表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/68

64.とある家政婦の述懐。

何故か二人もNo.3がいたので慌てて修正しますた。



 「ええ、ええ。No.4。どうやらこの中では、()()()()()()()()()様ですねぇ……」


 ()()()は、そう創造主様から言われた事がある。ワタシは()()を”誇れ”ば良いのか……No.1~15までの番号を振られたワタシ達には、その様な()()など最初から存在していない。ワタシはその時聞き流す事にした。


 「ふむぅ。どの斬り口も鮮やかでございましょう? ほほほ、ご覧下さいませ。あの屈強な”大地の人(ドワーフ)”ですら、わたくし共の()()でしたらこの様に。ええ、ええ。閣下も()()()……どうでございましょう? 今ならこの”森の人(エルフ)”の男の子もセットで、お付けいたしますよ」


 ”試し斬り”。


 ワタシ達の”性能”を、お客様に披露しろ……創造主様のご命令だ。


 命令には絶対服従。そうワタシ達は”調整(プログラム)”されている。ヒトガタが相手だろうが、ケモノが相手だろうが、そこに差違は無い。


 手にする武器は、各々ワタシ達の体躯に見合ったモノ。ワタシが持つ得物は、二振りの短剣。他よりも間合いが狭いワタシは、素早さと手数を優先して調整された為()()なっている。


 創造主様に”調整”されたワタシ達は”商品”。”売れて”こそ、その意味がある。


 「ほほほほほ。確かに。これは良い買い物かも知れんのぉ。ふむふむ。では、ワシはそこの赤髪と金髪の奴を頂くとするわい。ああ、そうそう。森の人はできれば娘が良いのだが……」


 「ほほう。閣下は尻穴はお好みではないと? それは申し訳ありませなんだぁ。ええ、ええ。では閣下。お詫びも兼ねて、森の人の母娘両方をお付けするといたしましょう。さぁ、No.1、No.3。今日からこのお方が君達の”ご主人様”ですよぉ。精々お励みなさいな」


 アレらは体躯も良く、力がある。両手剣を軽々と振り回す膂力があり、殲滅力だけで言えば、ワタシはアレらには一歩も二歩も及ばない。だから、これは仕方が無い。


 「No.2、行ってきなさい」


 ……何故? アレは、ワタシより力も弱く、動きも遅い。何故ワタシが選ばれない?


 「No.5、No.12。お二人ともお達者で」


 ……なんで? その二つは魔法が使えるから選ばれたというのですか”お客様”?


 「No.11、No.14、No.15。あなた達はぁ、素晴らしい”ご主人様”方に出逢えましたねぇ。ええ、これからも頑張って」


 ……どうして? ソレらはワタシに一度たりとも勝った事が無いというのに。 


 「ほほう、No.10でございますかぁ。いやぁ、これはお目が高い!」


 ……ワタシの目の前で、”同型”が次々に()()()いく。


 何故だ?


 ワタシは、()()()()()()()。その筈、なのに。


 何故ワタシは、選ばれない? どうして売れ残る?


 ワタシの得手が短剣だから? 殲滅力が無いから? 魔法が使えないから? 何故? 何故っ? 何故っ?!


 「ははは、良い”商売”が続いている様だな。父上もさぞかしお喜びになるだろう」


 「ええ、ええ。お陰様を持ちまして儲かっておりますよ、ギリアム坊ちゃま。もう本当に儲かって儲かって。更には帝国に甘美な”毒”までをも、わたくし共の手で仕込まさせていただけているのですからぁ。ああ、笑いが止まらないとは、きっとこの事を言うんでしょうねぇ……ええ。今後、わたくし共の”販路”、帝都にまで拡大させてご覧にいれましょう」


 ”帝都”にまで行けば、ワタシを高く買って下さる”ご主人様”が、現れるというの?


 此処、”城塞都市”ではなく、帝都にまで、創造主様と行けば……?


