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強くてニューゲームはハーレムを確約する  作者: 岩瀬隆泰
第3章 小学3年
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3-4.七海来る②

「河台小へようこそ!」

「隆ちゃんたちの学校、こんな感じなんだぁ」


 昼食後、午後は何をしようかと話し始めたところ、結乃が「学校に行かない?」と提案してきた。七海が興味を示したこともあり、俺自身の通学路を辿りながら5人で学校まで歩いて来たのだ。

 田舎だったこともあっただろうが、転生前も俺が子どもの頃は学校の敷地に自由に出入りできた。俺も入学前から親父に連れられてよく一緒に遊んだし、自転車の練習も学校の校庭でやった。大人になると安全上の観点から自由に出入りできなくなってしまったが、今となっては貴重な遊び場だったなと思う。

 校門から校庭に入ると、向こう側で小学生たち10数人が声出しをしながら何かやっている。


「校庭で何かやってる?」

「河台スワローズが練習してるんだ。地元の少年野球チームだよ」

「私たちの同級生にも何人かメンバーがいるんだよ?」


 校庭にいたのは河台スワローズの3、4年生が所属するミドルチームだった。ちょうど昼休憩を終えて、午後の練習が始まったところらしい。


「お、隆一くん。結乃ちゃんたちも一緒か」

「こんにちは、敏弘さん」

「「こんにちは!」」


 俺たちに気づいて声をかけてくれたのは、ミドルチームのコーチをしている古田敏弘さん。

 俺たちは由伸や圭司の応援のために、何度かスワローズの試合に足を運んでいる。そうしている内に、敏弘さんらスワローズのコーチ陣たちとも顔見知りになったのだ。


「おや?その子は?」

「私たちの友達の春野七海ちゃんだよ。古橋町に住んでるの。七海ちゃん、この人は古田敏弘さん。河台スワローズのコーチをしているの」

「はじめまして。春野七海です」


 敏弘さんが七海に気づくと、結乃が双方を引き合わせ、七海が敏弘さんに挨拶する。


「古橋からよく来たね。今野球チームの練習をしているから、申し訳ないけど校庭で遊ぶときはボールに十分注意してね」

「はい。ありがとうございます」


 優しく微笑みながら敏弘さんが話しかけると、七海は緊張が解けたようで笑顔でお礼を言う。


「今どういう練習をしてるんですか?」

「実戦を想定したフリーバッティングだよ。明日練習試合だからね」


 練習風景を見てみると、なるほど確かに由伸がマウンドから緩いボールを投げ、それをバッターが打ち返し、守備位置についた野手が打ち返されたボールを処理している。


「!」


 由伸がこちらに気づいたので手を振ると、一瞬微笑んで手を振り返してくれ、その後すぐに球出しに戻った。


「今手を振ってくれたのが岸由伸くん。私たちの同級生だよ」

「ピッチャーなの?」

「うん!今は緩く投げてるけど、本気で投げるとすごく速いんだよ?」


 結乃が七海に由伸を紹介する。本気を出した場合、由伸の球速は時速70キロほどだそうだ。調べてみると、小学3年生としては結構速い方らしい。


「おっす!隆!」

「お疲れ、圭司」


 先ほどまで素振りをしていた圭司が俺たちのもとへやってきた。


「ん?その子は?」

「私たちの友達の春野七海ちゃん。古橋に住んでるの」

「そっか!俺、植松圭司!よろしくな」

「よろしくね」


 結乃が圭司に七海を紹介すると、圭司と七海が互いに挨拶する。


「明日試合なんだってな」

「おう!森平ジャイアンツとな。前の試合は負けたから、明日は絶対勝ってやるぜ!」


 森平ジャイアンツは森平地区の少年野球チームで、河台スワローズのライバルチームだ。緑山町の中心部は森平地区で人口が多いため、チームの選手層が厚く、良い選手が多く揃っている。それでもスワローズは結構食らいついており、対戦成績は五分五分らしい。


