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強くてニューゲームはハーレムを確約する  作者: 岩瀬隆泰
第5章 小学5年
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5-1.肝試し①

「隆さん!肝試しやろうよ!」

「ん?」

 

 ゴールデンウィークが明けた5月初旬の木曜日。学校が終わって早々、広輔が俺に話しかけてきた。


「肝試しって、どこでやるんだ?」

「ここだよここ!」

 

 広輔がすぐ下の教室の床を指さしながら言う。

 

「夜の学校に忍び込んで探検するんだ。今みんなと話をしてるところ!」

 

 広輔が言いながら指さす方を見ると、京平と彩香、紗奈がにらみ合っていた。

 ああ、いつものやつか……

 5年生になり再びクラス替えが行われ、3年生からのメンバーに加えて結乃と紗奈が俺たちと同じクラスになった。ただしその結果、京平が紗奈と衝突する場面がほぼ日常になっていた。俺が頬杖をついて気だるげに様子を見ていると、視線に気づいた京平がこちらに寄ってきた。

 

「なあなあ隆さん!夜の学校七不思議って知ってるか!?」

「七不思議?トイレの花子さんとかか?」

 

 俺は京平の言葉を繰り返す。

 

「そう!俺のいとこが通ってる学校にはその七不思議があるらしいんだ。けどこの学校にはそういう話全然無いじゃん?だから俺たちで夜の学校に忍び込んで、不思議なことが無いか調べるんだよ!」

 

 いとこの話が羨ましくて自分もそういう体験をしてみたい、ってことか。だが、そういう類の噂話を全然聞かないってことは、この学校にはそういう逸話は無いってことじゃないか?

 

「そういう話を全然聞かないってことは、この学校には何も無いんじゃないのか?」

 

 俺は思ったことをそのまま口にする。

 

「実際に調べてみないとわかんないじゃないか!もしかしたら今までずっと気づかれてないだけかもしれないだろ?」

「……まぁそれも一理あるな」

 

 その好奇心と探求心、もう少し別の方向に向けてくれねえかなぁ……などと考えながら返答する。

 

「ほら見ろ!隆さんもあるかもしれないって言ってるぞ!」

 

 このやろう、余計なこと言いやがって……

 京平の言葉に反応した女子たちがすかさず、俺の机の周りに集まる。

 

「隆一くん、本当に七不思議があると思ってんの?」

 

 彩香が品定めするような、かつ半分呆れた目つきで見つめながら言う。

 

「本当にあるとは思ってないさ。実際そういう話は聞かないわけだし。けど本当に誰も気づけていないだけかもしれない、っていう可能性に同調しただけだよ」

 

 軽くため息をこぼしつつ彩香に返答する。

 

「本当にはすぐそこに幽霊がいるけど、俺らには見えてないだけ、なんてこと怪談じゃよくある話だろ?」

 

 俺が適当に指さしながら言うと、すぐそこを避けるように空間ができた。

 

「り、隆くんは、幽霊とか信じてるの?」

 

 凛が少し震えながら問いかける。

 

「いても良いんじゃないか?とは思ってる。悪さする奴はいらないけど、話をしてくれるんだったら昔の話とか聞けて面白そうだからな」

「確かに面白そうだな!武士の幽霊なら江戸時代とか戦国時代の話とか聞けるかも!」

 

 俺の言葉に陽太が納得する。

 

「全然面白くないわよ!大体そんなこと絶対ありえないから!だって幽霊なんているわけないもの!」

 

 ほぼ癇癪を起したテンションで紗奈が反論する。

 

「だから今日確かめてみようつってんだろう?まぁ怖いんなら来なくても良いけどよぉ?」

 

 おそらく怖がっているであろう紗奈に対し、京平があからさまに挑発しながら言う。

 

「な、何言ってんのよ!怖いだなんて言ってないし!いいわ!行ってやろうじゃないの!アンタが変なことしないように見張ってやるんだから!」

 

 ツンデレヒロインさながらの台詞で紗奈が京平に宣戦布告する。

 

「紗奈ちゃんが行くなら私も行こうかな」

「結乃!?」

 

 結乃がまんざらでもない表情で参加表明する。

 

「結乃は来なくていいわよ!こんなくだらないことに無理に付き合う必要ないわ!」

「私は面白いと思うけどなぁ~。それに紗奈ちゃんのことも心配だし」

「結乃……」

 

 結乃が茶目っ気たっぷりに言うと、紗奈は何とも言えない表情で押し黙る。3、4年と同じクラスになったこの2人は、絵をよく描く共通点があり、よく一緒につるむ間柄となった。転生前も、上記の理由でこの2人は仲がよかった。

