王都到着
冷たい風が、季節の変化を知らせる…
いつの頃だったか…?冷たい風と日が落ちる不安さに何故か泣いたことがあった……
原因すらわからなかったんだ…
痛む傷口を押さえながら、落ちてゆく夕陽を眺めていたら、幼い日のことを思い出していた…
「大丈夫?ぼぉーとして…」
ウルマが覗き込むように何気なく聞いてくる…
「あぁ大丈夫さ、シアさんどうなったのかなと思ってさ……」
「きっと大丈夫よ強いから…」
ウルマも夕陽を見ながら応え返す…
「これ、返さないとね…」
鞘に収まった短剣をウルマから受けとる…
この短剣がなければ自分たちは魔獣を退けることが出来なかったんだ…
「そうだね…」
短剣を見つめながら呟く。
そんな話をしていると、馬に乗った若い男の人が商人のおじさんに近付いていき話しかけた。
「行商人のトムと兎人種のオニキスとウルマは、君たちのことか?」
どうやら、王都からの使いの騎士見習いのようだ。
「王国の周りの魔物たちは全て殲滅した、安全は確保されているので直ぐに来られたし。シア殿からの伝言だ。」
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騎士見習いの案内で、問題なく王都まで到着出来た。
行商人のトムさんは、荷物を卸しにいくみたいだ…
「オニキス、ウルマちゃん、短い間だったが世話になったな、シアさんに宜しくなっ!」
微笑みながら、がしがし二人の頭をなでる。
「じゃあな!」
トムさんは振り向かず、上げた左手をひらひらさせ、右手で馬を引き去ってゆく。
こっちがたくさん世話になったのに…
「シア殿が待っている、王宮までゆくぞ。」
騎士見習いが、自分の馬に二人に乗せて
みずからは、歩いて馬を引いてくれるみたいだ。
王宮に到着し、一つの部屋に移動する。
「よくきたな、彼女はハルだ私の元同僚だ」
所々怪我をしているが大丈夫そうで、ほっとした。
「はじめまして、ハルだお前たちと同じ兎人種だ、話しは聞いているオニキスすぐ怪我を見て貰おうか…」
青紫の長い髪、凛とした通る声だ
ハルの傍らにいた黒衣の女性が話しかけてくる。
「アルカです、診察台に横になって傷口を見せてくれますか?」
ウルマに手伝ってもらい上着を脱いで診察台
仰向けになる。
アルカは傷口を確認すると、両手に魔力を流し傷口に手を当てる…
「癒しの奇跡よ深き傷を再生させよ」
傷口の痛みが引いていき、じわりじわりと温かみが感じられると同時に意識を失った。