「おーい!」


 声がした方向に視線を向けると、こちらに駆け寄ってくる京平の姿があった。


「ねえねえ!君だれ!どこから来たの?」


 そしてすかさず七海に近寄り、興奮気味に、かつ矢継ぎ早に質問をぶつける。七海は突然の出来事に完全に硬直してしまっている。


「女の子を怖がらせんじゃねえよ」


 俺が京平を引き離すと、京平は「何だよ」とぶうたれる。


「七海ちゃん、コイツだよ。女子の着替えを覗き見して、隆くんを巻き添えにしようとした犯人」

「ええ!?」


 みずきがあからさまに嫌悪の表情を浮かべながら、七海に告げ口するように言う。覗き見冤罪事件についてすでに話を聞いていた七海は思わず声をあげる。

 

「おい!余計なこと言うなよ!」

「余計なことじゃないもん。七海ちゃんをアンタから守るためだもん」


 京平がみずきに文句を言うと、みずきは七海を庇うようにして反論する。


「はは!相当警戒されてるなあ京平」

「笑わないでくださいよコーチ!」


 敏弘さんが笑いながら京平をからかう。

 当時としては珍しく、敏弘さん含めスワローズのコーチ陣はみなさん温厚な方ばかりで、子どもたちとの関係も親子に近い。もちろん締めるときは締めるし、必要に応じて叱責することもある。現に覗き見冤罪事件の折には、京平は結構コーチ陣から絞られたらしい。


「お、次俺の番だ。行ってくる」

「おう」


 愛用のバットを手に圭司が打席に立つ。圭司は決して体格が良いわけではないが、鋭いスイングで長打を量産するパワーヒッターだ。打席に立つ姿は、日本プロ野球で初めてトリプルスリーを複数回達成したかのファイブツールプレイヤーを彷彿とさせる。


 カキン!

「お!」


 由伸が投じたボールは、心地よい打球音とともにきれいな放物線を描いてライトの外野手の頭上を越えていく。外野手が慌ててボールを追いかける中、圭司は悠々と二塁ベースを回り、外野手がボールを返すときには既に三塁へ到達していた。


「ナイスバッティング!いいぞ圭司!」

「スリーベースヒットだ。後ちょっとでホームランだったな」

「圭司くんすごーい!」


 敏弘さんが圭司のヒットを褒め、結乃たちも拍手を送る。


「へへ!だったら俺はホームランを打ってやるぜ!」


 圭司に触発された京平がバットを高々と上げてホームラン宣言をする。

 

「おっ。期待してるぞ京平」

「はい!」


 敏弘さんに応援された京平は、一際気合いが入った声で「お願いします!」と挨拶して打席に入った。鋭い目つきで自身を睨みつける京平に苦笑しながら、由伸はストライクゾーンへ緩いボールを投げる。京平はタイミングを取りつつ思い切りバットを振り抜く。


 キンッ!ボンッ!


 バットはボールの上部を叩き、ボールはほぼ垂直に地面に叩きつけられ、由伸の方へ転がっていく。ボテボテのピッチャーゴロだ。


「だあ!」


 地団駄を踏む京平には目もくれず、由伸は難なくボールを捌いて一塁へ転送した。


「空振りじゃないけど、あれは駄目なの?」


 野球のルールに明るくない七海が俺に訊ねる。

 

「全く駄目ではないけどな。相手がミスをすればセーフになることもある」


 フリーバッティングでの選手たちの動きを参照しながら、俺は七海に簡単に野球のルールを説明する。もちろんいきなり全部理解するのは難しいから、雰囲気だけ掴めれば良いことは予め添えておく。俺もルールをちゃんと理解したのは中学に入ってからだったしな。


