧が表示されると、俺はファイルを順番に開いていった。


「再生するぞ」


 そう言うと、七海の周囲にいた女子陣が息を呑み、画面を覗き込む。俺は再生速度を上げながら、要所をチェックしていく。そして、あるものが映り込んだものを見て、俺は指を止めた。


「……これ」

「うん……証拠、取れたね」

 

 結乃が小さく呟くと、友加里が険しい表情を浮かべながら重ねる。


「もう1つの方も見てみよう」


 俺は習字道具入れに仕込んだ隠しカメラのSDカードをパソコンに差し込み、動画を再生する。そこには、先ほどよりもより近い視点での映像が収められていた。声も先ほどより鮮明だ。


「……会話もばっちりね」

「うん。うまくいってよかった」


 明里の言葉に友加里が答える。まずは第一関門突破だ。


「よし。今度は踊り場のカメラだ」

 

 今度は、友加里と明里さんが屋上に向かう階段の踊り場に仕掛けたICレコーダー付き隠しカメラだ。SDカードを差し込み、動画を読み込む。


「ファイルがいっぱいある……」

「学校のチャイムや、廊下を歩く生徒たちの足音や声に反応したんだな」

 

 動画ファイルが1つだけだった先ほどの2つのカメラとは違い、こちらには20個ほどの動画ファイルが保存されていた。そのほとんどは1分以下の短いものだったが、いくつか再生時間が数分、中には10分を超えるファイルがあった。


「これだ」


 確信とともに、俺はそのうちの1つのファイルを開いて再生した。すぐさま踊り場の様子がパソコンの画面に映し出される。音声もしっかり拾えている。


「……」

 

 誰も何も言わないが、動画が進むにつれてその場の空気が張り詰めていくのがわかる。


「……ひどい」

「こんな……こんなの、絶対に許しちゃダメだよ……」


 結乃はこぶしを握りながら、凛の声は震わせて動画を見続ける。友加里と明里さんは表情を強張らせながら、涙目の七海の肩を抱いていた。


「……完璧だ」


 俺は動画を再生し終えた画面を見つめながら、口角をわずかに上げた。


「決定的な証拠が手に入った。七海、もう大丈夫だ」


 その言葉を聞いた瞬間、七海の周囲にいた女子陣が一斉に七海に抱きついた。


「よく頑張ったね……!」

「七海ちゃん、本当に良かった……!」

「もう大丈夫だから……もう、怖い思いしなくていいからね」


 七海は驚いたように目を瞬かせたが、すぐに小さく笑った。


「……うん」


 俺はその光景を静かに見守りながら、改めて言った。


「七海、あとは俺が手筈を整える。それまではまた学校を休むこと。いいな」

「うん、わかった」


 七海は俺をまっすぐ見つめ、力強く頷いた。

 いよいよ作戦が佳境に入った。あとはやつら完膚なきまでに懲らしめるだけだ。俺を怒らせたらどんな目に遭うか、思い知らせてやる。

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