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黒い兎の冒険譚 勇者の存在しない…この世界で…  作者: 黒うさモフル
第一章 旅の始まり…
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紅水晶と水宝玉

虫たちの歌が夜中であることを知らせる……



静寂の中でボクは目覚めた……



嫌な胸騒ぎがする……





こんなときは必ずと、いっていい程悪いことが起きるのだ………




約束したからのように、あの夢のあとはそうなんだ……



          .


          .




赤ん坊の頃の自分を見ている……


赤ん坊が入っている籠には、


紅水晶(ローズクォーツ) 水宝玉(アクアマリン) 白瑪瑙(ホワイトオニキス) 黒瑪瑙(ブラックオニキス)


と刻印された金属プレートがつけられている、白に近い水色の髪の赤ん坊がボクだろう……



誰だか、分からない大人の手で抱き上げられ、大声で泣き出したあと夢から覚める……




          .


                                                .




集落が騒がしくなる……


集落の入口にいつもいる、おじさんがかけ込んできた……



(おさ)からの伝言だ!直ぐに子供たちを広場に集めて大人は戦の準備に取りかかれ!魔物の大量発生だ!」





ボク達は母様に連れられ、広場に集められた



「あっ、モルちゃん……」


薄く桃色かかった白髪の女の子が、ボクを見つけ駆けてくる。


隣向かいに住む遊び友達のユアンナちゃんだ……



「あっ、アンナちゃん!」



ボクは、この子ことを愛称で呼んでいる、



「モルちゃん今きたの?森に避難するらしいよ…オニちゃん達が避難場所知ってるから、ついていくようにだって」



胸騒ぎの警告が高鳴るのがわかる…







「魔物だぁぁー!」



誰かの叫び声が聞こえた…





目線をオニキスに向ける、彼は頷くと妹のウルマちゃんの手を引き走り出す…


「モルちゃんいこう!」



他の子達がオニキスを追って走り出す…



ワンテンポ遅れて、アンナちゃんを追いかける……





集落の至るところで、魔物と大人達による戦闘が始まっている…






頭の中に、今まで以上かつてない程の警告の鐘が鳴り響く……



更に血飛沫(ちしぶき)を上げるオニキスの映像がながれる……










本応的に足が止まる…!

息を飲んで精一杯の声を上げる…!


「アンナちゃん待って!」




「モルちゃん!なにしてるの!早くっ!」

肩で息をしながら言う。



「違う!向こうは危険だっ!」

アンナちゃんに伝わるか分からないが応える…!



「どうしたの!?」

困惑しながらアンナちゃんが問う。



「頭の中に、この先で魔物に襲われる映像が流れて来たんだ!」

信じてもらえるだろうか…




「わかった、けど確かめてくる…!モルちゃんは倉庫に隠れていて、確かめたら戻るから…」





         .




ユアンナは魔力を体に流すと駆け出していく…


なんとなく分かるのだ、モルちゃんの言っていたことが…



遠目にオニキス達を、見つけることが出来た!



届くか分からないが、声を上げる!






「オニちゃんっ!そっちはっ!!」





白い大きな虎がオニキスに爪を振るうのが見え、オニキスが血飛沫をあげ倒れる…




「ひっっ」



一瞬立ち竦んで(たちすくんで)しまうが、逃げろと本能的に体が動き出す……




わたしは、モルちゃんの隠れている倉庫に急いだ…



倉庫の入り、直ぐに扉を閉め、内側から鍵をかける…



「モルちゃん?どこ…?」

モルちゃんを呼ぶと、麦藁の中からモルちゃんが出てきた…


「どうだった…?」

モルちゃんが


不安げな表情で聞いてくる…




「オニちゃんたちが…魔物に襲われたっ!」

堪えていた涙が溢れてくる…



「わかった、多分ここに居れば安全だ、落ち着くまで隠れていよう…」

モルちゃんが安心させるように言った… 






私たちは、息を潜め外の音が止むのをずっと待った…………


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