表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート10月〜3回目

三色巻き

作者: たかさば

 三色巻きがスキである。


 私が言っている三色巻きとは、お寿司の細巻きの事だ。

 スーパーのお弁当コーナーの隅っこのほうで、比較的小さなパックに入っている300円前後のものの事である。納豆巻き、かっぱ巻き、ネギトロ巻き、鉄火巻き、かんぴょう巻き等のパックと共に並んでいることが多い。


 三色というくらいなので、三つの具材を各々巻き込んだものがセットとなっている。私がよく買うのは【カッパ巻き+沢庵巻き+しば漬け巻き】が入っているものだ。緑、黄色、赤の信号カラーが、実に食欲をそそる。


 店舗によってパック内容のラインナップが多少違うのもまた魅力だ。大体の店舗においてカッパ巻きは緑を担当しているのだが、黄色と赤に関してはわりとフリーダムな割り当てをされることが多いように感じる。

 黄色を担当する沢庵は、時折卵焼きになったり、ごぼう漬けになったり、壷漬けになったりする。

 赤色を担当するしば漬けは、時折カニカマになったり、梅になったりする。

 かんぴょうは、黄色と赤両方から誘いをうけることが稀にある。茶色は黄色と赤、両方の性質を持つのだ。


 基本三色巻きには、刺身のような生ものが巻かれる事はない。野菜か、漬物か、煮物か、焼き物が入っている。生々しい海鮮にはない、あっさりとした具材が実に食後の爽やかでさっぱりとした風味をもたらす。コスト的なものなのか、はたまたベジタリアンに対する気遣いなのかは不明だ。


 私がよく行くスーパーにおいて、三色巻きはあまり人気がないらしい。

 納豆巻きが五つくらい重ねて置いてあるのに、いつも二パックほどしか見かけることがない。夜遅くに行くと、半額のシールを貼られて寂しそうにしていることもぼちぼちある。


 実に悲しいことだ。

 実に嘆かわしい。

 実に遺憾である。


 さびしげな三色巻きを見かけた際には、必ず救いの手を差し伸べることにしている。


 ただでさえあまり並ぶことの少ない虐げられがちな存在、見かけたら即ゲットしたい。

 売り場に並ばない日も珍しくないわりと気の毒な存在、見つけたからには必ずゲットしたい。


 私は、私は、三色巻きが……大好きなんだー!!!


「で、これだけ買ってきたってこと?!いくらなんでも多すぎじゃん!!食べるけど!!」


 少々仕事が長引いて、スーパーに寄る時間が遅れた本日……まさかのお弁当コーナーにですね!!三色巻きのパックがずらりと並んでおりましてですね?!しかも全部30%引き、一体何があった!!


 さては発注ミス?もしや具材の賞味期限切れ対策?予約注文のキャンセルとかかも?

 店側の事情はわからないけれども、三色巻きラブの私、ずらりと並ぶ皆さんをスルーすることなんか……できるわけないやんけ!!


 通りかかったお客さんたちも微妙に困惑しつつ、ポイポイとかごの中に放り込んで行くので、ついつい私もですね。ええ、気がついたら5パックも己のかごの中にさらいましてですね。ついでに納豆巻きもツナ巻きも海老サラダ巻きもかんぴょう巻きも明太キュウリ巻きも買いましてですね。あと半額のサンドイッチにドリア、カットパイナップルにチョレギサラダ、マカロニサラダに茶碗蒸しなんかも買いましてですね。


「てゆっかなんで鉄火買ってきてくれなかったの!!もー、コレじゃあたんぱく質足りないよ、冷凍ハンバーグやいて食べよ!!あとミートソースパスタも食べよう!!ちょっと!そのエビお父さん食べたいから食べちゃだめ!」

「残ってなかったんだから仕方ないじゃん!!ちょっとお父さん明日のお姉ちゃんのお弁当の分まで焼かないでよ?!ダメダメ、それはあさっての弟のお弁当用のナゲットじゃん!」

「うーん、あたしはカッパ巻きと納豆巻きだけでいいや!!冷凍ピザ食べて良い?」

「チーズオムレツ焼いていい?」


 少々カッパ巻きは食べたりなかったものの、三色巻きを心行くまで食べる事ができてですね。珍しく晩御飯をたらふく食べることができましてですね。


「うーん、うーん、食べ過ぎた…もう、しばらく、三色巻きは見たくない…ぐふっ……!!!」


 胃腸薬を飲んで、寝込むことになってしまった人がいたという、お話ですよ……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