工房にて
都市と言うだけあって、華やかな衣装であったり、流行り物を携えた者が多い、やはりこういう都会は苦手だ…
王都では、そんなに意識しなかったのに中立都市エマでは気後れしてしまう…
多種族間の交流であったり、西の文化、東の文化が混ざり合うこの街は間違いなく、文化的ハイセンスな人間の坩堝だ。
大通りを歩くのではなく、いりくんだ路地を進んで行く……
「おっ!あったあった!以前より立派になってるじゃないか!」
煉瓦作りの重厚な建物、看板にはガイナス工房、大きな硝子からは中の様子や商品などが伺える。
入口のドアを開けるとシアさんを見るなり店員のお兄さん?おじさん?が、びっくりした顔で話しかけてきた…
「…シアちゃんじゃないか!?」
シアちゃんか…初めて聞くな…
「おっ、もしや二代目息子さん?老けた?」
なるほど、昔はここを良く使っていたわけだ…
「そりゃ老けるよ、10年ぶりくらいか?父さん呼ぶよ、とーさーん」
店奥から店員のおじさんを更に老けさせたおじいさんが歩いてくる…
「どうしたんだい、いまちょうど、昼過ぎの注文を仕上げるところなんだ…んっ…………シアちゃんかい…?」
「親方、やっほ!お久しぶりです!」
シアさんが気さくに右手を軽くあげ、照れながら挨拶している…
うーん、師匠にこんな一面も有るのか…
「これは、べっぴんさんな剣士様になりましたな、あの跳ねっ返りが…何年たったのかの、で後ろの二人は…うーむ…従者いやお弟子さんかな…」
「さすが、親方半分当たり、可愛女の子は旅の仲間でプラム、黒毛の兎人君は弟子のオニキス」
プラムとオニキスが会釈する。
「そうかいそうかい…二人とも大変だったんじゃないか、シアちゃんは容赦ないからな…特にお弟子さんはボロボロじゃないかい…で久しぶりに、顔を見に来たって訳じゃないんだろう?」
優しい顔とは裏腹に何もかも見透しているのは歳の功の成せる技か。
「親方は理解が早くて助かります、実は魔剣を見てほしいのと出来たら制御石を着けて貰いたい、あと抜き身の剣なんで、鞘を見繕ってほしい…」
布に繰るんだ魔剣を親方さん?に渡す。
親方さんがポケットからルーペを取り出し隅々まで目を透すと今度は二度三度軽く振る、指で刀身を弾き返ってくる音を聞いたりしている…
「書かれている文字からして、古代魔法王国中期から後期のギールギールの作品じゃな、これまた癖の強い剣を持ってきおったな…」
「性格反転か…坊やは、この魔剣使ったのかい?」
「はい、で、この様です」
「なるほどな鞘は他の廃棄魔剣のを手直して拵えよう、制御石は今、手持ちが小さいのしか無いからな…それでも良いかい?」
「はい、よろしくお願いします」
シアさん共々頭を下げる。
「数日はかかりますよ、出来次第連絡を入れましょう」
今日は兎人種とよくあう、日ですな…