北の門の守護者3
大陸最北の山脈にその遺跡は在った、標高6000m級の山脈は生物が生存するには余りにも過酷な状況であり、本来ならば歴史的価値が有ろうとも誰もが所有権を放棄してもおかしくない。
実際普段、この遺跡に滞在しているのは門の守護者ファビウスと各国から派遣されている数十名の騎士や戦闘が出来る女中達である、中には魔術師や癒しの奇跡をもつ司祭なども滞在しており、少数ながらの防衛戦闘が可能である、もちろんそれを可能としているのは絶対的なファビウスの戦闘能力によるものだ。
地下空間に存在する遺跡、その最深部に門が存在する、門に到達するには、遺跡の上に建設された砦を落とさなければならない…
「このまま帰ってくれると有りがたいのだがな…」
目の前の竜人は身体の氷を振り払うと、何か考えたように話し始める…
「お前達人間は、いつの時代もこの蒼い星を蝕む…短命種ゆえ精神が成熟する前に代がわっていく…自尊心のみが高いゆえ…建前だけの改善しか行わぬ…この蒼い星はもう死に体なのだ…千年前も二千年前もそうであった…正義は我々にある…なぜ我々が滅ぼされなくてはならない…の繰り返しだ…中には優れた王も存在はした…しかし一時なのだ…人間の魔力依存はもはや病だ…この星の命は、魔力は無限ではないのだ…すでに人間どもの無駄遣いが星の心臓では癒しきれぬのだ………………………………………人間の戦士よ貴様が間引くことは出来ぬか?出来ぬなら門を譲り渡せ、もしくは開けよ…
4方の門が開けば、古代の力で星は甦る…」
神剣を降ろしたファビウスが問う…
「世界の真実がどうであれ、それが本当の真実なのか?お前の言う蒼い星とはこの世界か?星の命が魔力の源だというのか?ならばこの世界はいつ滅ぶのだ?我々と貴様たちの時間の流れは違うのだ、今から500年1000年後だとしたら、それはその時代の者達が切り開く問題だ!」
「…10年」
「このままでいくと、お前達の時間で10年…それがこの星の寿命だ…」
思わず声が詰まる短いのだ…
「なっ…」
賢者シーサンが問う…
「太古を知る古の竜よ…延命処置は…!?」
竜人が世界を見下ろすように雪原を見渡すと答える…
「南の門を持つものよ、すでに行っておるよ竜脈の修正、竜穴の変更、人類の間引き…残るのが門の解放なのだ…」
「門を解放するとどうなるのですか?我々は伝承でしか分からない…異世界の魔物の出現?」
竜人が答える…
「4つの門は、むしろ鍵だ、門が開くと魔物は出現する…新しい世界を作り直す為だ…」
「くそっ、どちらにしても滅びからの回避は無理と言うことか…」
ファビウスが神剣を床に突き刺すと魔力が軽く迸る…
賢者が話す…
「時間をもらえませんか?この件は私たちで判断出来かねる問題だ…」
「猶予をやろう、1ヶ月待ってやろうしかしプログラムは動いている…」
竜人が答える…
竜人が空高く舞い上がると、残りの竜達も舞い上がる…
竜達が消えると、いつしか空から雪が降りはじめていた…