手紙
宮殿から見える古木にも雪が積もらなくなった…
樹齢、数千年の古木らしい…
数年に一度枝打ちされる古木の枝は上質な魔法の杖に成ると王宮庭師さんが言っていたっけ…
寒い季節もそろそろ終るな…
丁度、最後の陳情を聞き終えると謁見の間の扉が門番によって閉じられる。
玉座を見ると側付メイドさんが水差しと杯を陛下に運び水差しから杯に果実水を入れ陛下に渡している。
「ふむ、鉄道の魔力不足による物流の停滞か…各都市似たように訴えておるか…しかしなぁ」
大陸一魔法文化が発展しているとは聞いていたが確かに王国と魔王国では異なる物が多かった。
一番目を引いたのは魔導鉄道なるものだ、旧世界の失った技術を元に魔導機関を用いて復元した物らしい…
杯の果実水を一口飲み喉潤すとため息を溢す…
「はぁ…仕方ないかぁ…臨時対策会議でも催すかぁ、各関連関係者に召集をかけてくれるか…」
陛下が側付メイドさんにメモを渡すと、側付メイドさんが一礼をし謁見の間を後にする。
「深刻そうですね、しっかしここ迄世界が魔力不足は参りましたね、陛下の魔法で解決できないんですか?」
陛下に砕けた感じで話すと陛下が返してくる…
「妾にそれが出来たらやっておるわ、冗談が過ぎるぞ、わかって言っておろう、ウルマよ」
「そりゃ、そうですよ臨時ですが宮廷道化師ですから」
宮廷道化師は王に対して対等に話して良いと言われた時は倒れそうになった…自分の性格からしてかなり戸惑ったが…まぁ、最近はだいぶ慣れて陛下に冗談を言えるようになったが…
「それでだ、王国と魔王国での手掛かりは大方調べ尽くしたのだ…もしやすると未だ知れず手掛かりが残っておるかもしれん…すまないが制約の解除にはまだまだ時間がかかるのだ…」
執務をこなす上で解除方法も調べているのだ無理をしてもらっている…
「そうですかぁ…これは参りましたね」
その日はその言葉を最後に自室に戻ったのだった…
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衣装の二股の帽子に襞付襟を脱ぎ捨てると自室のベッドに倒れこむ…
部屋の棚には、冒険をしていた時の道具が置かれている…
あれからだいぶ経ったな…
魔法の短剣…新調した皮鎧…荷物の入った背負い袋もうどれも、くたびれているな…
そうやって眺めていると背負い袋の後ろのポケット部分が破れていて、古くなった紙が見えている…
ベッドから立ち上がりポケットを開けると封筒に入った手紙だ…
確か、冒険に出る時アルカさんに渡されたものだ…
途中まで読んでいて眠たくなって、また今度読もうと思って、その後…シアさんとプラムが水竜と戦いになって、それどころじゃなくなったんだったか…
封筒の中身を取り出し目を通す…
「……!」
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この手紙を君が読むときは私は君の前には存在していない。
今の君はウルマと名乗っていますか?
身体は大丈夫ですか?
私も色々手を尽くしたのだけど、唯一の可能性を残せたのがこの手紙だ。
少し未来を視れた私はこの未来なら手紙は消えないと、そして君が今日この手紙を読むことが運良く見えたのだ。
君は今は制約の解除に試みてるだろう…
結果が出ない場合は消えた兎人種を探して下さい、推測では門の中の異世界ではないかと思われます、そこで解除の手掛かりが得られる筈です。
最後に良く考えて欲しい、今君が幸せで有るならばこの手紙を封筒に戻して机の奥にでもしまって欲しい、それが君にとって最良の選択でしょう。
私も制約の為名のることが出来ないのを許して欲しい。
ここに君の幸せを願う。
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インクが滲むと頬を伝う涙を拭った…
差出人はわからない…いたずらかも知れない…
でも、きっとこれは状況を好転する可能性がある…
窓から吹き込む風に背負い袋からトランプが落ちて床に散らばる。
目に留まる道化師のカード…
今の僕だな…
………
そういえば、船の中で皆で遊んだっけ…最後に勝ったのはユアンナちゃん…
………
僕、プラム、モルちゃんは最後まで残っていない…
そうだ…
もう1人いたんだ…