鉱山
奥深い山道を登り、見分けにくい獣道に入ると、方向感覚を失ってしまいそうになる…この時間帯の月や星の位置に方位磁石と地図を確認しつつ、慎重に進む…
樹齢何十年いや何百年…だろうか…?
背の高い植物が空を遮るように、ひしめき合い外界からは分かる事の無い異様さを醸し出している…
いつからだろう…?
気が付けば登っているつもりが、降りに変わっていた…
「ここらは擂り鉢状になっているところだから外からは、見えにくいんだよ」
シアさんが、所々の木々を確認しながら進む…どうやら幾つかの木には目印がついており、【鉱山】こと狼人種の隠れ里までの道を示しているみたいだ。
「もう少しだ…」
シアさんが振り向かずに話すと、少し足早になっている…
蛇行している獣道を数分降っていると、遠くに篝火が見えてきた、あそこが、狼人種の隠れ里の入口だろう。
槍をもつ門番が僕達をみつけ声をかけた。
「止まれ!お前たちは何者だ!どこの者だ!」
シアさんが旅装のフードマントのフードを下ろすと門番に話す。
「日緋色金のシアだ元々この里の者だ、長にお目通り願いたい!」
シアさんが凛とした声で名乗りあげると、門番が答える。
「お目通りの理由を言え」
シアが、さらに答える
「外界に起きている魔物の大量発生と集落や都市への襲撃…はご存知か?この里が次は狙われている」
門番が考えた末に話す。
「確実な情報か?」
門番の後ろから、金色髪の狼人種が近付いて来た…
「その者は、私の知り合いだ何も問題は無い…そろそろ入れてやってくれないか?お前の仕事は間違っていない。」
シアさんの知り合いか?
「相談役!このようなところに申し訳有りません、シア殿…失礼した…」
門番が道を開けると中に導く。
「里はシア殿あなたを歓迎する!」
シアが答える。
「こちらも急な訪問失礼した…」
金色髪の狼人種がシアさんに笑顔で近付くと長剣を引き抜き居合抜く、同時にシアさんも魔剣を引き抜き受け止める…
「シア息災か?」
「クリムト様もおかわり無いようで…」
その後、数分間剣の腕を確認し合うようにお互いが剣を収めた…
「ふむ、少ししか腕は上がってないようだな外の世界で得たものが少ないと見える…」
「師匠お言葉を返しますが師匠こそ腕が鈍ったのではないですか?」
クリムトさんが満足したかのように笑って答えた。
「はっは、言うようになったな跳ねっ返り、その子達は…?」
「採石所の宝石色の子達で旅の仲間です」
シアさんが笑顔で応える。
「そうか…長旅大変だったろうに…誰かっ!館に案内しろ!」
「はっ!」
狼人種の女性が案内してくれるみたいだ…
どうやら今日は暖かいベッドで眠れるようだ…
師匠の師匠か…
その夜は疲れている筈なのになかなか寝付けなかった…