水上の戦い2
穏やかだった湖面に高い波が走る…船体が大きく揺れると船夫たちが甲板を横滑りしてゆく…
錨が上がっているのか、戦闘しながらの後退は難しいぞ…
速度は下位水竜の方が遥かに上まっている…
なっ…
「あいつら、無茶苦茶な戦いしやがって!」
ウルマが氷の魔法を飛ばし、ユアンナが跳躍して一撃離脱を狙ったのは仕方ないかもしれない…しかし二度も通じないぞ…
跳躍したユアンナの攻撃が予想どおり回避され、高い水飛沫をあげる…
「ゆわんこっちゃない…」
シャミィが、マストから飛び降り甲板に着地すると、近くにいた船夫を捕まえ、指示を出す。
「救命用の浮き板あるだろ?全部湖面に、投げ入れろ!」
「そんなの、俺の判断で出来るわけないだろっ!」
「王都の特務隊のものだ、あたしが、この状況をなんとかしてやる!」
隊服のエンブレムを見せ半強制的に実行させる。
「俺は知らねえからな!おい、おまえら、ありったけの浮き板を湖面に投げいれろ!」
船夫か、他の船夫に協力を求めると、仕方無しに実行してゆく…
シャミィが甲板から、しなやか跳躍すると一枚の浮き板に着地すると直ぐに、他の浮き板に移動してゆく…
湖面に落ちたユアンナを見つけると、首根っこを掴み湖面より引き上げると、小脇に抱え
安全そうな距離の浮き板まで移動する…
「あんな戦いかた、するんじゃないぞ…間違えたら命をおとすぞ…」
二本の曲刀を引き抜くと散らばる浮き板を足場に、下位水竜に向かっていく…
下位水竜が尾の一撃を繰り出すと、跳躍しながら回避し二本の曲刀で斬撃を与える…
「くっなんて、鱗だよまったく…」
浮き板に着地すると、下位水竜に届く位置を探し移動し二本の曲刀で横凪に切る。
「もうっ、損な役ばっかりだぁー」
更に舞うように数十回の斬撃を繰り出す…
直ぐさま、違う浮き板に移動すると、様子をみる…
そろそろ効いてくるか…
下位水竜の動きが、さっきより鈍くなり、あきらかに毒の効果が表れている…
ニヤリと嗤うと、跳躍しながら切り抜き、浮き板に着地する…
数度繰り返すと、下位水竜の出血が増えていき弱って来ているのがわかる…
下位水竜が、水中に潜りはじめた…
静寂がはしる…逃げたのか?
近くの湖面から空気の泡が上がってくる…
真下かっ!?
真下の水中から飛び上がるよう、体当たりを出してくる…
乗っている浮き板が、持ち上がると直ぐ様跳躍し間一髪回避する…
下位水竜の動きが元に戻っている…
水中で毒を洗い流したか…
しかし、甲板からの攻撃も続いており、もはや下位水竜は死に体だ…
下位水竜がカッと口をあける…
「ブレスだっ!」
下位水竜が船に向かって高水圧のブレスを吐き出す…
船に直撃する手前で、湖面から氷の壁が出現し直撃を防ぐ…
ウルマか、甲板に視線をむけると、両手を付きだし魔法を維持している…
「あいつらも少しは認めてやるか…」