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夕焼け色のハッピーエンド  作者: ドラ太郎
3/7

道路工事のおじさんとサンドイッチ

次の日は、快晴で、朝から太陽がまぶしい。

ニュースによると、また気温がぐんと上がって、お昼は汗ばむ陽気になるらしい。

昨日、お鍋を食べたばかりなのに。

今日も張り切って頑張ろうと思っていた矢先、騒音が鳴り響いた。

店先の道路で、道路を舗装するための工事が始まったらしい。

うそでしょ?

以前、学校の通学路途中で、工事をしていたけれど、それがまさかうちの前までくるなんて予想もしてなかった。

「あ~、うるさい」

ドリルで道路を掘り返す音が、問答無用でお店の中まで入り込んでくる。

おかげで、声の小さなお客さんの場合、よく聞こえなくて何度も注文を聞いてしまう。

「もう、文句いってやりたい」

あたしが、ひとりでぶつぶつ文句を言っていると、

「仕方がないでしょ? 仕事なんだから、我慢しなさい」

「だって……」

「前の道路、あちこちひびが入ってボロボロになってたし、よく子供が走ってこけたりしてたから、あぶないと思ってたのよ。丁度よかった♪」

お母さんは、のんきだ。

この工事のせいで、お客さんが来なくなるかもしれないのに。

工事現場には、4人のおじさんたちが、砂やほこりまみれの作業着を着て必死で働いている。

みんな、真剣な表情で汗水たらしながら懸命に働いている。

本当に一生懸命に。

……そっか、そうだよね。仕事だもん。仕方ないか。

 あたしは、彼らの姿を見て、なにも文句を言えなくなった。

それにしても、今日は、本当にあつい。

なんだか、夏が戻ってきたように、むしむしする。

お店の中にいる私でさえ、こんなに暑いのに、あのおじさんたちはどんなにきつい思いをしているのか。

 お店でひまができれば、あたしは彼らをじっと見つめていた。

あたしが、お昼を食べ終わってしばらくして、彼らもやっとお昼を食べ始めた。

だけど、みんな道路のすみに座りこんで、日陰もないところでお弁当を食べている。

あんなところじゃ、休憩になるわけがない。

あんなところじゃ……。

そうだっ。

「ねえ、お母さん」

あたしは、お母さんにあるお願いをしてみた。

その結果……。

「もちろん。いいわよ。失礼のないように、礼儀正しくね」

よし、無事に許可を得た。

「じゃあ、いってくる」

「はい、いってらっしゃい」

少しの間だけ、お母さんに店番を任せた。

あたしの足は、おじさんたちに向かった。「あ、あの……」

「ん? どうした?」

おじさんたちの視線は、いっせいにあたしに集中した。

「あたし、あのお店のものです。よかったら、あのテーブルと椅子を使ってください」

あたしは、店先のテラス席を指さして、店までくるようにうながした。

「え、いいのか?」

おじさんたちは、顔を見合わせて困惑したものの、すぐに笑顔になった。

「じゃあ、せっかくだから、ご厚意に甘えよう」

「どうぞ、どうぞ」

断られなくてよかった。

おじさんたちは、全員で4人。

みんな汗と泥だらけで、すごく汗だくだった。

 もしかしたら、テーブルやいすも泥で汚れるかもしれない。

 だけど、仕事とはいえ、家の前の道路を一生懸命きれいにしてくれているのに、あたしはどうしても放っておくことが出来なかった。

「おー、涼しいな、ここ」

テラス席は、もちろん日陰の中にあり、すぐそばには大きな木がたっているので、涼しい風を時々運んできてくれる。

「本当に、俺たちがここに来てよかったの?」

4人の中で、一番がたいの良いおじさんが、心配そうに聞いてきた。

ふっくらやわらかそうな大きな体に、やさしそうな顔、そして毛の短い丸い頭。

なんだか、この人、森のクマさんみたいでかわいい。

あたしは、心の中でクマおじさんと勝手に名付けた。

「もちろん。それよりよかったら、どうぞ」

あたしは、キンキンに冷えたお水をテラス席まで運んできた。

