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黒い兎の冒険譚 勇者の存在しない…この世界で…  作者: 黒うさモフル
第三章 冒険の旅に
52/117

辛勝

「うおぉぉぉぉ!」




ギンッ  ギンッ   ギンッ ギンッ





両手持ちした魔剣に気合いを乗せて打ち付ける!


懸命に、精一杯に、必死に、持てる力以上の力を出さなくては勝てない……!

表現を変えれば、死に急ぐ、命を削る…魂を燃やす…


小鬼将(ゴブリンジェネラル)も剣を合わせながら、雄叫び上げると同等以上の惰力で打ち返してくる。



打ち付けて、突いて、凪はらって、切り上げる、息をする暇さえない、動きを止めてしまえば動けなくなる…集中力が切れてしまう…


動け!止まるな自分に言い聞かせる!


魔剣に魔力を流し上段からきりつける。



予想どおり、剣で受け止める。


「うらぁ」


受け止めた瞬間に横蹴りを放つ、シアさんが言っていた事を思い出す…


剣だけで戦うな…


練兵所で何度も蹴られたな…


小鬼将(ゴブリンジェネラル)が、吹き飛ぶと、一足飛びで突きを放つ。


小鬼将(ゴブリンジェネラル)も急いで起き上がると、カウンター一閃の突きを放つ…





「ぐっ、」


急いで起動を反らすことで、肩を僅かに貫かれる、鮮血が舞う…


一気に集中力が削がれる、一気に疲労感が押し寄せる…


小鬼将(ゴブリンジェネラル)が好機とばかりに攻勢に転じる…


連続で切り払い、魔力を乗せて打ち付けてくる。


「くっ」


魔剣で受け止めると、小鬼将(ゴブリンジェネラル)が、にやついたように見えた…


「ぐふっ」


さっきとお返しとばかりに、前蹴りをもろに喰らってしまう…



「黒うさ君っ!」



プラムの声が聞こえた…


意識が途切れすんだ…



「大丈夫…」


今までのことを思い出す…


魔剣を持ってから大事な事を見失っていた…


魔剣の力に頼りすぎていた…


魔剣を石床に突き刺すと魔剣を手放す…






腰の短剣を二振り鞘から引き抜くと、ひと振りを回転さして逆手持ちする、腰を低く落とし、相手をよく見、耳に意識を集中させる…


乱れた呼吸を整える、深く吸い、ゆっくり吐く…


距離をゆっくり縮め、相手の攻撃範囲に入る…

小鬼将(ゴブリンジェネラル)が最高速の斬撃を繰り出してくる…

逆手持ちの短剣で受け流すと、順手持ちの魔法の短剣で鎧の隙間狙って突き刺す…




小鬼将(ゴブリンジェネラル)の脇あたりから血飛沫があがる…


直ぐに後ろに飛び退くと落ち着いて、相手の攻撃を待つ、小鬼将(ゴブリンジェネラル)が怒り任せて、上下左右から連撃を繰り出してくると、回避に専念し隙ができた、瞬間を狙い、鎧の繋ぎ目、目掛けて突き刺す…


小鬼将に疲れが見え初めると、逆手持ちの短剣を回転さし順手持ちにすると、低い体勢から左右の突きを放つ。


だんだん敵の攻撃が大降りになってくる…


隙が見える…


振り終わると同時に一本の短剣を横腹に突き刺す、深く刺さる感触が伝わってくると手首を捻る

小鬼将(ゴブリンジェネラル)の動きが完全に遅くなる…


弱々しい打ち払いが飛んでくるが、難なくかわすと、喉目掛けて止めの一撃を放つ…




小鬼将(ゴブリンジェネラル)がゆっくり仰向けに倒れてゆく…

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