第2話
1週間後。私はまたも陛下に呼び出しを食らっていた。
まずい。もう終わったのか、私の人生。今から「王子であるアランに不敬な態度を取った」とかで処刑されるんだ、きっと。……アランみたいなやつが王子とか最悪じゃんもう。ああいうやつが1番権力握らせちゃ駄目なんだよなぁ、なんかクズに突っかかって処刑されるとか、ムカつくんだけど。
そう思って勝手に軽く絶望しつつイライラしていると、意外にも陛下は怒っていなかった。というよりむしろ面白そうな顔をしていた。
「ミリアナ、この間は私の息子がすまなかったな」
申し訳なさそうに肩をすくめる様子からは、どこか飄々とした雰囲気が漂っている。陛下はどこか掴めない。お父様曰く、「あいつはいつも何手も先を見て行動しているところがある、頭が良すぎて頭おかしいんだ」だそう。陛下にそんなこと言って不敬にならないのかは知らないが。そんな陛下は顔が良い。とにかく顔が良い。顔だけで言えば好みドストライクである。陛下の顔を見ているだけでイライラが吹き飛んでいったくらいには。
ただ、皮肉なことにアランは陛下にそっくりなのだ。陛下を見ているとアランを思い出してまたイライラしてきた。
「あの馬鹿も学んだだろう、世の中の全てが自分の思い通りになるというのは間違いだと」
「その節は本当に申し訳ございませんでした……。」
「気にする必要など無いぞ。むしろ、今まで甘やかして放っておいた私が悪いのだから、ミリアナには感謝してもしきれん。それでだ、ミリアナ。今、この話の後で言うのもなんだが、馬鹿息子の話し相手になってくれないだろうか」
「わ、訳をお聞かせ願えますか」
アランの話し相手になるなんて、たまったもんじゃない。性格悪いし。しかも私のポジションは悪役令嬢なんだから、関わればそれこそアランがヒロインとくっついたときに処刑されるって。でも、王族からの頼みは断れない。せめてもと最後の抵抗をする。
「あいつはミリアナも知っている通り性格も頭も悪い。今のままでは取り柄が1つも無い。しかも、今までの行いのせいで、周りの者たちは皆アランを止めないのだ。あれを止められるのはミリアナ、そなたしかいないと思ってな。婚約もしなくて良いし、月に1度で構わない、頼まれてくれるか」
アランについて話す陛下には、確かにアランへの愛情が感じられた。親の愛を無下にはできない。それに、陛下に言われて、考えが変わった。
ヒロインに会う前までにアランの性根を叩き直してやれば、ヒロインはアランとくっつきやすくなるし、アランの性格がよくなれば私も断罪や処刑されずに済むかもしれない。
「分かりました。精一杯努めさせていただきます!」
こうして、私の「アランにちゃんと向き合って断罪回避」作戦が始まった。
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