癒す者
日の光が射し込んでくる、開けられた窓から冷たい空気が金木犀の香りを運び、肌と鼻腔に触れてくる…
昨日の自分の体が嘘のように思えてくる…
重症なのはわかっていた無理もしていた…
恐ろしいほどの緊張感の中で体験したことの無い体験したのだ、治癒魔法をかけて貰い、そんな緊張感も解除されたのだろう…
昨夜いきなり気を失ったのも、そんな安心感が原因だと思う。
そうか…
あの後、部屋を宛がってくれたのか…
「気が付きましたか?」
窓を開けて振り向き様に声を掛けられる。
たしかアルカさんだ
「あっ、おはようございます、昨日は、ありがとうございました。
すごいですね奇跡の行使?癒しの魔法?」
「あなたは運が悪ければ死んでましたよ…奇跡が重なったんですね、拾った命です大事にしてくださいね…」
真っ直ぐな視線を向けてくる…
「はい…」
「起きたか!」
「オニキス朝ごはんだよ」
シアとウルマが様子見がてらに朝食を運んで来てくれたみたいだ。
ウルマが準備をしてくれる。
「いただきます」
王都までの道中、保存食だったのでまともな料理が久しぶりである。
勢いよく、食べてしまう…
「ゆっくり食べて下さいよ、完全に治ったわけでは無いんですから…」
やれやれといった感じでアルカが呟く。
「それとシアさん、オニキスの応急処置ですが、出血の勢いを止めるために減速魔法を使ったとか聞きましたが?致命傷もらった直後ですよ、そのまま心臓の鼓動が減速して停止してしまったらどうするんですか?」
「ぐっ!」
思わず食べていたパンが喉につまる…!
ウルマがすかさず背中を叩いて詰まりを、取ってくれる。
「ウルマありがとう…水くれるかな?」
ウルマから水をもらい口に含む…
「傷口を閉じる変わりに氷魔法で傷口に蓋にしようとしたらしいですね?熱があったからですって?冷やしすぎて細胞が壊死したらどうするんですか?低体温で心臓止まったらどうするんですか?」
「ぶっほぉ…!」
飲み掛けていた、水が横にはいる…
ウルマがすかさず背中を指すってくれる…
「ふぅ」
「すぅーはぁー」
息を吐き出し、深呼吸する。
「オニキス、ウルマ、私はハルに用事があるから少し席を外すぞ、後のことはアルカから聞いてくれ!」
シアが足早に部屋から出てゆく……
「まぁ、その奇跡のお陰で、君は今こうしてご飯食べれてるんだ、奇跡が奇跡を呼んだんだね……きっと……」
アルカは窓から外の景色を眺めながら言った。
「後で君とウルマちゃん検査するからね、また係のものが呼びにくるよ」
アルカさんは窓からの視線を部屋の扉に写し、僕の食べ終わった食器を手際よくかたずけて退出していった。
窓から外の景色を、眺めると寒い空気のなかで、たくさんの金木犀達が小さく誇らしげに咲き誇っていた。