「あ~、嬉しい。助かるよ。天国だな、ここは」

ただの水なのに、おじさんたちは、大歓声をあげた。

「いつもご苦労様です」あたしは、笑いながら、一言そえた。

すると、別の小柄の男性が、

「本当だよ。この仕事、きついったら、ありゃしない。少年、きみにはこの辛さはまだわからないだろうけど」

少年⁈

あたしは、一瞬固まってしまった。

「あ、あたし……」

あたしは、顔が真っ赤になった。

こんなに髪が短いんだから、男の子に間違われたって無理がない。

以前、男の子になりたいって思ってたはずなのに。

なんだか、すごく、恥ずかしくなった。

「なに、いってんだよ。この子は、女の子だろ」

クマおじさんが、少し怒り気味で、仲間に言い放った。

「え⁈ え~、ほんとに?」

あたしは、こくりとしずかにうなづいた。

「ご、ごめんな。 おじさん、てっきり男の子かと思った。本当にごめん」

やせ形のおじさんが、すごく謝ってくる。

「全然、大丈夫です。あたしこそ、こんなに髪が短いから無理もないです」

あたしは、自分の頭をくしゃっとさせた。

「お前、よく気が付いたな」

別の男性が、クマおじさんに感心している。

「そりゃ分かるだろ。こんなに親切で、優しくて、なによりも仕草が女の子だろ」

「そう……だよな」

みんなが、またあたしに注目した。

「今日は本当に助かった。いや救われたよ、ありがとう」

クマおじさんに続いて、他のおじさん達からもおなじことを言われた。

救われた、だなんて。

初めて人から言われた。

嬉しい。こんなあたしでも人を救えるなんて。

「名前、なんていうの?」

クマおじさんが、あたしに聞いてきた。

「あたし、西野ともこって言います」

「ともこちゃんか。おじさんは、黒川ノブオって言うんだ。ノブでいいよ」

「クマおじさん……」

「へ?」

おじさんは、きょとんとしている。

「もし、よかったらクマおじさんって、呼んでもいいですか?」

「え、いいよ、いいよ。なんて、呼んでくれても大丈夫だ」

クマおじさんも、快く笑いながら承諾してくれた。

「軽く自己紹介すると、趣味は休みの日に、いつもサッカーをやってるんだ。あと、少年漫画も大好きかな」

クマおじさんの言葉にあたしの胸がドクンとなった。

「あ、あたしも、わたしもサッカーが大好きなんですっ」

あたしは、興奮している。

「あたしも、よく公園でサッカーボールの壁当てをしてるんです。ストレス発散にもなるし、少年漫画も大好きです」

「おい、おい、本当に男の子みたいだな」

やせがたのおじさんが、突っ込んでくる。

「だから、失礼なんだよ、お前はさっきから」

「あ、しまった。つい……」

「全然、平気です。だって、本当のことですから」

それより、あたしは、クマおじさんと話があうことがすごくうれしい。

そういえば、最近、誰かとサッカーをしてないし、もしかしたらクマおじさんが相手になってくれるかもしれない。

「あの、工事は、いつまであるんですか?」

「工事? んー、まー、大体、あと1週間ぐらいかな?」

クマおじさんは、仲間たちの反応を伺いながら、答えた。

「だったら、その間、昼休み時間は、ずっとここを使ってください。だから……」

「え、いいの。 やったー」

やせ形のおじさんが、一番に喜んだ。

この人が、一番若いみたいで、一番こどもっぽいな。

「それは、だめだ。そこまで甘えるわけにはいかない」

クマおじさんが、止めに入った。

「だいじょうぶですよ」

お母さんが、突然、会話に入り込んできた。

「あたし、この子の母で、このお店のオーナーです」

「あ、このたびは、どうも、娘さんのご厚意に甘えてさせていただいて……」

クマおじさんたちは、立ち上がって礼を言った。

「とんでもない。それよりも、その1週間の間だけでもうちのテラスでお昼を食べて頂けないですか? この子がこんなに嬉しそうにしたのは、久しぶりなんです。本当に久しぶりで、あたし、嬉しくて」

