迷宮からの帰還
風が強い…
広大な湖から吹いてくる風が体から熱量を削ぎとってゆく…
なびく髪を押さえながら空を見上げる…
湖の奥は大きな暗雲が広がっている…まるで悪いことが、起こる前兆のようだ…
「向こう岸は、降っていそうだな…うーん……遅いな…」
焚き火に枯れ木をくべながら1人呟く、私が昔潜ったときは、大したことなかったが…
プラムがいるから大丈夫だと思うんだが…
例えば…
最近強い魔物が住み着いた?住み着いたとしたら王国やギルドあたりが討伐隊を編成するが…
考えても仕方ないか…
近くの水鳥たちが、一斉に飛び立つ…
……………………!
「なんだっ……!?」
足元が、一瞬大きく揺れた…
地震?規模が小さい…地中からの地響き…
何が起こった…?いや、なにかが起こった…?
洞窟は大丈夫か…急いで確認すると…
魔方陣が消えている…
「ヤバい…」
設置されている場所を調べ眼に魔力を流す…
「くっそ、僅かな魔力痕跡すら残ってないのか!」
地面に魔力を流すと僅かに反応する…
魔力を流して維持は出来る?
魔方陣の復旧!?
…無理だ……
維持するので精一杯だ…
早く戻れよ…
あれから、一時間以上は立っている…
既に、日が落ち月が昇っている…
更に三時間…そろそろ私が危ないぞ…
気温も下がってきている…
救助を呼びに戻るか…?
淡い光が地面より発生する…
「ようやくか…」
魔方陣が急に光を取り戻すと強い魔力の流れが伝わってくる…
ボロボロのオニキスとプラムが魔力の渦から、姿を表す…
「無事とは、いえ無さそうだな…大丈夫か?何があった…」
焚き火を囲み暖をとる…簡単な食事をしながら、迷宮での出来事を聞いた…
流石にプラムは寝かしている…
出現する魔物が強くなったこと…
小鬼将と上位悪魔…
プラムの奮戦…
迷宮の隠し階段と隠し部屋、水晶から眠り起きた名も無き女性の存在…
「シアさん、これ…」
オニキスが魔剣を返してくる。
魔剣を受け取ると、オニキスが、もうひと振り剣を持っている…
「戦利品か?」
「小鬼将が使っていたんです、シアさんの魔剣とも打ち合えてましたよ」
「ほう」
オニキスから魔剣を借り、眼に魔力を流し見てみる…禍々しい感じはしない…
細身の刀身に二つ顔の装飾が施されたナックルガード付の柄、鞘は無いのか?抜き身の剣か…
少し気になるが、呪いが掛かっては無さそうだ…
「オニキスも魔剣持ちだな…」
このとき、誰もがこの魔剣に対して何故か違和感を持たなかった…