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強くてニューゲームはハーレムを確約する  作者: 岩瀬隆泰
第5章 小学5年
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5-2.肝試し②

 学校の敷地には、北側に校舎が南向きに、北西側に体育館が、南西側にはプールが建っている。校舎は3階建てで、東校舎と西校舎の2つに分かれている。東校舎には各学年の教室、西校舎には理科室、音楽室などの教科ごとの教室が揃っている。

 最初に玄関がある東校舎1階からスタートし、2階、3階を探索、渡り廊下から西校舎に移って3階、2階、1階と降り、外の渡り廊下から体育館へ向かい、最後にプールを探索して終了、というルートだ。

 東校舎の玄関には当然鍵がかかっていたため、予め開けておいた窓から京平が侵入し、玄関の鍵を開けて一行は東校舎に入った。

 

「いとこの学校だと、4年1組の教室は夜になると幽霊の教室になるらしいぜ」

 

 そんなことを言いながら、懐中電灯を持った京平が先頭に立って進み、その後ろを広輔と陽太、結乃と紗奈、最後尾に凛とみずきと彩香が続く。玄関から2階までは特に何もなく、一行はそのまま5、6年生の教室がある3階へ上がり、自分たちの教室に到着した。

 

「凛、宿題があるか確認しましょう」

「うん」

 

 彩香、みずきとともに凛は自分の机に向かい、その中を探る。

 

「……あ!あった!」

「良かったぁ」

 

 お目当てのプリントを見つけ、凛とともにみずきも自分のことのように安堵し、彩香も少し表情を緩めた。

 

「……」

「……ゆ、結乃?どうしたの?」

 

 不意に教室全体を見渡し始めた結乃。それを見た紗奈が結乃に問いかける。

 

「何だ何だ!?何かあったか!?」

 

 その紗奈の問いかけに京平がすかさず反応する。残りのメンバーも一斉に結乃の方に顔を向ける。

 

「あ、ううん!何でもない。ただ、いつも見ている教室も夜だと全然雰囲気違うなあって思って」

 

 2人に問いかけられ、少し慌てた様子で返答する。

 

「なんだあ、何か起きたかと思った」

「まあ確かに、夜の教室なんて普通来ること無いしな」

 

 京平があからさまに残念がり、広輔が賛同する。

 

「よし、じゃあ探索を続けよう」

 

 陽太の一言で一行は自分の教室を離れ、探索を再開した。

 

「……」

 

 結乃が去り際に教室内を一瞥したが、それには誰も気づかなかった。




 結局東校舎は特に問題なく、一行はそのまま3階の連絡通路から西校舎へ向かことにした。西校舎の3階には理科室と家庭科室がある。

 

「理科室の人体模型は要チェックだな」

 

 京平がそう言いつつ西校舎3階を探索したが、ここでも何も発見することはできなかった。

 

「理科室と家庭科室も問題なしだったな」

「い~や、まだ調べる場所はある。絶対に何かしら見つけてやるぜ!」

 

 広輔の言葉に京平が力強く答える。最奥にある家庭科室の探索を終えた一行は、2階に降りるため階段へ向かう。

 

「2階は図工室と音楽室だな」

「そう!俺の本命はそこ!石膏像に肖像画もあるからな。いとこの学校でも」

「!」

 

 2階に降りる西校舎の階段の手前まできたそのとき、不意に広輔が立ち止まり、正面を見たまま固まる。

 

「どうした?広輔?」

 

 陽太が広輔に訊ねる。

 

「……俺ら、6年2組の、教室の引き戸、ちゃんと閉めた、よな……?」

 

 広輔が確かめるように言う。

 

「ああ、そのはずだけど……」

 

 広輔の言葉に陽太が答えると、広輔はゆっくりと正面を指さした。

 

「……じゃあ、なんで、今は、開いてるんだ……?」

 

 広輔が指さした先に京平が懐中電灯の明かりを向ける。すると、短い連絡通路の向こうにある6年2組の教室の引き戸が照らされる。

 

「!」

 

 確かに教室前方の引き戸がわずかに開いている。さっき6年2組の教室を確認し、出る際に引き戸を閉めたにも関わらず。

 

「……」

 

 その場にいる全員が、何かに縛られたかのようにその場から動けなくなる。急に心臓の鼓動が早くなり、冷や汗が背中を伝い始める。

 

「いや、いやいやいやいやいや。んなわけねえってあり得ねえって!あれだよ!あれ!閉めたと思ったけど閉め忘れたんだよ!そうだ!絶対そうだ!」

 ドン!

