弟子らしく
何度目の焚き火だろう…
最初の頃は生木を燃やして、なかなか火がつかなかったり、煙でいぶされたり…
焚き火に枯れ木を放り入れ、一人懐かしむ…
手慣れたものだ、集落を飛び出して冒険者になって。
いつの間にか王都で冒険者兼傭兵をしていたら、特務隊に誘われたり…
で、また気ままな冒険者か…
暗闇の中、焚き火を見つめているとそんな事ばかり考えてしまう…
しかし驚いたな…オニキスがこの剣に触れることが出来るとは…
盟約者のみが扱える大地の古代魔獣が封印されし魔剣…
オニキスの特異能力か…手入れしている魔剣の刀身に、焚き火の炎とオニキスが写る…
「眠れないのか…それっ!」
鞘に戻した魔剣をオニキスに、投げ渡してみる…
「わっ!ちょっとっ!」
オニキスが剣を受けとると、シアは目に魔力を込める。
オニキスの体から魔剣に魔力が流れている…常時発動しているのか…
かなり少ない量だな…ほお、限りなく抵抗がない…
普通、魔法具を使えば消費魔力の他に抵抗魔力が存在する…
例えば炎の出る魔法の杖…10の魔力を使うとしたら炎を出すのに6の魔力を使いあと4の魔力は杖の材質やその場の環境で消えてしまう…それが抵抗魔力だ…
その抵抗がオニキスには見られないのだ…
「プラムはどうだ?」
「プラムならよく眠ってますよ、シアさん魔剣鞘から抜いて見て良いですか?憧れますよね魔剣って…」
魔剣を眺めながオニキスが構えたり、軽く凪払いをしたりしている。
「ああ、構わないぞ」
魔剣の所持は冒険者の憧れだからな…
まあ、魔剣の所持者は国に報告のする義務が発生する…それだけ魔剣は危ない物なのだ。
オニキスは魔剣を鞘から抜くと、数回素振りをしてから、型に入り出し、焚き火を挟んで簡単な剣舞を踊る…
「ほお、なかなか見れるものに、なったじゃないか」
少しは弟子も成長しているのだな…
焚き火の炎が揺れるなか、いつまでもオニキスの剣舞を眺めていた…