魔女と黒い兎
北の地からの旅人達だろうか…厚手のローブは頭から足先まで覆い隠せるほどだ…きっと過ごしやすい南へ向かうのだろう…
一つの場所に身をおかない…僕も冒険者生活を続けたらあんな風になるのか…?
旅人を癒す中継点…
中立都市エマ…商人組合と職人組合の2つの存在がこの都市の生活向上に大きく貢献している、物価も他の都市より低く儲けられており、国民は高い生活水準を維持しているといえる。
一つの難点を上げるとしたら治安だ…
人口100万人都市である中立都市は、自治都市だけあって治安部隊の規律が王国や魔王国に比べると数段落ちるのだ、理由として色々な人種からなる部隊は意思の統一が難しく、硬い規律で縛るより妥協したほうが運営しやすいのだ…
明日には、この街を出発しなければならないので今日中に旅の準備をし直さなければならない…目指す場所は北東…北の山脈手前の狼種の隠里、別名【鉱山】だ。
もし、大規模な戦闘に発展するようであるならば魔王国や中立都市に援軍要請が上がるだろうとシアさんと、シャミィさんが言っていた…
全てが杞憂に終わる事に越したことはないが…と付け足していたっけ…
当初は、シアさん、自分、プラム、の三名だったが此処にウルマ、ユアンナちゃん、モルちゃんが加わる、シャミィさんの任務が三人を僕たちに合流させる事だったみたいだ…
シャミィさんとは少しだけ話したが、
「男は女を守るものだぞ…」
と胸をこつかれた…
この後、ゆっくり王都に帰ると言っていた。
「黒うさ君、次は携帯食糧ですよ、果物の乾物を多く買うのですよ」
「オニキス、次は道具関係だ食糧関係は店が多いが道具関係は良いもを見つけなければならない」
うーん困った…プラムとモルちゃんが意外と、合わなさそうなんだ…
それにしても人が多い…
んっ!?
今、目の前でフードを被った男が黒髪の長身女性にぶつかると謝りながらも足早に去って行った…
あっ…
「プラム、モルちゃん買い出しの続きお願い、たぶん、あの人財布すられてる…!」
「うん、すられてる…すぐ追いかけたほうがいい…
二つ目の通りを右に曲がれば、先回りできる、オニキス急げ!」
モルちゃんが眼に魔力を流すと未来が予測出来たみたいだ…
・
モルちゃんが言った通りの道を進むとちょうど、さっきのスリが走ってきた…
「ちょっと止まれ!盗んだ財布返してもらうぞ!」
不適な笑みを見せスリが話す。
「なんのことですか?人違いじゃありませんか?」
「僕は見たぞ、黒髪の女性にぶつかったあと財布を盗んだのを!」
自信ありげな笑みでスリが話す。
「これは横暴な言い掛かりですな…調べてくれても構いませんよ」
「………!?」
途中、仲間に渡した…?
「納得してくれましたか?私としては事を荒事にしても良いのですよ」
「くっ」
相手が一枚上手か…
ヒュン………
目の前にスリと違う男が降ってくると、地面を転がっていく…
「黒い兎人の子よ、少し詰めが足りんかったが、なかなか愉快であった、さてコソ泥よ妾の財布を盗んだ事は転がっているそいつが吐いたぞ、さて謝罪するか死を選ぶか決めて見せよ!」
スリが腰を抜かしてへたり込むと気力が途切れてしまったらしい…
直ぐに衛兵が駆けつけスリの男と仲間を拘束し連行してゆく。
「ふむ、まぁ良いか兵士たちに後は任せよう、さて黒い兎人の子よ礼を言うぞ、名はなんと申す?」
「オニキスです…」
黒髪の長身女性が近くまで来ると話し掛けてきた、艶やかな黒髪に燃えるような赤い瞳に魅了されてしまいそうになる…
「詰めは甘かったが…ありがとうオニキス、宝石のような名前だな困ったことがあれば魔王国のプルメリアを訪ねよ」
そう告げると、黒髪の長身の女性が去っていった。
「黒うさ君よーやく見つかりましよ、なにぼっーとしてるんですか?」
「オニキスは恐らく魅了状態になっているぞ」
あっ、プラムとモルちゃん…
「大丈夫、スリは捕まったから…」
「黒うさ君、買い物の続き行きますよ!」
「プラムちゃん行き先を変更するぞ、治療院だ!」
モルちゃんに手を引かれ治療院に行くことになったみたいだ…