「!?」

 

 上ずった声でしゃべりながら現実逃避する京平の希望を打ち砕くように、6年2組の引き戸の向こうから大きな音が響く。

 

 ドン!ガタン!ガタガタ!

「な……な……」 

 

 教室の中から聞こえる音に京平たちは聞き覚えがあった。勉強机の脚と床が擦れる音、教卓に物がぶつかる音、自分たちがふざけて壁にぶつかる際の音……それらが絶え間なく教室の中から響き続けている。

 

 ガタン!ガン!!

「「「うわあああああああああああああああああ!!!!!!」」」


 そして、引き戸が大きな音を立ててひとりでに閉じられた瞬間、京平たちは大声を上げていた。




 カタカタカタ。

「よし!走った!Cは大分組めるようになってきたかな」

 

 今年から本格的に再勉強をスタートさせたプログラミングだが、神様チートの恩恵もあり、開始して3ヶ月で大方組めるようになってきた。流通しているCPUやメモリのスペックがもう少し上がってきたら、Pythonを使ったWebスクレイピングとかもやってみようと考えている。

 

 ピンポーン。

 

 ん?インターフォン?

 時間は夜の7時過ぎ。来客にしては遅い時間帯だ。配達だろうか?しばらくすると、誰かが階段を小走りで上がってくる音が聞こえてきた。

 

 コンコン。

「隆ちゃん!広輔くんたちよ!」

「広輔?」

 

 「たち」ってことは複数か。あれか。肝試しの帰りに立ち寄ったのか?

 お袋の声が少し焦っているように聞こえたのが気になりつつ、2階の自室から玄関に向かうと、広輔、陽太、京平の3人がいた。

 ただ、様子がおかしい。顔は完全にひきつり、呼吸を荒げてまともに立っていられず、その場にへたり込んでいる。

 

「どうしたんだお前ら?」

「ハァ、ハァ、ハァ、で、出た」

 

 必死で息を整えながら、広輔が言葉を絞り出す。

 

「出た?」

「幽霊だよ!幽霊!間違いなくポルターガイストだ!」

 

 広輔の言葉をオウム返しすると、京平が捲し立てるように話す。

 

「6年、2組の、教室から、音が、聞こえたんだ。誰も、いない、はずなのに。引き戸が、勝手に閉まって、それで、びっくりして、夢中で、走って、ハァ、ハァ」

 

 陽太が当時の状況を詳しく説明する。原因はともかく、要は得体の知れない現象と遭遇してここまで走って逃げてきたってことか。

 ……あれ?

 

「肝試しに行ったのはお前ら3人だけか?」

「いや、女子たちも一緒だった」

 

 少し呼吸が落ち着いてきた広輔が答える。

 

「女子たちはどこにいるんだ?」

 

 玄関にいるのは3人だけ。確か結乃、紗奈、彩香の3人も肝試しに参加していたはずだが、ここにはその姿が無い。

 

「へ?あ、あれ?いない?」

 

 広輔が今気づいたかのように後ろを振り返る。もちろん、そこには陽太と京平以外誰もいない。

 

「ヤツと出くわしたときまでは、いたはずだけど」

「ついてこれなくて離れちゃったか?みずきちゃんならついてこれると思うんだけど」

 

 マジか。こいつら自分が逃げるのに夢中で、女子たちがついてきているか確認できてなかったってことかよ。

 ……みずき?