 ”売れ残った”ワタシを、”お客様”は選んで下さるというの?


 「良い。貴様、良く弁えておるな。その話、(おれ)にも充分益があるわ。父上には良くやっていると、しかとお伝えしておこうぞ」


 「ええ、ええ。アルバート侯爵閣下にはよろしくと、是非にお伝え下さいませ。ギリアム坊ちゃま」


 創造主様が、頭を下げる。


 ワタシ達は一斉にそれに倣う。


 そうする様にワタシ達は”調整”されている。そこに一切の疑問を挟む余地は無い。一番最初の”調整”項目が、それだからだ。


 「はははははっ、良い。そこな”人形”どもを使い、精々我と我がアルバートを潤せ。然らばそれが我が”西風王国(ゼピュロシア)”を潤す事に繋がるのだからな」


 男の気配が消えるまで、創造主様とワタシ達は頭を垂れたまま動かずにいた。


 ここまでせねばならないのだから、創造主様にとってあの男は、きっと良い”お客様”なのだろう。ワタシ達を()()()は下さらない”お客様”なのに。



 ◇◆◇



 『これはこれは。城塞都市が誇る最強の冒険者様ではございませんか。この様な薄汚い”小屋”にお越しになるとは、貴方様は一応は”貴族”であらせられる筈。そこまで生活にお困りではないでしょうに……』


 

 ……売れ残って。



 そして、生き残って……



 ワタシ達の”価値”は、一体何処にあるというのでしょうか?


 圧倒的なまでの”戦力差”によって、ワタシ達は敗北してしまいました。創造主様を失い、己の”商品価値”を失い……何もかも無くした後に目覚めたこの世界の何処に、ワタシ達は”存在”すれば良いというのでしょうか?


 「そんなの俺が知るかよ。だが、てめぇらが少しでも”生きたい”。そう思うのなら良い”ご主人様”に会わせてやるぜ?」


 そう宣う”頭髪が一切無い筋肉男”の口車に、ワタシ達は縋るしか無かった。


 売れ残って生き残った上に、創造主様までをも失ったワタシ達には、”道標”も無ければ、”存在価値”も無いのだから。



 『ああ、よろしく頼む。一応俺は、君達と殺し合った仲になるし、元の主を殺しているのだが、その事については、君達に何か思う所は無いのか?』



 ハゲの筋肉達磨に紹介された”ご主人様”は、あの時遭遇した異常戦力。


 ワタシ達と”同種”でかつ、比較するだけ意味の無い異常な技能(ちから)を持った男。


 ワタシと同じ黒目、黒髪の、一見弱そうな見た目とは裏腹に、あの男が内包する特異なまでの”戦力”は、一薙ぎするだけでワタシ達は簡単に消し飛ぶだろう。


 売れ残り、生き残ってしまった以上、ワタシ達に選択の余地は微塵も無い。


 ”ご主人様”が気に入らないと仰るのであれば、ワタシ達はこのまま”廃棄”されるのみなのだから。


 「いえ、特に何も。戦って死ぬのは、己が未熟だった……それだけにございましょう? そして、今の主は、貴方様。ワタシ共には、それ以上でも、それ以下でもございません」


 だから、ワタシはこう答える。


 願わくば、この男がワタシ達の”価値”を正しく”理解”し、”使って”下さる”ご主人様”であって欲しい。


 そうでなくば、ワタシの今までの生きてきた”意味”が儚く消えてしまうのですから。


 ”人形”として、今まで”調整”されてきた、ワタシの……全て。


 そうでなくば、きっとワタシは簡単に”壊れて”しまうでしょうから。


 だから、どうか、ワタシを”失望”させないでくださいまし?


 ねぇ。どうか、どうか、お願いいたします。ワタシの”ご主人様”……



誤字脱字がありましたらご指摘どうかよろしくお願いいたします。

評価、ブクマいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