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小さな勇気
焼け崩れ落ちた家屋、力尽きた魔物、戦い散った集落の大人…
見るに絶えない景色が目の前に広がり、足が幾度となく止まってしまいそうになる…
「こっちだっ!」
戦いながらも、集落の大人達が行くべき場所に導いてくれる…
集落の端と深海の森の狭間に、そいつはいたんだ…
僕達をまっていたかのように…
獰猛な目に、鋭い牙、低く唸る咆哮に魂が押し潰されそうになる…
「みんなっ!森へ走れっ!」
ギリギリの勇気を振り絞り、みんなに叫ぶ…
僕達じゃ絶対にどうしようもない…
走る子供たちが、命を散らしていく…
魔物が向かってくる、どうにもならないけど妹のウルマを背中に隠す…
みんな、母様、ウルマ、ごめんっ…
魔物の爪が体を裂くのがわかる、裂かれた場所が焼かれるように痛い…
薄れ行く意識のなかで、誰かが戦ってる音だけが耳に聞こえ、僕は意識を手放した…