 

「おお~良いね良いねぇ!なぁ彩香たちも来るだろ?面白いぞ?」

 

 女子2人の参加に調子づいた広輔が彩香たちに話しかける。

 

「全く……くだらないけど行くわ。あんた達だけ行かせたんじゃ心配だし」

 

 呆れと諦めの両方の溜め息をつきつつ彩香が言う。

 

「凛ちゃんとみずきちゃんはどうする?」

「わ、私は怖いのダメから……」

「私も……」

 

 広輔が凛とみずきに訊ねると、正直に辞退を表明した。

 

「え~面白いと思うんだけどなぁ~」

 

 京平が2人の返事につまらなそうに言う。

 

「まあまあ。今の時点でも7人いる。人数としては十分だろ」

「おい、勝手に俺を入れるな」

 

 しれっと俺も肝試しメンバーに加えられていたのでツッコむ。

 

「え?隆さん行かないの?」

「面倒だから行かない」

 

 怖がりな凛とみずきが行くなら心配だからついて行ったかもしれないが、行かないなら行く理由はない。結乃はその点、度胸もあるし、何か問題を起こす質ではないから特段心配してはいなかった。

 

「おいおい隆さん、口じゃ面白いとか言ってたけど、実は怖いんじゃないだろうな?」

「ああそうさ」

 

 俺が即答すると、京平は思わず「へ?」と気の抜けた返事をする。

 

「俺は怖がりで臆病者。だからわざわざ自分からおっかないところへは行かない。それがどうした?」

 

 早く面倒事から解放されたかった俺は、あえて京平の挑発に乗っかってやり過ごそうとした。

 

「いや隆さん絶対怖がってないよね」

「いいよいいよ、放っとこう。あっちで計画立てようぜ。あ~あ、隆さんが怖がりだったなんて知らなかったな~」

 

 陽太がツッコミを入れるが、京平はそれを無視して最後の捨て台詞を声高に言いながら俺の席を離れた。その瞬間、教室にいたクラスメイトが一斉に俺の方を見たが、俺は無視して帰り支度を整える。

 

「あ、隆くん待って、一緒に帰ろう」

「私も!」

 

 凛とみずきが慌てて自分の席に戻る一方、京平たちは担任がいない教壇の周りに集まって話し合いを始める。俺は先に帰り支度を終えて凛とみずきを待ち、その後2人を伴って教室を出た。




 ガサガサ。

「え?嘘!?ない!?」

 

 その日の夜、凛は自室でランドセルの中を漁っていた。お目当ては明日提出の宿題のプリントである。

 

「……やっぱり無い……学校に忘れてきちゃった……」

 

 しかし肝心のプリントが全く見つからない。どうやら、放課後に慌てて帰り支度をしたため学校に置き忘れてきたらしい。

 

「どうしよう……もう暗くなっちゃってるし……お母さんは用事でしばらく帰ってこないし……あ!彩香ちゃん!」

 

 ここで凛は、彩香たちが肝試しをしに学校へ行くことを思い出した。肝試しのついでにプリントを回収してもらおうと思ったわけだ。彩香の家は凛の家よりも学校から遠く、方角が一緒であるため、肝試しの帰りにプリントを届けてもらうことができる。

 凛は家の1階に降り、彩香の家に電話を掛けた。

 

 プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル。

「只今、出掛けております。ピーッと鳴りましたら、お名前とご用件を……」

「留守番電話……もしかして彩香ちゃんもう学校に行っちゃった……?」

 

 受話器の向こうから聞こえる機械音声に凛は焦る。

 

「もう結乃ちゃんも学校に行っちゃってるよね……もう、1人で取りに行くしかない……?」

 

 学校まで辿り着けば肝試し組と合流できるだろうが、問題は学校までの往路。凛の家は学校からそこそこ遠く、子どもの足だと20分ほどかかる。通いなれた道とはいえ、薄暗い通学路を1人で歩く勇気は凛には無かった。

 

「……隆くん……」

 

 凛は再び受話器を取り、ダイヤルボタンを押し始めた。




 「本当にごめんね!みずきちゃん!」

「いいのいいの。いつも凛ちゃんには助けてもらってばかりだったから、こんなときくらい協力させて?」

 

 凛はみずきを伴って、夜の通学路を学校へ向けて歩いていた。

 凛は最初、隆一に電話するつもりだったが、途中で思い直してみずきに協力を要請した。みずきの家も親が不在だったため、みずきは家に「凛の家で一緒に宿題をやってきます」と書き置きを残し、すぐに凛と合流した。

 

