魔剣
長い影が英雄譚の一騎討ち物語を語るかの如く、うごめいている…
相手の鋭い袈裟斬りを、剣で打ち返し一拍入れず、そのままの惰力で相手を切り上げる…攻守が代わるたびに、示し会わせたように、二合三合と打ち合う…まさかこんな所で強敵に出会えるとは思わなかった…
「はっはっ!なかなか楽しいぞっ!、少しは本気を出させてもらうぞっ!」
魔力を身体に巡らすと身体強化する、更に魔剣に魔力を纏わし連撃を繰り出す。
「がぁぁぁぁー」
同じく相手が魔剣に魔力を纏わすと、負けず劣らずの剣技で打ち返してくる…
魔剣から魔力が迸っている
力任せな打ち降ろしを魔剣で受け止めると、思った以上の惰力に驚愕する。
「うぉっ!」
まさか、力負けしているだと!?
鍔ぜり合いを避け、相手の剣を滑らせると体術を織りまぜて鳩尾と腎臓に膝蹴りを続けて浴びせ距離をとる…
急所には入っている、普通の奴だったら、踞るレベルだ。
「もちろん、向かってくるよなっ!」
構えを解かず向かってくる相手に容赦なく切りつける、相手も応じるかのように、何度打ち据えられようと、攻撃の手を緩めない…
「もう少しだけ遊んでやるぞ、オニキス!」
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遡ること2時間前だ、今日の夜営地を決め、準備も終わったころオニキスが稽古を申し出た。
いやー私も失敗した…
木剣でいつも打ち合ってるのだが、オニキスも魔剣を持っているのだ、私も魔剣と魔剣で打ち合えることは、そう多くないのだ…
「魔剣で打ち合ってみるか?」
「はいっ!」
きらきら目を輝かして尻尾を振るワンコのようなオニキスも魔剣を使いたかったのだろう…
決して私のせいだけでは無いのだ…
最初は普通であった、普通に打ち合い、普通に捌いて、約束稽古みたいな感じで稽古をつけていたのだ。
「実戦だと思っていけ!」
ここからだ、打ち合う度に、目付きが変わり、今では白目を剥いているではないか…
「シアさん、もうやめてあげてほしいのですよ、見てる方が痛いのですよ」
遠くからプラムが声を掛けてきた…
「そうだったなプラムも病み上がり状態だしな…」
シアさんが魔剣を放り投げ、素手になるとオニキスの攻撃を回避したあと回り込み頸動脈を締め上げる…
「シアさん、もう黒うさ君落ちてますよ、口から泡ふいてるのですよ…」
「さてどうしたものか…」
オニキスの魔剣を拾うと少し考える…
何か閃いて頷くと…
「うん、制御石をつけよう、あと鞘が無かったな鞘に何か細工を施すか…」
プラムがオニキスの頬っぺたを叩き起こそうとしている…
「黒うさ君、おーい!」
なんか懐かしいな…練兵所でも私に気絶させられ、プラムに開放されていたな…
「仕方ないな、中立都市に寄ってくか…」