「おーい!」


 声がした校門の方へ視線を向けると、自転車に乗って校庭に入ってくる2人の男子の姿があった。


「あ、広輔くんと陽太くんだ。あの2人も同級生で友達だよ」


 手を振りながら自転車で近付いてくる広輔と陽太を指差しながら、結乃が七海に説明する。2人ともスポーツウエアを身につけ、テニスバッグを背負っている。

 

「何か背負ってる?」

「テニスラケットだな。2人とも地元のテニスクラブに入ってるから」


 2人が所属するクラブのホームコートは学校の近くにある。おそらくクラブでの練習の帰りに学校を覗いてみたら、俺たちの姿が目に留まったのだろう。


「やっほーみんな。あれ?その子は?」


 俺たちのもとに到着した陽太が七海の存在に気づいて問いかける。


「春野七海ちゃん。古橋に住んでる私たちの友達だよ」

「はじめまして。よろしくね」

「こんにちは!よろしくね」

「よろしく!」


 結乃が七海を2人に紹介し、3人が互いに挨拶する。


「クラブの帰りか?」

「うん。今日は陽太が絶好調だったんだ」

「へへ、こいつのおかげさ」


 そう言って陽太が取り出したのは、見るからに卸したてのテニスラケットだった。


「お、これこの間話してたやつか」

「おう!ビルソンの新作!カッコいいだろ!」


 以前から学校で陽太が「欲しいラケットがある」と言っていたが、ようやく手に入れたらしい。


「なあなあ隆さん、あっちで試合しようぜ!このラケット使ってみてくれよ!」

「あ、じゃあ俺ネット取ってくる!」

「あ、おい!」


 2人は俺の呼びかけに全く気づかず、スワローズ練習スペースの反対側にある空きスペースへ自転車で走っていく。


「あの2人勝手に……」

「いいよ隆くん、私たちは近くの鉄棒のところでおしゃべりしてるから。みんないいよね?」

「うん!」

「いいよ」

「私も大丈夫。隆ちゃん、気にしないで遊んできて」


 結乃が気を利かして、俺が2人の相手をできるように提案し、みずき、凛、七海も賛同する。


「ああ、わりい。なるべく早く終わらせるから」

「全然いいよ。むしろ私たちはたくさんおしゃべりしたいから、長く2人と遊んでくれると助かるなあ?」

「おいおい……」


 茶目っ気たっぷりに言う結乃に苦笑しつつ、俺はコート作りに勤しむ広輔と陽太のもとへ歩き始める。女子たちは早速ガールズトークを展開しながら俺の後ろをついて行くのだった。




「隆ちゃん、テニスもできるの?」

「うん!広輔くんたちといつもいい勝負してるよ」


 七海の質問に結乃が答える。

 凛、みずき、結乃、七海の女子陣は、広輔と陽太が作ったテニスコートの近くにある鉄棒の側に集まっている。テニスコートでは陽太と隆一によるシングルスの試合が始まろうとしている。広輔は審判だ。


「じゃあ俺のサーブから行くぞー!」

「はいよ」


 隆一が構えるのを確認すると、陽太はサーブの動作に入る。トスを上げ、ボールが最高点に達したところでラケットがボールを捉える。


 パコーン!


 ボールはコートの外側へ逃げるように曲がりながら、ネットを越えて隆一側のコートに落ちる。


 パコーン!


 隆一はボールの軌道を読んだかのようにボールの着地点に正確に移動し、ストレートに陽太側のコートにボールを打ち返す。


「うお!」


 陽太は慌ててボールもとへ走り、バックスライスで辛うじて打ち返す。


 シュッ!

