紅水晶と水宝玉
虫たちの歌が夜中であることを知らせる……
静寂の中でボクは目覚めた……
嫌な胸騒ぎがする……
こんなときは必ずと、いっていい程悪いことが起きるのだ………
約束したからのように、あの夢のあとはそうなんだ……
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赤ん坊の頃の自分を見ている……
赤ん坊が入っている籠には、
【紅水晶 水宝玉 白瑪瑙 黒瑪瑙】
と刻印された金属プレートがつけられている、白に近い水色の髪の赤ん坊がボクだろう……
誰だか、分からない大人の手で抱き上げられ、大声で泣き出したあと夢から覚める……
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集落が騒がしくなる……
集落の入口にいつもいる、おじさんがかけ込んできた……
「長からの伝言だ!直ぐに子供たちを広場に集めて大人は戦の準備に取りかかれ!魔物の大量発生だ!」
ボク達は母様に連れられ、広場に集められた
「あっ、モルちゃん……」
薄く桃色かかった白髪の女の子が、ボクを見つけ駆けてくる。
隣向かいに住む遊び友達のユアンナちゃんだ……
「あっ、アンナちゃん!」
ボクは、この子ことを愛称で呼んでいる、
「モルちゃん今きたの?森に避難するらしいよ…オニちゃん達が避難場所知ってるから、ついていくようにだって」
胸騒ぎの警告が高鳴るのがわかる…
「魔物だぁぁー!」
誰かの叫び声が聞こえた…
目線をオニキスに向ける、彼は頷くと妹のウルマちゃんの手を引き走り出す…
「モルちゃんいこう!」
他の子達がオニキスを追って走り出す…
ワンテンポ遅れて、アンナちゃんを追いかける……
集落の至るところで、魔物と大人達による戦闘が始まっている…
頭の中に、今まで以上かつてない程の警告の鐘が鳴り響く……
更に血飛沫を上げるオニキスの映像がながれる……
本応的に足が止まる…!
息を飲んで精一杯の声を上げる…!
「アンナちゃん待って!」
「モルちゃん!なにしてるの!早くっ!」
肩で息をしながら言う。
「違う!向こうは危険だっ!」
アンナちゃんに伝わるか分からないが応える…!
「どうしたの!?」
困惑しながらアンナちゃんが問う。
「頭の中に、この先で魔物に襲われる映像が流れて来たんだ!」
信じてもらえるだろうか…
「わかった、けど確かめてくる…!モルちゃんは倉庫に隠れていて、確かめたら戻るから…」
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ユアンナは魔力を体に流すと駆け出していく…
なんとなく分かるのだ、モルちゃんの言っていたことが…
遠目にオニキス達を、見つけることが出来た!
届くか分からないが、声を上げる!
「オニちゃんっ!そっちはっ!!」
白い大きな虎がオニキスに爪を振るうのが見え、オニキスが血飛沫をあげ倒れる…
「ひっっ」
一瞬立ち竦んでしまうが、逃げろと本能的に体が動き出す……
わたしは、モルちゃんの隠れている倉庫に急いだ…
倉庫の入り、直ぐに扉を閉め、内側から鍵をかける…
「モルちゃん?どこ…?」
モルちゃんを呼ぶと、麦藁の中からモルちゃんが出てきた…
「どうだった…?」
モルちゃんが
不安げな表情で聞いてくる…
「オニちゃんたちが…魔物に襲われたっ!」
堪えていた涙が溢れてくる…
「わかった、多分ここに居れば安全だ、落ち着くまで隠れていよう…」
モルちゃんが安心させるように言った…
私たちは、息を潜め外の音が止むのをずっと待った…………