工房にて2
月が上がっているに街の賑わいが衰えない…むしろ仕事を終えた者達が羽を伸ばしに、酒と娯楽を求め繁華街を渡り歩く…
「くそっ、人が多いな…」
目的の店が閉店してしまっては成果を得られないのだ…いろいろ調べて考えていたら時間を掛けすぎた…
直感だが、オニキス達はこの街にいる気がする…
46の未来の中に1つだけ、オニキスに遭遇する未来があった…
場所はガイナス工房…
アンナちゃんとウルマちゃんが出掛けた店だ、アンナちゃんとオニキスの鉢合わせになる未来は見えてないウルマちゃんにしてもそうだ…
ここで、会うことが出来るのはボクだけだ…
ぼやけた未来…いくつか未来を見れる訳だが時折ぼやけた未来が見える、ぼやけた未来には分岐点が存在することが分かった。
水竜との戦いでも、ぼやけた未来は見えていた、あの時は数ある未来に対し深い意味なんか考えていなかった、ただ数を見るだけかと思っていた。
あの戦い後出来るだけ未来を一つ一つ検証する事とした、結果、分岐点とぼやけた未来の関係に確証をもてた。
肩で息をするのを整えてから勢いよく扉を開けた…
「だめか…」
やはりいないか…
「もう閉店だがお嬢さんどうしたんだい?急ぎの買い物かい?おや、兎人種のお嬢さんか、今日は兎人種のお客さんばかりだな…」
なっ…!?お嬢さん!?
まあいいや…
オニキスとは会えなかった…
「おじさん、ちょっと見させてもらっても良いですか?」
「もちろんだよ、なにか気になることがあったら言っておくれ」
なんか安心する店主さんだ…
そうだ、ここに来たもう1つの目的、ある武器を見つける…
眼に魔力を流すと店内を見渡す…
店の隅に古い売れ残りがある一応魔剣…力の弱い魔剣だ…
その一振りを手に取ると、店主が話し掛けてくる…
「お嬢さん…力を持っているのかね、なにか訳ありのようだ…さしつかえが無ければ、その魔剣の話をさしてくれませんか…?」
店主が売れ残りの魔剣を受け取ると、鞘から引き抜き、状態を確める…
「この魔剣は【因縁を断ち切る魔剣】…」
「古代魔法王国初期に魔女オキシルが作りし魔剣…人には必ず誰しも因縁めいたものがある…逃れられない運命といっても良いかもしれない…何故この魔剣が作られたのかも今ではわからない、今代において所有者は魔剣を使って因縁を断ち切った者もいれば因縁に呑まれた者もいた…要は自分次第…とすれば普通の剣と同じ…というのがこの魔剣なのだよ…」
店主が魔剣越しに答えを問いただしているようだった…
「それでも、ボクには必要なんです…」
子供をあやすかのような眼差しで店主が答える…
「そうかい…お嬢さんの因縁が断ち切れることを、心から願おう…」
「お代は、これで足りますか?全財産です…」
宝石をポケットから5つ取り出す…
「これ1つ頂こうか、後はうまく事が進んだらまたおいで、そのときはお嬢さんに合う装備を用意さしてください…」
静かに頷くと挨拶をする。
「おじさん、ありがとうございました」
「まいどあり、気を付けて帰るんだよ今度はみんなでおいで…」
「じゃガイナスさん、あたし、あの子追いかけるから、ありがとうございました」
シャミイが足早に追い掛けていった。
「シャミイちゃんも立派になったねえ…いつからそんなに面倒見が良くなったんだい…」