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強くてニューゲームはハーレムを確約する  作者: 岩瀬隆泰
第3章 小学3年
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3-2.テスト、プール、覗き見事件②

「あ~あ、もっとプール入っていたかったなぁ」

「1日プールでもいいよなぁ」


 プールの授業が終わり、3年生の多くが心地よい疲労感とともに教室に戻ってきた。今は1組の教室で男子が、2組の教室で女子が着替えの真っ最中だ。


「なあなあ隆さん!どうすればあんなに泳げるようになるの?」

「あ、それ俺も聴きたい!」


 近くで一緒に着替えをしている広輔と陽太が俺に訊ねる。先程の授業で、俺はお手本としてターンを含めたクロールを披露したのだ。


「別に特別なことはしてないさ。ひたすら練習したんだ」

「練習?どこで?」

「アクアリラ。週末に父さんに教えてもらいながら特訓したんだ」


 アクアリラとは緑山町にある屋内町民プールの名称である。転生前、俺は小学校3年生まで金槌だった。そこで小学校3年生の夏から親父を講師に、毎週末アクアリラで特訓した。結果、小学校4年生までにはクロールで50メートルまで泳げるようになり、水泳の授業で困ることはなくなった。

 そして転生後も、親父に同じように特訓をお願いしたのだ。もちろん実際は神様チートでどんな泳法も朝飯前だが、建前は親父との特訓のお陰で泳げるようになったことにしている。


「いいなー!俺も隆さんのお父さんに教わったら泳げるようになるかな?」

「保証はできないけど、父さんに特訓できるか頼んどこうか?」

「いいの!?」

「あ、俺も一緒に教わりたい!」


 俺が親父との特訓を提案すると、2人は喜んで乗っかってきた。


「テニスの練習は土曜だったっけ?」

「うん。だからできれば日曜にお願いしたいんだけど」

「わかった。日曜に行けるか聞いてみる」

「ありがとう!隆さん」


 2人のテニスの練習日である土曜を避け、日曜に水泳の特訓を親父に頼むこととなった。まあ親父のことだから喜んで引き受けるだろうけど。


「よし、着替え終わり!俺トイレ行ってくる」

「あ、俺も行く。隆さんは?」

「俺は大丈夫」


 広輔と陽太が着替えを終え、用を足しに教室を出る。他の男子たちも全員着替えを終えたようで、思い思いに集まって談笑している。4時間目終了まであと5分ちょっと。俺も着替えを終え、机について一息つく。


「隆くん」

「お、義経。どうした?」


 少し困ったような表情で俺に話しかけてきたのは、クラスメイトの森本(もりもと)義経(よしつね)だ。

 義経は1年生のときから同じクラスの友人。早生まれで他の同級生と比べて体は小さく、勉強もスポーツも苦手。しかし物静かで優しい心を持っており、転生前も仲の良い友人だった。名前の由来はもちろん源義経で、義経のようにたくましく元気に育ってほしいと願って名付けられたという。


「京平くん、どこにいるか知らない?」

「京平?」


 言われて教室内を見渡すと、確かに京平の姿が見えない。


「確かにいないな。京平に何か用か?」

「給食袋が無くて……」

「ああ、なるほど」


 今週は義経が所属するグループが給食当番だ。先週は京平のグループが当番で、月曜の今日は給食着一式を洗濯して持ってこなければならない。義経は京平が使っていた給食着を使うが、それらが入った給食袋が所定の場所に置かれていないのだろう。

 

「やっほー、隆、義経」

「お、由伸、圭司」


 由伸と圭司が俺の席へやってきた。2人とはクラスが離れてしまったが、顔を合わせる機会があればこうやって話をしている。


「何の話してたんだ?」

「ああ、それがな」


 と、俺は義経との会話を話そうとした、その時だった。


 ガラガラ!


