因縁を断ち切る剣
予測通りの移動をしているな…あと2分ほどで、人気のない路地に入る筈だ…
急に移動の速度が変わった。
「感づかれたかな…」
懐かしい黒髪が見えてきた、得物の魔剣…因縁を断ち切る剣を強く握り締め覚悟を決めて声を出す。
「ひさしぶりだね…オニキス」
驚いた顔は、少し前のウルマちゃんとそっくりだ流石、双子兄妹だな…
「モルちゃん!?」
「生き残れたよ…アンナちゃんも大丈夫だ…」
「集落はどうなったの?皆は?長や母様達は?」
「誰も居なかった…僕とアンナちゃんが隠れていた倉庫から出ると、皆いなくなっていた…何処かに落ち延びたのかと思ったが、わからない…さてと本気の手合わせ願おうか…!」
「ちょっと、モルちゃん!?」
オニキスが戸惑っているが、やらなきゃならない…相変わらずワンテンポ遅いな…
魔力を体に巡らせると身体強化する、アンナちゃんほどでは無いが、これくらいなら造作ないことだ…まずは抜き打ちだ、鞘から魔剣を居合い抜き、横切りを繰り出す!
「マジかっ!」
オニキスが、鞘から4分の1程魔剣の刀身を出し防ぐ…
本気で切り合わないと魔剣の力が発揮されない…心を抉ってでもその気にさせないといけない…自分が嫌になるよ、まったく…
「オニキス、君の力じゃ無駄に死ぬだけだウルマちゃんと王都で安全に生きろ……!」
更に魔剣を振るい追い詰める…
「そんなことは無いっ!師匠にも出会って鍛えた、死線すら数度乗り越えた、これからだって強くなる…!」
わかるよ…強くなってるよ十分に…
「笑わせるなっ!剣を抜かずに何が強くなるだ…覚悟の無い剣は皆を死なすぞ…っ!ボクに
覚悟を見せてみろ、証明してみせろっ!」
魔剣を打ち込むとオニキスが抜かずに回避する…
オニキスは優しすぎるんだよ…
眼に魔力を流すとオニキスの左肩の怪我の見つけ掌底を入れる。
「ぐっ!」
オニキスが踞ると言葉で追い討ちをかける…
「逃げてるだじゃ集落のときみたいにまた殺してしまうぞ…何も救えない、何も守れない…君の代わりにボクとアンナちゃんが君の仕事をこなす、集落の皆だって探し出す…だから、だから…」
あれ…何で眼から溢れてるんだろ…
「分かったよ…僕はいつまで立ってもダメな奴だ…モルちゃんゴメン、僕も譲れないんだ…」
オニキスが立ち上がると鞘から魔剣を抜くと正眼に構える。
眼に魔力を流すとオニキスの未来予測を立てる、なつかしいな幼いときの英雄ごっこを思い出すよ…
オニキスの魔剣に僕の魔剣を合わせる、重い
…あと3分の間に魔剣を発動させないといけない、所有者の運命…もしくは相手の運命を断ち切る…
「本気を見せてみろよ…ボクが納得できる剣を……」
軽い切り傷は与えた…効果はでているのか?
「……」
5合打ち合って、6合目に相討ち…浅くは無いが二人とも死にはしない筈だ…
魔剣がぶつかる度に、魔力が放電する…
ギンッ
思いがぶつかる度に心が傷ついて行く…
ギンッ
これで良かったんだ…
ギンッ
未来視なんて、うんざりだ…
ギンッ
オニキスの運命も変わるはずだ…
ギンッ
二人を魔法の光が包み込んで行く…
互いに脇腹あたりかな…
痛いのはいやだな…
「「だめぇー」」
分かっていたのに、分かっていたから、見えていたから…見えていた結果だから…
「何でだよ…」
飛び込んできた影に止められる…
ボクはアンナちゃんに
オニキスは仲間の女の子に…
「何でよ…」
変えれるかも知れなかったのに…