お母さんは、やっぱり気が付いていた。

あたしの抑えきれない嬉しさに。

「ね? お願いします」

「でも……。本当によろしいんですか?」

「ええ、もちろんです」

お母さんは、ずっと笑顔のままだ。

「では、お言葉に甘えて……」

「はい、じゃあ、約束ですよ」

食事を終えたクマおじさん達は、再び立ち上がってお母さんに礼をして仕事に戻って行った。

やったー。

あたしは、心の中で、ガッツポーズをした。

 しかし、次の日は、一気に気温が下がり、秋らしい気温になった。外でお弁当を食べるには、ぴったりの気候だ。

おじさんたちは、昼休みになると、クマおじさんだけが来てくれた。

「よっ、おつかれ」

「お疲れ様です」

よかった。ちゃんと来てくれた。

けど、他のおじさんたちは、みんなトラックから出てこない。

「あの、他のみなさんは?」

「あ~、アイツらは、トラックの中で飯くってる。あっちの方が、落ち着くんだとさ」

「え?」

てっきり、喜んできてくれると思ったので、少し意外だった。

「昨日は、本当に助かったよ。ありがとう。感謝してる。だけど……」

クマおじさんは、優しい笑顔だけど、どこか真剣だった。

「俺たちみたいに、小汚い格好をしたおじさんがいたら、お店にも他のお客さんにも迷惑だろ? あいつらも気を使ったんじゃないかな?」

そう……なんだ。そんなこと気にしなくていいのに。

「でも、クマおじさんは、来てくれたんだ」

「俺は約束の方が大事だから」

カッコいい。

男は、見た目じゃないとあたしは心からそう思った。

 その日から、クマおじさんは、お昼になるとうちに来てくれて、少年漫画の話や、サッカーの話で、たくさん盛り上がった。

クマおじさんは、自分自身のこともたくさん話してくれた。

結婚はしていたけど、3年前にすでに離婚していることや子供が二人いること。

その子供とも、別居中で、長い間あっていないとのこと。

だけど、子どもの話をしている時、クマおじさんは嬉しそうだった。

あたしは、その子供がうらやましかった

この人が、お父さんだったら、どんなにいいか。

クマおじさんと話しているときは、本当に楽しい。

学校に行けていない不安や自分への情けなさを忘れることができる。

クマおじさんと友達になろう。

今度の日曜日は、お互いが休みだから、昼、公園でサッカーをする約束までしてくれた。

やっと、念願のサッカーが出来る。

 日曜日になり、あたしは少し早起きをした。

クマおじさんとお昼に一緒に食べる、サンドイッチを作るために。

作ることに夢中になり、気がつくともう、⒒時を回っている。

急いで、朝食を平らげて、寝癖を水でとかした。

サッカーは、昼からの約束だったけど、体をほぐすために少し早めに行くことにした。

 公園には、すでに親子連れや友達同士が、おにごっこや遊具で夢中になって遊んでいた。

 とりあえず、クマおじさんがくるまでは、ドリブルしながら公園内を軽くジョギングすることにした。

1週、2週、3週。

お、いい感じ、いい感じ。

なまっていた体がほぐれてきているのが分かる。

 あっという間に、12時を過ぎてしまった。 

お腹空いたな。

周りの子どもたちは、芝生にシートを敷いてお弁当を食べ始めてる。

だけど、クマおじさんは、まだ来ない。

どうしたんだろ?

 もしかして、来る直前になってお腹が痛くなったとか?

もう少しだけ、待ってみよう。

あたしは、今度は壁当てを始めた。

壁当てだって、楽しい。

ずっと、こうやって遊んでたんだから、寂しくなんかない。

 そうこうしていると、もう辺りは夕焼け色に染まり始めていた。

みんな、家に帰る準備を始めている。

両親に手をにぎられ、満足そうに帰る子供。

自転車に乗って、友達同士でさっそうと帰る子ども。

ひとりぼっちのあたしは、全然さみしくない。

だけど、どうして、来ないの? 

