表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

第1発見者

女と子供が縛られ、椅子に座らされている。


ゔーゔーと唸り声を上げている。

猿ぐつわをされていて、声にならない抵抗を試みている。


男も対面で椅子に座らされ、

猿ぐつわをされて縛られている状態である。


椅子に座らされた男の耳元で

別の男が低い声で言った。

『臓器売買組織のシッポを掴んだそうだな。

だが、シッポは切ればいいだけ。

お前達が我々に辿りつく事はない!』


最後の言葉を言うと同時に、椅子に座らされた男の太ももへ

メスを突き刺す。


『うふぅー!!

ふぃー!!ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ』


刺された男は、猿ぐつわをされていて声にならない叫び声を上げ、

呼吸が乱れている。


そんな男を尻目に、刺した男は言葉を続ける。


『しかし、我々の組織にとって今回の被害は少ない被害ではない。

よって、我々はその報復として、お前の大事な人達の臓器をもらう事にした。』


最後の言葉と同時に先程太ももに刺したメスを

勢いよく引き抜く。


『うふぅー!!

ふぃー!!ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ』

又、声にならない叫び声を上げた。



男が言った言葉を理解したのか、反対に座らされていた

女と子供はその場で抵抗を強める。

目から涙が出ている。

しかし、猿ぐつわをされていて言葉にならない。


『ゔーゔーゔーゔー』

と唸りながら体を捩り、より一層の抵抗を見せている。


椅子に座らされた男は抵抗を見せる女と子供をみて

叫んだ


『やめろー!やめてくれー!妻と息子には手を出さないでくれ!』


だが、猿ぐつわをキツくされていて言葉にならない。


すると…………。





ジリリリリリリリリリリリ


目覚し時計が鳴り響く。

男が飛び起きる。

マンションの1室のベッドの上にいる。

またあの夢か…。


ゔーと唸り声を上げながら

ダルそうに手を伸ばし、目覚しを止める。

洗面所に行き顔をあらう。


太ももの傷を指でなぞりながら…

まだ、あの時の妻と子供を守れなかった事が夢に出る。

いや、一生夢に見る事だろう。


洗面所の鏡に映る自分をみる。

真っ青な顔色

鬼の様な表情

あの夢を見た日の寝起きの顔はいつもそう。

復讐に燃える鬼の形相とでも言うのだろう。


そしてこの夢を見た日はきまって事件が起きる。




携帯が鳴る。

寝室に置いてある携帯が鳴っている。


はぁ 


やっぱりかというようにため息をつく。


タオルで顔を拭きながら寝室に行き

携帯の画面を見る。



やっぱり

警察署からだ…。


『はい 鰐淵です。』

少しダルそうにでる。

直接自分の携帯に連絡がくるのは

事件に決まっているからだ、

それも、おそらく大きな…。


『隅田川にて水死体があがりました。

例の5人目の被害者の可能性があります。

至急現場に向かって下さい。』


『わかった…。』

やっぱりかと元気なく答える。


電話先の相手は気に留める様子もなく言葉を続ける。

『場所は・・・・・・』








複数のパトカーのサイレンがなる。

東京都墨田区の白鬚橋の麓に複数のパトカーと救急車が1台集まっている。


スーツを着て白い手袋をした若い男が、

がっしりとした体格の、スーツを着た男に話しかけている。

そう、よく刑事ドラマで若手の刑事が、上司の刑事に報告をしている場面を思い描いてほしい。

まさにその場面である。


『害者は、身元不明、40歳代、男性です。そして…』

と若手の刑事が、何か付け加えようとした矢先に


『おう。あちらは?』

と背は180センチ位のガッシリとした肩幅のケンカの強そうな刑事があごで向こうを指す。

そう、先程の夢を見ていた男で、若手刑事が報告していた男だ。


向こうには、ダウンジャケットと暖かそうなモコモコのズボンを履き、チワワを抱えた70歳位の老人がいた。


『第1発見者です。

この辺に住む75歳の男性で、早朝、犬の散歩で川岸を歩いていたところ、犬が突然吠え出し、吠えている方をみてみると、遺体が川に浮かんでいたとの事です。』

若手刑事が簡潔に説明し、少しだけ得意げな表情をみせる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