 

「ちょっと待て、みずきは不参加だったはずだろ!?」

「凛ちゃんが学校に宿題を忘れて、それを取りに2人で学校にやって来たんだ」

「てことは凛も一緒だったのか!?」

「ああ」

 

 最悪のケースが頭をよぎった瞬間、俺は頭をフル回転させて今すべきことを考えた。

 

「ここへ来たルートはいつもの俺の通学路だな?」

「うん、そう」

「どこから学校の敷地に入った?」

「正門から入った」

「出たのも正門か?」

「いや、裏門から出た」

「どこから校舎に入った?」

「東校舎の1階。廊下の一番端の窓から」

「はぐれたのは凛、みずき、結乃、彩香、紗奈の5人で間違いないな?」

「ああ」

 

 俺は確認を終えると自室に戻り、必要なものをショルダーバッグに詰め、それを持って再び玄関へ向かう。

 

「母さん、父さんに学校の裏門まで車で来るように伝えて」

「え?」

「あと、凛たちの家にも連絡を入れて、ウチに来るように伝えて」

「え、ちょっと、隆ちゃん!?」

 

 お袋が呼び止めるのを聞かず、俺は家を飛び出した。

 自分の通学路を、懐中電灯を照らしつつ学校へ向けて走る。もし凛たちが学校から脱出しているなら、広輔たちを追って同じ通学路上にいる可能性が高い。だが、その望みは学校の校舎が近づくに連れて薄くなっていく。


「やっぱり校舎内に取り残されたか!」

 

 道中誰にも出くわすことなく学校の裏門に到着。正門は校舎との間にグラウンドがあるが、裏門には駐車場しかないため、校舎へのアクセスは裏門の方が早い。

 広輔たちが開けてそのままであろう、開きっぱなしの裏門から敷地内に侵入し、東校舎へ向かう。


「あそこか!」

 

 広輔たちが言う通り、廊下の一番端の窓が開いていたためそこから校舎内に入る。

 そして、西校舎の階段から一気に3階まで駆け上がって廊下に出ると、俺は目いっぱい声を張り上げた。

 

「おーーい!俺だ!隆一だ!誰かいるかあ!?」




「ひっく、ひっく……」

「うう……」

 

 凛たちは隆一の予想通り、校舎内に取り残されていた。凛と紗奈が腰を抜かしてしまったため、結乃のとっさの判断ですぐ近くの理科室に逃げ込んだのだ。5人は今、理科室の教卓の下に身を寄せ合っている。

 

「大丈夫よ、ここにいれば簡単には見つからないから」

「うう、ゆのぉ……」

「大丈夫、大丈夫」

 

 結乃が紗奈を、みずきと彩香が凛を、時節安心できるよう言葉をかけつつ抱きしめて宥める。

 

(広輔くんたちが無事学校から出ていれば助けが来るはず。もし出ていなくても、私たちがいなくなった異変に家族が気づく。そうすれば、隆くんのところにも……)

 

 結乃は、隆一に自分たちの異変が伝わるまでの流れを頭の中で追う。

 

(隆くん、来てくれるよね……!)

 

 彼なら絶対助けに来てくれる。そう信じた結乃が、心の中で彼に問いかけた瞬間だった。

 

 ダンダンダンダン!

「!?」

 

 突如廊下から響く規則的な音。最初は小さかったが徐々に大きくなり、すぐに結乃はそれが誰かの足音だと気づく。その直後だった。

 

「おーーい!俺だ!隆一だ!誰かいるかあ!?」

「隆くん!?」

 

 真っ先に反応したのは凛だった。そしてみずき、結乃もすぐにその声の主が隆一であると確信する。

 

「私が見てくる」

「だ、大丈夫!?」

 

 結乃が廊下に出ようとすると、紗奈が結乃の服を引っ張って呼び止める。

 

「大丈夫。間違いなく隆くんよ」

「おーーい!誰かいないか!いたら出てきてくれえ!」

 

 紗奈を宥めた後、2回目の呼びかけと同時に結乃は理科室の引き戸から廊下に出た。

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