クマおじさんのウソつき。

その時だった。

「ねえ、ちょっと」

だれかが、あたしの肩をポンとたたいた。

クマおじさん?

あたしは、笑顔で振り向いた。

……違う。

そこには、高校生ぐらいの男子が3人立っていた。

3人とも、耳にピアスをしていて、なんだかちょっと怖い。

「そのボール、ちょっとだけ、貸してくれない? どうせ、一人なんでしょ?」

「だ、ダメです。あたし、友達を待ってて……」

どうしよう、声が震える。

「もうすぐ来るから、その人とこれからサッカーをするんです」

「あたしって……。君、もしかして女の子?」

3人のうちの一人が、ニヤッと笑った。

「げ、まじ? 男の子かと思ったぜ」

他の二人も顔を見合わせて、同じようにニヤニヤしている。

「いいね、俺、こういうボーイッシュな女の子、タイプなんだよね」

3人とも、じろじろとあたしを見てる。

「よし、これからカラオケしに町まで行かない? お兄さんがおごってあげるから」

は?

何言ってんの? この人。

「行きません。もう、あたしに関わらないで。もう放っておいてください」

「そんなさみしいこと言わないで、行こうよ。ね?」

一人があたしの腕をつかんできた。そして、放さない。

ウソでしょ?

なんなのこの人たち。

「やめなさいっ」

女の子の声が、響きあたった。

あゆみだった。

どうして、あゆみがここに?

「お、なんだ? また、女の子か?」

「あたしの友達を放してっ。今すぐっ」

だめ、あゆみ、逆らっちゃ。勝てっこない。

「なんだ、この子の友達なの?」

男子高校生は、ひるむどころか、よけいに盛り上がっている。

そして、あゆみもあっさりと捕まってしまった。

「おい、お前らも、手伝え。二人まとめて連れてくぞ」

あたしとあゆみは完全に動けなくなってしまった。

「お、タクシーが来たぞ。あれに乗ろうぜ」

タクシー?

