辛勝
「うおぉぉぉぉ!」
ギンッ ギンッ ギンッ ギンッ
両手持ちした魔剣に気合いを乗せて打ち付ける!
懸命に、精一杯に、必死に、持てる力以上の力を出さなくては勝てない……!
表現を変えれば、死に急ぐ、命を削る…魂を燃やす…
小鬼将も剣を合わせながら、雄叫び上げると同等以上の惰力で打ち返してくる。
打ち付けて、突いて、凪はらって、切り上げる、息をする暇さえない、動きを止めてしまえば動けなくなる…集中力が切れてしまう…
動け!止まるな自分に言い聞かせる!
魔剣に魔力を流し上段からきりつける。
予想どおり、剣で受け止める。
「うらぁ」
受け止めた瞬間に横蹴りを放つ、シアさんが言っていた事を思い出す…
剣だけで戦うな…
練兵所で何度も蹴られたな…
小鬼将が、吹き飛ぶと、一足飛びで突きを放つ。
小鬼将も急いで起き上がると、カウンター一閃の突きを放つ…
「ぐっ、」
急いで起動を反らすことで、肩を僅かに貫かれる、鮮血が舞う…
一気に集中力が削がれる、一気に疲労感が押し寄せる…
小鬼将が好機とばかりに攻勢に転じる…
連続で切り払い、魔力を乗せて打ち付けてくる。
「くっ」
魔剣で受け止めると、小鬼将が、にやついたように見えた…
「ぐふっ」
さっきとお返しとばかりに、前蹴りをもろに喰らってしまう…
「黒うさ君っ!」
プラムの声が聞こえた…
意識が途切れすんだ…
「大丈夫…」
今までのことを思い出す…
魔剣を持ってから大事な事を見失っていた…
魔剣の力に頼りすぎていた…
魔剣を石床に突き刺すと魔剣を手放す…
腰の短剣を二振り鞘から引き抜くと、ひと振りを回転さして逆手持ちする、腰を低く落とし、相手をよく見、耳に意識を集中させる…
乱れた呼吸を整える、深く吸い、ゆっくり吐く…
距離をゆっくり縮め、相手の攻撃範囲に入る…
小鬼将が最高速の斬撃を繰り出してくる…
逆手持ちの短剣で受け流すと、順手持ちの魔法の短剣で鎧の隙間狙って突き刺す…
小鬼将の脇あたりから血飛沫があがる…
直ぐに後ろに飛び退くと落ち着いて、相手の攻撃を待つ、小鬼将が怒り任せて、上下左右から連撃を繰り出してくると、回避に専念し隙ができた、瞬間を狙い、鎧の繋ぎ目、目掛けて突き刺す…
小鬼将に疲れが見え初めると、逆手持ちの短剣を回転さし順手持ちにすると、低い体勢から左右の突きを放つ。
だんだん敵の攻撃が大降りになってくる…
隙が見える…
振り終わると同時に一本の短剣を横腹に突き刺す、深く刺さる感触が伝わってくると手首を捻る
…
小鬼将の動きが完全に遅くなる…
弱々しい打ち払いが飛んでくるが、難なくかわすと、喉目掛けて止めの一撃を放つ…
小鬼将がゆっくり仰向けに倒れてゆく…