 教室後方の出入り口が勢いよく開く音。その直後、怒鳴り声に近い声が教室に響き渡った。

 

「ちょっと!片山隆一くんいる!?」




 時は遡って10分前。


「なあなあ、女子の着替え覗いてみないか?」

「おお!いいないいな!」


 いつになく声を潜めて話し合っているのは堀崎(ほりさき)裕也(ゆうや)高原(たかはら)智成(ともなり)安藤(あんどう)航樹(こうき)、増岡京平の4人。3年生の中で特に先生の手を焼かせている悪ガキグループだ。1、2年生のときは4人とも2組だったが、3年生からは京平のみ1組に振り分けられた。

 プールからの上がった後の着替えでも、いつものように4人で集まっていた。いつもなら流行りのアニメやゲームの話で盛り上がっているところだが、教室に着くなり京平が冒頭の提案をしてきた。間髪を入れず同意してきたのは、考えなしだがノリがいい航輝だ。


「どうやって覗くんだ?ベランダから覗くのか?」

「ベランダはバレそうだなあ。教室の扉も危ないぞ」


 裕也が着替えながら京平に質問すると、智成が話に乗っかてくる。


「ふふん。絶対に気づかれない場所を見つけたのさ」

「え?どこ?」


 自信満々な京平に航輝が質問する。


「ここさ!ここなら絶対バレない!」


 と、京平が指さしたのは、教室の廊下側の壁の下。そこには廊下に通じる小さな引き戸があった。いわゆる「地窓」である。


「おお!なるほどな!」

「確かにここならバレない!」

「だろだろ!女子が着替え終わる前に早く行こうぜ!」


 京平の言葉を合図に、3人は急いで着替えを終わらせにかかる。確かに教室内からだと気づきにくいだろうが、廊下からだとモロバレは確実だ。しかし4人は名案を得た高揚感と、時間が無いことへの焦りでこの欠点に気づかなかった。

 3人が着替えを終えると、4人はすぐさま廊下に出た。他のクラスはまだ授業中で、廊下には誰もいない。


「よし!」


 裕也を先頭に4人は廊下に出ると、すぐに2組の教室の地窓の傍で四つん這いになった。地窓の向こうからは女子たちの笑い声が聞こえてきている。


「開けるぞ」


 京平の言葉に3人が頷くと、京平は2組の教室の地窓を少し開けた。そして、京平は顔を横にして教室の中を覗き込んだ。


「どうだ?」

「ん?うーん……」


 京平の視線の先に見えたのは机の脚。すぐ目の前に立ち塞がっていたため、周囲を含め教室の様子を把握できなかった。


「おいどうなんだよ!俺にも見せろよ!」

「バカ!押すなよ!」


 煮えを切らした裕也が京平に交代を迫るが、京平はそれを拒否する。


「おい騒ぐなよ!バレちまう!」


 覗きが気づかれるのを警戒して智成が2人を制するが、2人の小競り合いが収まる気配はない。航輝は2人の小競り合いを見ながらまごつくばかりだ。


 ガラガラ。

「え?」

「「「「!」」」」


 反射的に音がした方向へ視線を向ける4人。その先には、教室の扉を開けて廊下に出ようとする2組の女子生徒、富岡(とみおか)紗奈(さな)の姿があった。


「ちょっと!あんたたち何やってんのよ!?」


 そして当然のごとく、紗奈は廊下で怪しい動きをしている4人にを視界に捉える。さらに4人の傍にある少し開いた地窓にも気づく。


「あんたたち、覗きしてたわね!」


 全てを悟った紗奈はすかさず4人に詰め寄る。


「い、いやこれは違くて」

「何が違うのよ!覗き以外にどうして下の扉を開けて四つん這いになるのよ!」


 4人はよりによって最も厄介なやつに見つかったと思っていた。紗奈は彩香と張るかそれ以上に気が強く、男子たちと毎日のように火花を散らしていた。さらに頑固で思い込みが激しく、自分に非があっても認めようとしない面もあり、京平たちに限らずほとんどの男子たちが紗奈を避けていた。


