鉱山の戦い
燃え盛る篝火が不規則に揺れている…里に吹き込む風が頬を冷やす…
振るう剣に力を込める度に、力量の差を痛感する…
「シアの弟子とは驚いたぞ!遠慮せずに打ち込んでこい、まだまだ準備運動か?」
早朝の稽古をしていると、クリムトさんに出会ったのだ…
まあ、クリムトさんの館なら当然といえば当然だ…
「まだまだ、ここからですっ!」
魔力を巡らし強化すると、速度と惰力を上げる。
「ほう、それなりには精進しているようだなっ」
クリムトさんが上段からの打ち降ろしを繰り出すと、左手も柄に添え両手持ちにして受け止めた。
「ぐっ」
重い一撃に、腰と膝を折りそうになる…
更に開いた横腹目掛けて右中段回し蹴りが飛んでくる…
「くっ!この人が元祖かっ!」
回し蹴りに左足を上げ受け止めると、クリムトさんが下ろした右足を軸足に変え、左足で前蹴りを繰り出してくる、受け止めていた剣の向きを変えて剣の腹で前蹴りを受け止める…
何度もやられたんだ、僕でも対策を考えますよ…
「ほお、上出来だ!師匠も使っていただろう?あいつも良く喰らっていたからな…ふむ、なかなか筋がいいぞ!」
そう言いつつ、速度を上げた剣術と体術の組合せに対応がついていけず力尽きて大の字で寝転んでしまう…
「うむ、これまでにしておこうか…」
クリムトさんが満足そうに笑っていた。
「あ…りが…とう御座いました…」
クリムトさんが隣に腰を落とすと話しだす…
「剣士は剣を振るう理由で強くなれる…強い思いを剣に乗せるんだ…思いを未来へ馳しらせろ…師匠を越えるのが弟子の恩返しだ…」
「はい…」
そういうと、クリムトさんが腰を上げ、去っていった。
・
ここに、来るのも久しぶりだ…
もう来ることがないと思っていたからな…
「長様、お久し振りにございます…」
「シアか…久しいの、随分と凛々しく立派になりおって…あの、おてんば娘が帰ってくるとはな…襲撃の件なら既に中立都市や魔王国から、警戒の伝令と支援の人員がやって来ておるよ…しかし、お前が駆けつけてくれるとは…心から感謝するよ」
長様は昔から変わらないな…
「はっ、少しでも戦力があればと…それで、長様、里の竜穴とは?」
「里の奥の社に奉られてい要石だろう…
すでに里の戦士団と魔王国の兵と中立都市からの派遣冒険者が防備を固めておるよ、山中にも、かなりの見張りを放っておる、襲撃の規模がわからぬ…明確な軍隊のほうがらくじゃわい…」
この里を見つけるのは困難だが…
古竜だと該当しないだろう…
………………………………!?
ドォォォォゴォォオォ…
耳をつんざく、爆発音と共に里に甲高い鐘の音が、響き渡る…!
「敵襲…!」
兵士が駆け込んでくる…!
「長様は避難を!私も行って参ります…!」
直ぐに魔剣を剣帯に装備し直すと、長の館から駆け出す、煙の上がっている場所から、けたたましい戦闘音が聞こえる…
敵の数は一人…いや一体か…?
有翼の魔人のようにも見えるが、直ぐに古竜だとわかった…人化というやつか!?
自身の身体ほどある大剣は強力な魔力が迸っている…
そんな大剣を片手で振り回し、同胞たちを葬ってゆく…
「やぁ…めろぉー!」
魔力を巡らせ最高速で接近し切り付けると、
竜人が大剣で受け止める…
「弱いのが何人来ようと同じだぞ…」
竜人の爬虫類の目だけが、ギョロっと向きを変えるとシアの魔剣を受け止めた大剣を振り抜きシアを吹き飛ばす…
シアが空中で体勢を立て直し着地すると、もう一度最高速で接近する。
「こざかしい…」
竜人が呟く…
シアが魔剣を両手持ちでフルスイングの横切り放つと竜人が鋭い爪の手で刃を受け止める。
「うっらぁー!」
止められた魔剣の一撃に更に魔力と力を込めて振り抜くと、竜人の手に切り傷を負わせる…
「すこしはマシな人間がいるではないか…」
竜人が呟いた。
辺りを見回すと、魔王国と中立都市から派遣された兵士や冒険者が駆けつけてきた…
「助太刀する」
冒険者が声をあげると、駆けつけた者達が一斉に攻撃を開始し始める…
竜人がニヤリと笑うと大剣を高く掲げた…