「隆くんには電話掛けなかったの?」

「最初掛けようと思ったんだけど、そうしたら隆くんのことだから、1人でも私の家まで迎えに来て、家に帰るまでずっと一緒にいてくれる。そうなると多分、学校では京平くんたちと一緒になっちゃうだろうから、そこまでさせるのは申し訳ないなって思って……」

「あ~多分じゃなく間違いなくそうなるね」

 

 放課後、隆一のあからさまに面倒そうな態度を見ていただけに、凛は自分のせいで隆一が肝試しに参加せざるを得ない状況を作るのは忍びないと思ったのだ。

 

「それに、私も隆くんには助けてもらってばかりで、でもいつまでも隆くんに頼ることはできないし、少しずつでも自分でできることを増やさないとって思って……そう言いながらみずきちゃんには頼っちゃってるけど……」

「ううん、十分偉いよ。自分の弱点にちゃんと向き合ってるじゃない。私なんて苦手なことは全部後回しで、どうやってうまくやりすごすかしか考えてないし」

 

 みずきが両手を頭の後ろに回しながら言う。

 

「で、最終的に手が回らなくなって、隆くんに助けを求めて窘められると」

「隆くんも隆くんだよ。ただでさえ剣道と弓道の両方で忙しくて色々後回しになりがちなのに。そもそも両方やった方がいいって言ったのは隆くんなんだから、それ以外のことは喜んで手伝ってくれてもいいよね?」

「ふふ、そうだね。(でもね、みずきちゃん。隆くんもそのことは十分わかっていると思うよ?だって、なんだかんだ言って隆くんは、必ずみずきちゃんを助けてるもの)」


 凛は心の中で隆一を慮りつつも口には出さず、みずきに話を合わせるのだった。




「よし、これで全員だな」

 

 放課後の打ち合わせ通り、肝試し組の6人は小学校の正門前にある街灯の下に集合していた。


「改めて見ると、結構薄気味悪いな……」

 

 広輔が正門越しに校舎を眺めながら呟く。普段見慣れた校舎のはずだが、薄暗い空をバックに聳え建つ姿はなんとも不気味だ。時節生ぬるい風が、一行の侵入を阻むようにグラウンドの木々を鳴らしている。

 

 ビクッ。

「紗奈ちゃん、大丈夫?」

「だ、大丈夫……」

 

 風の音に体を震わす紗奈に結乃が声をかける。

 

「どうする紗奈?帰るなら今の内だぞ?」

「だ、大丈夫よ!大丈夫だからとっとと始めなさいよ!」

 

 怖がる紗奈を見逃さず挑発する京平に、紗奈は強がりながら言い返す。

 

「そうかい?じゃあ遠慮なく始めるか。まずは東校舎の1階から始めて」

「!ねえ、誰かこっちに走って来るわよ」

 

 京平が放課後に練ったプランを確認し始めると、彩香が正門前の道を走って来る人影に気づいた。

 

「おーい!」

「あれって!?」

「みずきちゃん!凛ちゃん!」

 

 街灯下にいる肝試し組を先に視認したみずきと凛が、小走りでこちらに向かってきていた。

 

「2人ともどうしたのよ!?」

 

 不参加を表明していた2人の登場に彩香が慌てて訊ねる。

 

「私が学校に宿題を忘れてきちゃって……」

「凛ちゃんが取りに行こうとしたんだけど、さすがに1人じゃ心配だから私もついてきたの」

 

 少し息切れを起こしつつ凛とみずきが説明する。

 

「おお!なら一緒に七不思議探索しようぜ!」

「ばか!2人はそのつもりで来たんじゃないのよ!」

 

 京平が張り切って声をかけるが彩香に一蹴される。

 

「隆くんには連絡したの?」

「ううん。そこまで迷惑はかけられないから……」

 

 結乃の質問に凛が答える。

 

「わかったわ。私が凛の宿題を回収しておうちまで届ける。だから2人はもう帰っても大丈夫よ」

 

 彩香が凛の両肩に手を置きつつ2人に言う。

 

「ありがとう彩香ちゃん。でもここまで来たら自分で回収するから大丈夫」

「それに、2人よりも大勢でいる方が心強いしね……」

 

 みずきが元来た道を振り返りつつ言う。

 

「おお!じゃあ2人とも参戦だな!ま、何かあっても俺が守ってやるから安心しな!」

 

 京平がポーズを決めながら言う。

 

「もしもう無理だと思ったら言えよ。途中で離脱しても全然OKだから」

「うん、ありがとう」

 

 陽太の言葉に凛が礼を言う。

 

「よし!じゃあ早速忍び込むか!」

 

 正門に手をかけながら京平は言うのだった。

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