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第3話 お預け

 今日はこちらの世界に転生して2週間と3日という記念すべき日だ。キリが悪いと思わなくもないがきっと気のせいだ。俺は日課の川での水浴びをしながらこれまでのことを振り返る。


 というのも待てども待てども、町どころか人っ子1人見つからないのだ。使い魔コウモリ達は俺と同様に睡眠を必要としないので一日中探索することが可能だ。にも関わらず、見つからない。暇すぎて魔物狩りが捗る捗る。お陰様で今のステータスはこんなかんじ。


 〈神魔族:吸血鬼(純血種):下級〉

 Lv 5/100(4up)

 [種族スキル]

 暗黒魔法Lv 3(2up)

 血魔法Lv 2(1up)

 神聖魔法Lv 1

 聖火魔法Lv 2(1up)

 超音波Lv 3(2up)

 飛行Lv 1

 完全代謝

 超回復

 [固有スキル]

 同調

 ・雷鹿(ランクD) 同調率 0.018%

 ・狗頭鬼:下級(ランクE) 同調率 0.0052%

 ・緑鬼:中級(ランクE) 同調率 0.0036%

 ・緑鬼:下級(ランクF) 同調率 0.00274%


 まず種族スキルに関してわかったことが2つある。1つ目は、使えば使うほどスキルのレベルは上がることだ。使いやすく重宝している暗黒魔法と常用している超音波の伸びがいい。一方で血魔法は面倒で使わないこともあるし、聖火魔法なんて肉を焼くときにしか使わない。


 そして2つ目は、スキルのレベルが上がるとそのスキルの性能も上がることだ。それがわかりやすいのは暗黒魔法で、コントロールがしやすくなったり、単純に技の威力が上がったりなど。加えて、操れる使い魔の数が3匹→10匹→20匹と増えていった。使い魔コウモリ自体の質も上がり、俺の魔力を使った暗黒魔法の発動が可能になった。とはいっても使い魔を媒介する魔法の発動には通常よりも多くの魔力を使うという欠点がある。


 固有スキルに関しては、今のところ順調といったところか。途中でゴブリンの上位種のようなボブゴブリンやコボルドみたいな奴らと出会ったが、暗黒槍一発でやれる程度のモンスターだった。どちらかといえば、狩るのに飽きて木の上でずっと寝転んでいたせいで後半は同調率の変動は少なくなっていた。ただ、前半の頑張りのおかげで俺自身もLv 5まで上がっている。それによって身体を巡る魔力の量が増え、身体能力も上がっている。結果としてはそれなりには満足している。


 さて、本題に戻ると、なぜ今日が記念すべき日なのかということだが、ついさっき使い魔コウモリから小さな村を見つけたという連絡があった。どうやら人間の村らしいが、この世界には人間しかいないのか?魔物や俺みたいな吸血鬼もいる世界だから人間以外の村もありそうだか。まぁ、コウモリの偵察ではそれなりの規模の開拓村のようだ。情報集めに足掛かりとしては及第点だな。とりあえず村人と接触する前に俺の格好をどうにかする必要があるな。返り血で汚れまくっている。それなら、


【神聖魔法Lv 1】


 このスキルを使うには魔力とは別物のなんらかのエネルギーを消費する。それによって『回復』や『浄化』など神聖っぽい技を使える。今回は『浄化』で汚れを落とした。水浴びで落ち切らなかった汚れが俺から弾かれるように消し飛ぶ。それなら水浴びの意味がないじゃないかという意見は受け付けない。そんなもの気分だ。


 身体は綺麗になったが、俺は未だ素っ裸のままだ。魔物の皮で腰巻きを作ってみたが、俺には原始人スタイルが合わなかった。だが人間と会うのに裸はダメだろうな。しょうがないのでスキルでどうにかするか。


【暗黒魔法Lv 3】


 スキルを発動すると、暗黒的な何かが俺の全身に覆い被さる。そして暗黒が物質化し、即席のマントが出来上がる。こいつはいざとなれば盾にもなる優れものだ。普段は邪魔になるから使わないが、これから人前に出るような時には使うことになりそうだな。


 一通りの準備を終えた俺は【飛行Lv 1】を使い、森の上空を爆進する。側から見たら今の俺は高速移動するクソでかいカラスに見えるだろう。完全に新種のUMAだな。


 ◆


 俺は村に近くの森に降り立ち、徒歩で進む。観察すると木々の間隔がかなり空いている。どうやらここらは浅い方の森のようだ。まぁ、人間が開拓するくらいだからそれも当然か。ただ植生自体はそこまで変わりはないよう….、お、『反響定位』の範囲内に何者かが入ってきたな。村の方向から来ているから村人確定だな。【超音波Lv 3】になったことで『反響定位』の範囲は3kmまで、精度も形がはっきりとわかる程までに上がっている。それによると今回第1村人になるのは15歳ほどの青年のようだ。子供は警戒心が強い反面、手懐けやすくもある。彼には村への案内人になってもらうとするか。


 Oh…、まじかよ。大問題発生だ。というのも、俺は対面する前にひとまず彼の様子を使い魔コウモリで観察してみた。彼は独り言をぶつぶつ呟きながら、薬草採取したり、木に何かの印をつけたりしていた。問題は彼の独り言についてだ。俺には彼の喋っているのが何語なのか全くわからなかったのだ。言葉が通じない可能性自体は考えていたが、本当に起こってしまうとは…。謎の光が便宜を図って、翻訳スキルでもくれればよかったのに。面倒だ…。


 何はともあれ、今のままではコミュニケーションすら取れない。俺はこっちの世界でも語学勉強をしないといけないのか…。しょうがない。どうにかするか。


 ◆


 言語の壁にぶち当たってから1日が経った。そして俺は既にこの国の言葉をある程度習得した。自分でも驚きだ。手口は簡単だ。探索に出していたコウモリの半数をこちらに喚び出し、ムカデに作り替えた。100匹ほどに増やしたガサガサうごめくムカデたちを村の方に解き放ち、家に侵入させた。家の作りはかなり簡易的なものであったので入りたい放題だった。それによって、村人たちの会話を盗み聞きしたのだ。そして、どうやら吸血鬼は情報処理能力までも高いようで、ムカデを介して大量に流れ込んでくる謎言語をただ聞いているだけで単語の意味や文法の規則性などが少しずつわかるようになった。最終的に、普通の会話程度なら行えるレベルには達した。吸血鬼さまさまだ。


 俺は言語学習のついでにムカデを使って情報収集も行った。そしていくつかわかったことがある。この開拓村は北東75-4村といい、名前の通りエミディア王国の王都レルフの北東に位置するらしい。ただこの村はかなり田舎にあるようで、多くの情報を集めれそうな最寄りの大きな都市は辺境都市アルセルだ。ひとまずの目標は、アルセルで冒険者という身元不明者でもなれるらしい職に就くか。


 その前に、今は変態脱出のための服と生活基盤を整えるためのお金が欲しい。どちらもこの村で調達したいが、服はいいとして、お金の方をどうしようか。この場合、魔物の素材を換金してもらうのが一番無難だろうな。ここには手ぶらできてしまったから何か見繕う必要があるな。パッと思い浮かぶのが、雷鹿の毛皮くらいしかないな。まぁ、村の文化レベルを見た感じ、魔物の毛皮でも喜ばれそうだ。二度手間になるが、森の深くまで戻って狩ってくるか…。

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