「どうしたのよ紗奈」


 廊下での騒ぎに気づいた彩香が、教室の出入り口から顔を覗かせる。


「こいつらが私たちの着替えを覗き見してたのよ!」


 紗奈は彩香を見ながら、今なお廊下に座り込んでいる4人を指差して言う。


「覗き?」


 紗奈の言葉を受けて彩香が廊下に出て状況を確認し、何があったかすぐに理解した。


「はぁ。全くあんたたちは」


 彩香は怒りを通り越して呆れた表情でため息をつき、腕を組んで4人を見下ろす。すでに2組の教室の出入り口からは多くの女子たちが顔を覗かせ、思い思いの表情で4人を見つめていた。

 このとき、京平は自分の脳を過去に類を見ない速度でフル回転させていた。自分たちへのダメージをできるだけ小さくして、なるべく早くこの状況から脱するために。


「!」


 その結果、京平は1つの妙案を得た。客観的に見れば全くの愚策なのだが、今日散々いいようにされたアイツに一泡吹かせられると判断した京平は、なんの躊躇もなくその案を実行に移した。


「お、俺らだってやりたくてやったわけじゃない!命令されて仕方なくやったんだ!」

「命令?」


 京平の反論に紗奈が反応する。


「誰よ。その命令をしてきたのは」

「隆さんだよ!」

「隆さん?」


 京平の口から出た初めて耳にする名前に、紗奈は怪訝な表情になる。彩香は一瞬目を見開くが、すぐに元の呆れた表情に戻った。


「誰よそれ」

「片山隆一!1組の男子だよ!そいつが『女子の着替えの覗きに成功したら宿題を全部写させてやる』って俺らに言ったんだ!」


 京平の主張を聞いた女子たちが一斉に騒ぎ始める。京平は内心、うまくいったと心の中でほくそ笑んでいた。


「何を言い出すかと思えば、そんなこと」

「片山隆一くんね!許せないわ!」


 彩香が京平の主張を退けようとした矢先、紗奈は京平の言葉を鵜呑みにして1組の教室へ向かう。


「あ!ちょっと紗奈!」


 彩香の制止も聞かず、1組の教室の扉を勢いよく開けた。


「ちょっと!片山隆一くんいる!?」


 


 呼ばれて振り向くと、そこには憤怒の表情で教室の出入り口に立つ2組の富岡紗奈の姿があった。


「俺だけど?」


 嫌な予感を抱きつつ手を挙げて応えると、俺を睨みつけながらズカズカと近づいてくる。


「どいて!」


 俺の周りにいた義経たちが彼女の威圧により無抵抗で避ける。そして、俺の目の前に腕を組んで仁王立ちしながらドスの利いた声で聞いてきた。


「京平たちに覗きをするように言ったって本当?」

「……何の話だ?」


 紗奈の質問に質問で返す。


「惚けないで!京平たちに宿題写させるから女子の着替えを覗いて来いって命令したでしょ!?」

「……全く身に覚えがないんだが?」


 実際その通りなのでその通り素直に答える。


「嘘つかないで!京平があんたに命令されたって言ったのよ!」


 はーん。つまりあれか。京平たちが女子の着替えを覗こうとしたがバレてしまい、京平の苦し紛れの言い訳に俺が巻き込まれた。そういうことか?

 京平の言うことを素直に信用するのもどうかと思うが、思い込みが激しい一面をもつ彼女ならさもありなんという気もする。


「さあこっちに来て!女子たちに謝りなさい!」


 こりゃあ彩香たちに話を聞いてもらって潔白を証明するのが早そうだな。

 紗奈に促されるまま、軽く息を吐いて席を立とうとした、その時だった。


「やめて紗奈ちゃん!」


 再び教室の出入り口から声が響き渡る。そちらに視線を移すと、少し息を切らした凛の姿があった。


「凛……」


 凛が教室に入ってくると、少し遅れてみずき、結乃、彩香、彩香に引っ張られる形で京平が入ってきた。


「なんだ?どうしたんだ?」


 そしてトイレから戻ってきた広輔と陽太も、頭に疑問符を浮かべながら教室に入ってくる。


「紗奈ちゃん、お願いだからもうやめて。隆くんは絶対にそんなこと言わない。隆くんは優しくて、誰かが困っていたら必ず助けてくれて、誰かが嫌がることは絶対にしない。そんな隆くんが着替えを覗けなんて絶対に言わない」