やばい。

でも、どうしよう。

声が出ない。

だれか、だれか助けて。

その時だった。

「あ? なんだよ。あんた…。痛ぇっ、痛ぇてててっ」

夕日が逆光で顔がよく見えない。

だけど、高校生の一人が、地面にしゃがみ込んでうずくまってる。

「その子たちを放せ」

この渋くて、低い男の声は……。

「なんだ。てめえっ」

ともこの腕をつかんでいたもう一人が、その人に殴りかかった。

だけど、その人はひょいとよけ、高校生の腕を後ろからきつく、縛り上げた。

さっきと同じだ。

すごく強い。

「最後だ。その子を放せ」

「わ、分かった。分かったよ。悪かった。いくぞ、早くしろっ」

最後に残った男子高校生が、他の二人を引き連れてさっさと逃げて行った。

あたしは、恐ろしさのあまり、あゆみと共に腰を抜かしてしまっていた。

その人は、あたしたちに近づきしゃがみ込んだ。

「遅れてごめん」

……やっぱりクマおじさんだった。

クマおじさんが、助けに来てくれたんだ。

「バカっ。こんなに人を待たせておいて……。もう、本当に怖かった」

あたしは、クマおじさんの胸をぽかぽか叩いて思いっきり、泣いてしまった。

「ごめんな」

クマおじさんの体は、大きなぬいぐるみのように温かくて、さっきまで恐怖で固まったわたしの心も、ほぐれていくのが分かる。

「ちょっと、ちょっと待ってよ」

あゆみがあたしとクマおじさんをぱっと両手で放した。

「あなた、一体誰なんですか?」

あゆみは、思いっきり、あやしい目でクマおじさんを見ている。

「おれか? おれは、ともこの友達だ」

クマおじさんは、自信満々にそう答えた。

「ともこなんて、気安く呼ばないでよ」

クマおじさんをにらみつけた。

「ご、ごめんなさい」

クマおじさんは、あっさり謝った。

あゆみは、敵対心むき出しだ。

まずい、完全にケンカモードだ。

その時だった。

「ぐ~」

あたしのお腹が力強く鳴った。

恥ずかしい。

お腹が空きすぎて、サッカーボールを蹴る力はもう残ってない。

「ごめんっ」

クマおじさんが、土下座してきた。

「お昼、まだなんだよな。俺のせいで。ほんっとにごめん」

さっき、不良高校生たちを追い返した人とは思えない。

「実は元、奥さんがうちに怒鳴り込んで来て、いいかげん、ちゃんとした仕事をしろってさ。子どもたちに恥ずかしい思いをさせたくないらしんだ」

だから、遅くなったんだ。

「こんなに、毎日頑張ってるのに……ひどい」

毎日、ひっしに汗を流しながら、働いているクマおじさんの姿が目に浮かんでくる。

「まあ、給料アップも見込めないし、こんな奴、愛想付かされて当然なんだけどな」

クマおじさんは、頭をぽりぽりかいて、うつむいた。

「そんなことない。そんなことないよ」

あゆみが、完全に状況を把握していなかったので、これまでのいきさつを説明した。

「なるほど、要するに、ともこのサッカー友達ということね」

あゆみは、理解はしたが納得はしていないようで、

「そりゃあ、あたしは、運動神経ゼロで、ろくにサッカーボールも蹴れないけど、こんなおじさんと……」

やはり、あゆみは、クマおじさんが気に入らないらしい。

だけど、冷静に考えたらそうかもしれない。

見知らぬおじさんとサッカーをするなんて……。

でも、学校へ行けないで、不安しかなかったあたしを救ってくれたのは、間違いのない事実だった。

「今度からは、あたしも誘って。いい? 約束だからね」

あゆみは、するどい視線で、あたしに主張した。

「は、はい」

なぜか、敬語で返事をしてしまった。

「でも、あゆみ放送部は?」

「大丈夫、放送部は当番制だから、非番の時は、出来るだけこっちに顔を出すから。だから、あたしにもサッカー教えて。もちろん、あなたも」

「わ、分かりました」

クマおじさんも、敬語だ。

あゆみは、なんだか気合? が入っている。

でも、これからは、あゆみともサッカーが出来るなんてなんだか信じられない。

「ともこさん」

呼び捨てを注意されたクマおじさんは、さっそく(さん)に切り替えてきた。

「約束のサッカーが出来なかったから、はい、これ」

「ん? なにこれ? 」

小さな紙きれを渡された。

「俺の名刺。うちここの近くだから、また今度こそサッカーしような。よく考えたら仕事終わりでもサッカー出来るし、いつでも訪ねておいで」

クマおじさんの住所と連絡先が書いてある。

本当に、家はここからすぐだ。

工事が終わっても、これからもサッカー友達として遊べるんだ。

そう思うと、これから先のことが、楽しみになってきた。

「あのね、あたし、サンドウィッチ作ってきたんだ。良かったら、みんなで一緒にたべよう」

「サンドウィッチ? 俺の分も?」

「あたしの分もあるの?」

二人とも、ぱっと笑顔になった。

「うん。たくさん作ってきたから3人で食べよう」

「うれしいっ。うれしすぎる」

クマおじさんは、顔を両手で覆って、女の子の様に喜んでいる。

やっぱり、なんかかわいい。

「せっかくだから、あそこで食べよう」

あたしは、その場所に指をさした。

「って、すべり台?」

「すこしでも、高いところから。夕日を見ながら食べたいんだ」

「ともこはあいからわず、夕日が好きだね」

あゆみは、ふふっと笑った。

「そっか。夕日が、好きなんだな」

クマおじさんも、どこか嬉しそうな表情だ。

「うん、大好き」

「実は、おれもなんだ。町が夕日色に染まっていくのを見ていると、すごく癒されるんだ」

また、あたしの胸はトクンと鳴った。

「あたしも。あたしもなのっ」

あたしは、また少し興奮気味で、うなづいた。

「あたしだって、夕日は好きよ」

あゆみも負けずに答えた。

「なかなか俺たち3人、気が合うな」

「そうだね」

サンドウィッチを一つ残らず、たいらげたあたしたちは、また、ここでサッカーをする約束をして別れた。


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