氷蜥蜴
山間部から吹き下ろす冷たい風が、落ち葉を舞い散らしてゆく…
遠くに見える山々は白一色で統一され、既に冬の到来を告げている。
「振り切れっー!」
殿を務めるシアさんが怒号をあげ、軍馬の腹を踵で叩き速度を上げる。
プラムが先頭を走り、ユアンナちゃん達、僕達、そして、シアさんだ…
.
先刻程前の話だ…
ユアンナちゃんが辺りを見回すと呟く…
「この森、おかしい…」
最初に違和感を持ったのはユアンナちゃんだ…
地図通りに山道を進んでいたが、魔獣や魔物の気配もなく平然と進んでいたんだ…
馬を一度止めて気配に集中する…
「気配は無いのに、視線を感じる…」
「何か分からないけど、左から来るぞっ…!」
ユアンナちゃんの後ろにいるモルちゃんが、眼に魔力を流し何かを感じ取ったみたいだ…
ユアンナちゃんが鞍に携えている短槍を引き抜くと、左手で手綱を裁き、馬を左を正面になるように操る…
「はっ!」
ガンッ
上半身が蜥蜴人のようだが、水色の半透色、下半身は透明なのか見えなくなっている…氷で作られたような槍の一撃を放ったのをユアンナちゃんが受け止めた
…
「氷蜥蜴かっ!氷の精霊の一種だっ、気を付けろ浮遊しているぞっ…!」
シアが魔剣を引き抜き声を上げた。
「一斉に来るぞっ」
モルちゃんが全員に告げる…
馬を寄せて聞いてみた…
「数は?」
「わかるわけ無いだろっ!」
能天気め状況を考えろ…
走りながらも馬上でモルちゃんが剣を振るい応戦する…
「ウルマなんか良い案無いのか?」
「有るわけないじゃない…!」
何いってるの!
「そうだよな…ちょっと手綱まかせる…」
ふわっと馬上から飛び降りると魔剣を引き抜く…
「ちょっとオニキスなにやってるのよ!」
殿のシアさんが横を通り過ぎてゆく…
「あのバカっ!」
「時間稼ぎします」
一体の氷蜥蜴が氷の槍を突きだして突進してくる、軸足に、力を込め回避と同時に魔剣をフルスイングで振り抜くと、氷蜥蜴が消滅する…
「いけるのか!?うお!」
違う氷蜥蜴の突進突きを転がってかわす…
こいつら動きが単調だ…猪の突進とおなじだ…
「オニちゃん1人でいけるわけないじゃない…相変わらずお馬鹿さん…」
ユアンナちゃんが跳躍しながら氷蜥蜴を串刺しにしもう一体を消滅させる…
「二人なら何とかなるか…お互いのフォローに重点をおくぞ…うわっぁと…」
目の前を氷の槍が掠める…
「よっ!オニちゃんぼっとしないのー」
ユアンナちゃんがその氷の槍を下からの切り上げで弾き飛ばす。
「それっ!」
隙ができた、その一体を切り付けるが空中に逃げられてしまう…ユアンナちゃんが追撃の跳躍突きで消滅させる…
「たぶん、今のが最後だよ、モルちゃん達を追っかけよう!」
ユアンナちゃんが駆け出してゆく…
頼もしい限りだよ…
僕も魔剣を強く握り締め駆け出した。