「凛ちゃん……」


 普段大人しく口数が少ない凛の説得に、紗奈も思わずたじろぐ。


「凛ちゃんの言う通りだよ!隆くんがそんなこと言うなんて信じられないよ」

「そうだな。隆はそんなこと絶対に言わない。何かの間違いだろう」

「だな」

「うん」


 みずきが凛に賛同すると、由伸、圭司、義経も同意する。


「隆一くん」

「なんだ?」


 彩香に呼ばれて返事をする。


「大丈夫。私も隆一くんがそんなこと言うなんて思ってないわ。でも一応念のため確認させて。コイツはプールに入る前の着替えの最中に隆一くんに命令されたって言ってるんだけど……」


 彩香が京平を指さしながら言う。

 なるほど、アリバイを確認したいわけか。だがその時間はそもそも京平と一言も言葉を交わしていない。なぜなら、


「あ、それはあり得ないな。着替えの最中、隆さんはずっと俺と広輔と一緒で、京平とは話ししてないから。な、広輔」

「うん。俺たちは京平とは何も話ししてない」


 というわけだ。

 陽太と広輔のアリバイ証言を受け、彩香が改めて京平に向き直る。


「ということらしいけど?」

「う、嘘つくなよ!着替えの途中で俺がお前らのところへ行っただろ!」


 もうなりふり構っていられないのか、彩香に迫られた京平は広輔たちにも食ってかかる。


「嘘じゃないよ。京平くん、他の子とずっとしゃべってて、隆くんとは全然話してなかった。僕ずっと見てたもん」

「俺も見てたぞ。お前、裕也たちとずっと一緒で、隆たちのところには一度も話しに行ってなかっただろ」


 いつも素直な義経、チームメイトの圭司にも反論され、京平は何も言えず口をつぐんでしまう。


「さて、どういうことかしら?」


 彩香が再び京平に詰め寄る。もう大勢は決したが、しっかり白黒つけて終わりにしたいのだろう。


「私、あんたに聞いたよね?『本当に着替え中に命令されたの?間違いなく?』って。そしたらあんた言ったよね?『本当だ。間違いない』って」


 なるほど。俺に確認する前に京平から言質を取ってたのか。俺が京平に命令した時間帯を自供させて、間違いないことを念押しで確認した上で、実際に俺らに確認して矛盾を暴く。うまいこと考えたな。


「でも、あんたが隆一くんと話してるところを見た人は1人もいない。明らかにおかしいわよね?」


 京平は完全に黙り込んで顔を俯ける。その京平には怒り、呆れ、様々な感情の視線が集中する。わかりやすい四面楚歌だ。


「京平くん、本当のことを話してごらん?本当のことを話してくれたら怒らないから。ね?」


 と、ここで差し出される救いの手。結乃が小さい子に話しかけるように笑顔で京平に自供を促す。


「…………ごめんなさい」


 つぶやき声で発せられた謝罪の言葉。これを受けて周囲の何人かは溜め息をこぼした。


「じゃあ、隆くんは京平くんに何も命令してないのね?」

「うん……」

「覗きの言い出しっぺも京平くんかしら?」

「うん……」


 結乃の問いかけに京平は素直に答える。実際、自分に都合が悪いことを自供させるには、圧をかけるよりも寄り添う方が効果的だ。結乃は3姉妹の長女で、妹たちの面倒をよく見ている。その経験が今回うまく活きたのだろう。


「わかったわ。素直に言ってくれてありがとう。私たちはもう大丈夫だから、最後に他の女の子たちにちゃんと謝ってきてね。彩香ちゃん、後はお任せしてもいい?」

「ええ、もちろん。ほら来なさい」


 彩香に促され、京平は素直にその後について教室から出ていった。この後女子たちが京平たちにどういう審判を降すかはわからないが、とりあえずはこれで事態は収拾に向かうだろう。


