魔女と賢者
香が、焚かれる…
今日は空薫にしようか聞香にしようか悩む…
どちらとて、薫りは良いのだ…
なんなら、香が消えた後に、別を楽しめば良いのだ…
造形の深い香炉や香立は古代魔法時代か、それ以前の物だと思われる…
なにかの魔力を秘めた古代秘宝かも知れない…
自室の扉がノックされると、メイドが要件述べる。
「陛下、南の賢者様が来訪されました」
「わかりました…」
魔王国の自室で実務を終えた女王は香を楽しむのを中断し、マントを羽織り玉座の間に赴く…
玉座の間に向かうと、南の賢者シーサンが正装で、こちらに気づくと胸に手をあて軽く頭を垂れ声を発する。
「これはこれは女王陛下、此度の謁見感謝致します…」
「久しいなシーサンよ、妾とそなたは身分こそ違えど立場は同じ。
女王など、この国では形だけではないか、評議会にて妾が選出されるだけのことだ、プルメリアで構わんよ」
艶やかな黒髪に赤い瞳、魔力が帯びるマントに浮遊する大剣…
その全てがプルメリアその者の象徴言える。
魔王国…別名魔女の国は大陸東部に位置し魔獣の森、蜃気楼の砂漠、深き古代遺跡の三つの魔境を領土内に有しており、過酷な環境下での生存競争に強さは必須条件である。
元々は、いくつかの小国家が存在し争いの絶えない国だったが、ここ100年の間に動乱は終息され、魔王国が生まれた。
七人の元首からなる評議会により、女王が選出され国の政や外交を代表として取り行う。
「さて、シーサンよ妾の元に訪れたのは、何か重要な事だとわかっておる、ふむ…
魔物の大量発生に関することは間違いなかろう…だとしたら、門についてだな?」
プルメリアはここ最近の情報を整理し該当するであろう答えを賢者に発した。
「先日、採石所と王国が魔物の大量発生よって襲撃される事態起こりました…採石所は壊滅…
王国は騎士、傭兵、特務隊員により防衛され事なきを得ました…」
賢者が応えた。
「王都の防衛戦は水晶球で拝見さして貰ったぞ!兎人種と狼人種とが頑張っていたな、あと戦場は違ったが、目に見張る少女がおったぞ!で確認しに来たのだな門を…」
プルメリアが真顔で答える
魔王国地下、魔方陣の中央に禍々しい門が聳え立っている。
シーサンが指先に魔力を灯すと、門の開閉情報が頭に流込んでくる…
開いた形跡は200年前…
伝承に、残ってるのは、魔導実験の魔力が暴走し、門が開いた…
確かそんな伝承だったか?
「南の賢者の門、西の聖女の門、東の魔女の門、北の魔剣士の門…門の守護者が健在なら門は開かない筈…だとしたら、考えられることは、三つ、門の守護者が殺害された?意図的に門の守護者が門を開いた…新たに5番目の門が出現した?」
プルメリアは禍々しい門を見ながら呟いた…