 ポン。


 しかしそれも見越したように隆一はネット際まで移動し、緩いボールを軽いタッチでボレーする。


「ゼロ―ワン!」

「いきなりミニブレークかぁ」


 広輔のコール後、陽太が腰に手を当てて苦笑しながら言う。


「隆ちゃんすごーい!」


 七海が隆一のプレーに目を輝かせながら称賛の拍手を送る。


「ねえ七海ちゃん、1つ聞いてもいい?」

「うん、いいよ」


 隣りにいる結乃の問いかけに七海が答える。


「七海ちゃん、隆くんのこと好き?」

「ふぇ!?///」


 予想もしていなかった問いかけに、七海は思わず素っ頓狂な声を上げて顔を赤らめる。


「あ、ええとぉ……うん///」


 七海は一瞬返答に窮したが、最後は自分の気持ちに素直に頷いた。


「ふふ、ありがとう七海ちゃん。私もね、隆くんのこと好きだよ。結婚したいって思うくらい」

「け、結婚!?///」


 さらりと自分の想いを打ち明ける結乃に七海はさらに動揺する。


「うん。私だけじゃなくて、凛ちゃんとみずきちゃんも同じ気持ちだよ。ね?」

「ふぇっ!?///」

「ち、ちょっと結乃ちゃん!///」


 結乃の突然の曝露に、凛とみずきも顔を赤らめて狼狽える。


「そ、そうなの?」

「あ……う、うん///」

「あぁ、えっとぉ……はい、そうです///」


 七海に問われ、凛とみずきは恥ずかしがりながらも素直に肯定する。


「七海ちゃん、私たちは3人とも隆くんが好き。でもだからって取り合いをしようとは思ってなくて、3人で隆くんを好きでいようって決めてるの。もちろん、仲間が増えるのも大歓迎。もし七海ちゃんが私たちに加わってくれたら、すごく嬉しいんだけど」

「わ、私も?///」


 結乃の考えを聞き、七海は驚きながら確認する。


「うん!嫌なら無理にとは言わないけど、どうかな?」


 結乃に改めて請われて、七海は考えを巡らせる。

 実際のところ、七海は自分以外に隆一を好きな女の子がいるであろうことは覚悟していた。母親の香苗が「隆ちゃん、絶対学校でモテモテよねえ」としきりに言っていたこともあるが、隆一を他の女の子が放っておくはずがないと七海自身も確信していた。

 そして実際に、隆一を好きな女の子たちは存在したわけだが、敵対するどころかむしろ友好的で、しかも自分に会いたいと手紙まで出してくれた。七海がそもそも争いを好まない性格であることもあるが、七海としては結乃たちと隆一の取り合いをするよりは、同志として仲良くしたい気持ちが勝っていた。


「ええと、いいの?私も一緒で」

「もちろん!ね?」

「うん」

「私も大歓迎だよ!」


 結乃が凛とみずきに確認すると、2人とも笑顔で答える。


「それじゃあ、私も仲間に入れてもらうね」

「やったー!ありがとう七海ちゃん!」


 結乃は喜びながら七海に抱きつく。最初の抱擁ほど驚きはしていないが、まだ慣れない七海は照れ笑いしながら結乃を抱き返す。


「結乃ちゃんばっかりずるいよぉ。私も!」


 結乃が離れると今度はみずきが七海に抱きつく。最終的には結乃とみずきに促され、恥ずかしがりながら凛も七海と抱擁を交わした。


「さて、じゃあ七海ちゃんが加わったところで、いくつか聞きたいことがあるんだけど……」

「え?何?」


 表情をニヤつかせながら言う結乃に、七海は少し身構えながら答える。


「七海ちゃん、隆くんのことを『隆ちゃん』って呼んでるけど、いつからそう呼んでるの?」

「ふぇ!?///」


 再びのツッコんだ質問に七海は動揺する。


「あ、私は隆くんとの一番昔の思い出が知りたい!」

「ええ!///」


 みずきからも質問され、七海は顔を赤らめながら右往左往する。

 その後、七海は主に結乃とみずきから隆一に関する質問攻めに遭ったが、恥ずかしがりながらも律儀に答え続けた。最終的には頭から湯気が立ち上りそうなほど顔が赤くなり、ゲームから戻った隆一に心配され、余計に恥ずかしくなって顔を赤らめたのはご愛嬌である。

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