「紗奈、お前も隆に謝らないといけないんじゃないのか?」


 京平が出ていったのを見計らって、由伸が紗奈に言う。


「あ、あれは京平に騙されて」

「確かにそうだけど、何も悪くない隆を悪者って決めつけただろう。いくらなんでもひどいと思うぞ」

「そうだけど……」


 圭司にも反論されるが、紗奈は俺に謝ろうとせず口をつぐんでしまう。

 俺としてはもう解決したことだし、彼女の頑固さはよくわかってるから別に謝罪を求めるつもりはない。イヤイヤ謝られても気分良くないしな。


「紗奈ちゃんは紗奈ちゃんなりに、正しいと思うことをしようとしたのよね。それはすごくいいことだよ」


 結乃が今度は紗奈に助け舟を出す。


「今回は間違えちゃったけど、それは紗奈ちゃんのせいじゃなくて京平くんのせい。それはみんなわかってる。でも何も悪いことをしてないのに悪者扱いされるのは誰だって悲しいわ。紗奈ちゃんだって、何も悪いことをしてないのに疑われたら悲しいでしょう?」

「うん……」

「ね?自分がされて嫌なことをしちゃったら謝らなくちゃ。大丈夫、隆くんは許してくれるし、次から気をつければいいんだから」


 結乃に諭され、紗奈が改めて俺に向き直る。


「疑ったりして、ごめんなさい。私が悪かったわ」

「いいさ。わかってくれれば十分だよ」


 一応誠意ある謝罪を受けたので、俺も四の五の言わず水に流すことにする。


「ありがとう、隆くん。由伸くんと圭司くんもこれでいいかな?」

「ああ。隆が許すなら全然いいよ」

「おうよ!」


 由伸と圭司の返事に、結乃は改めて安堵の表情を浮かべる。


「2人ともありがとう」


 キーンコーンカーンコーン……


 結乃が2人にお礼を言うと、4時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。それにつられて2組の男子たちが教室を出ていく。


「私たちもう行かなくちゃ!みんなありがとう!また後でね」

「おう。結乃、俺の方こそありがとうな」

「ふふ。どういたしまして。さ、行こう、紗奈ちゃん!」


 俺のお礼に応えると、結乃は紗奈の手を引いて2組の教室へ戻っていった。


「俺たちも行くわ」

「由伸と圭司もありがとうな」

「おう!また昼休みな!」


 由伸と圭司も女子2人に続いて教室を出ていく。そしてその入れ違いで彩香たち1組の女子がこちらに戻ってきた。


「お、彩香。終わったのか?」

「先生が来たから、事情を話して引き渡したわ。先に給食の準備始めておいてくれって」


 まあそうなるだろうな。本格的な説教は給食後の20分休みだろうけど、おそらく京平たちの休み時間はなくなるだろう。


「みんな、俺を庇ってくれてありがとうな」

「そ、そんな///隆くんにはいつも助けてもらってるから///」

「そうだよ!こういうときに助けないでどうするのよ」


 俺がみんなにお礼を言うと、凛とみずきが応える。


「俺らは本当のことを言ったまでさ。な?」

「うん」

「私も委員長として当然のことをしたまでよ」

 

 陽太、広輔、彩香も笑顔で応え、義経も笑顔で頷く。

 今日は完全にみんなに助けられたな。俺が自分の力で解決することもできたが、今回は規模は小さくとも立派な冤罪事件。俺がどうこう言うより、今回みたいにみんなに助けてもらう方が早くケリがついただろう。みんなには改めて感謝だ。


 その後、給食の時間となったが、結局京平は給食着を忘れてきたらしく、義経は予備の給食着で配膳にあたった。

 配膳の最中に京平と田沢先生が戻ってきたが、京平は完全に意気消沈しており、給食の間誰とも目を合わさなかった。そして午後の20分休みが始まると、京平は先生に伴われて教室から出ていった。

 その日に関してはそれ以降、京平はすっかり大人しくなった。しかし翌日には、もう何事もなかったように普段通りのやんちゃ男子に戻っていた。「やっと大人しくなったと思ったのに……」と呟きながら隣で頭を抱える彩香を、「小学生男子なんてそんなもんだぞ」と内心思いながら慰めたのは、ここだけ秘密である。

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